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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科76巻13号

2022年12月発行

文献概要

症例報告

治療に難渋したMycobacterium chelonaeによる多発皮膚病変の1例

著者: 井関梢1 大田玲奈1 奥山智香子1 宮川健彦1 丸裕吾1

所属機関: 1船橋市立医療センター皮膚科

ページ範囲:P.1111 - P.1116

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要約 72歳,男性.既往に心不全,腎不全あり.手足に腫脹発赤や潰瘍が多発し,培養検査にてMycobacterium chelonaeが同定された.クラリスロマイシンとレボフロキサシンの内服加療を行うも新規病変が多発し,入院の上クラリスロマイシン内服,メロペネム点滴,アミカシン点滴にて加療した.入院後新規病変はみられず,既存の病変は部分的に改善を認めたものの,その他は改善なく経過した.入院治療14日目に不整脈により永眠された.M. chelonaeの至適発育温度は28〜32℃であり,自験例のような心不全のため末梢冷感のある患者の四肢末端は菌の発育に適し,また心不全による心拍出量減少のため抗菌薬の組織への移行が不十分であり,病変が難治となった可能性があると考えた.至適発育温度の低いM. chelonaeのような感染症においては,抗菌薬加療に加えて温熱療法を併用した集学的治療が望まれる.

参考文献

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9) 吉本 昭,他:感染症誌 89:410, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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