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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科76巻2号

2022年02月発行

雑誌目次

症例報告

木炭の燃焼による放射伝熱で受傷した大腿部深達性熱傷(radiant heat injury)の1例

著者: 北野佑 ,   小室明人 ,   岡村愛 ,   中堀イリス ,   澤田知佐 ,   和薬孝昌 ,   濱口儒人 ,   松下貴史

ページ範囲:P.107 - P.112

要約 40歳台,女性.密室で木炭を燃焼中に一酸化炭素中毒で意識消失し,熱源と非接触性に大腿部に体表面積3%の熱傷を受傷した.受傷14日に深達性と判断され,外科的治療のため前医より転院した.同日,全麻下で壊死組織を筋膜上で切除し,筋層は浮腫状に変性していたが微小出血を認めたため温存した.しかし壊死は進行性で,分界がつくまで3週間を要した.最終的に大腿骨が露出し,受傷後2か月に遊離広背筋皮弁で被覆した.近年,固形燃料での非接触性深達性熱傷例が散見され,放射伝熱によるradiant heat injury(RHI)として報告されている.今回RHIと考えられた大腿部深達性熱傷例を経験した.RHIでは,初期に壊死範囲が不明瞭で,壊死が進行性であるため分界までに数週間を要する点に注意すべきである.複数回のデブリードマンを必要とし,最終的に骨露出を伴うこともあるため,専門施設での治療も念頭に置くべきと考えられた.

ボリコナゾール長期内服中に生じた多発性日光角化症の1例

著者: 加藤和夏 ,   青笹尚彦 ,   杉森彩香 ,   向川早紀 ,   角田麻衣子 ,   小原明希 ,   播摩瑤子 ,   野々垣彰 ,   玉木毅

ページ範囲:P.113 - P.116

要約 48歳,男性.初診7年前から慢性進行性アスペルギルス症に対してボリコナゾール(ブイフェンド®)を内服していた.内服開始2年後に顕著な日光過敏を自覚し,その後顔面,上肢の露光部に色素沈着が出現,さらに黒褐色斑が多発するようになった.初診時,手背に複数の白色角化性病変を認め,その1つを生検した.病理組織では核異型を有する基底細胞が表皮基底層に密に配列しており,日光角化症と診断した.ボリコナゾール内服を中止し,残存する角化性病変に対してイミキモドクリームの外用を開始した.近年ボリコナゾールの光線過敏症と長期内服による皮膚癌の発症が報告されている.光線過敏症から発癌までの過程は段階的に進む可能性があり,皮膚科医はこれを認識し,本剤の使用頻度が高い診療科との連携や,患者への指導を行うことなどで,予防,早期診断および治療につなげることが大切である.

潰瘍を伴う角化性局面が被角血管腫様の組織像を呈した男性外陰部硬化性苔癬の1例

著者: 齋藤龍一 ,   長谷川道子 ,   日高太陽 ,   田村敦志

ページ範囲:P.117 - P.123

要約 49歳,男性.初診の約1年前より陰茎に白色斑がみられ,半年前より包皮の狭窄や排尿障害が出現した.初診時,包皮から亀頭にかけて白色から灰褐色の局面があり,包皮は陰茎を絞扼するように一部で狭小化していた.また,亀頭腹側の外尿道口周囲には潰瘍を伴う角化性局面もみられた.硬化性苔癬からの発癌を疑い,生検したところ亀頭の角化性局面では著明な角質増生があり,真皮乳頭層の硝子化した膠原線維間には拡張した血管が充満して,被角血管腫様の組織像を呈していた.硬化性苔癬と診断し,包皮切除術を行った.術後,陰茎絞扼症状は速やかに改善し,亀頭の残存病変はジフルプレドナート外用で軽快した.本症において被角血管腫様の組織像を認めることは稀であるが,自験例のように表皮直下の血管拡張や浮腫が高度になることで,表皮の栄養障害や皮膚の脆弱性を生じ,発癌を疑うような角化や潰瘍形成をきたす場合にはありうると推察した.

肉芽腫性外陰炎の1例

著者: 秋本訓秀 ,   長尾映里 ,   安部文人 ,   三津山信治 ,   木村雅明 ,   樋口哲也

ページ範囲:P.125 - P.129

要約 6歳,女児.初診7か月前から左外陰部に腫脹を伴う紅斑が出現し,自転車の搭乗時に陰部に軽度の圧痛を自覚していた.近医を受診し亜鉛華軟膏やステロイドの外用治療を行ったが改善なく当科紹介となった.皮膚組織所見にて真皮の浅層から深層にかけてLanghans型の巨細胞を伴う類上皮細胞肉芽腫が認められた.血液検査,身体所見にて左外陰部の腫脹以外に特記所見は認められなかったことにより,肉芽腫性外陰炎と診断した.治療としてトラニラストの内服治療を開始したところ,腫脹と紅斑は消退し良好な結果が得られた.肉芽腫性外陰炎は外陰部に慢性的な肉芽腫性病変が発生する稀な疾患である.肉芽腫性外陰炎はいまだ発症機序が明らかになっておらず,治療法も確立していないが,トラニラストは治療選択肢として有用であると考えられた.

炎症後に被覆皮膚に色素沈着をきたしたpigmented pilomatricomaの1例

著者: 齋藤龍一 ,   長谷川道子 ,   田村敦志

ページ範囲:P.131 - P.135

要約 16歳,女性.右頰部の35×25mmの発赤,排膿を伴う囊腫状腫瘤を主訴に当科を受診した.炎症を伴った毛母腫として切開排膿したところ,炎症症状は消退したが,被覆皮膚に灰青色の色素沈着が残った.初診後5か月で残存する皮下結節とともに色素沈着を伴う被覆皮膚も切除した.切除標本ではメラニンを豊富に含む陰影細胞と好塩基性細胞間に樹状メラノサイトがみられ,pigmented pilomatricomaと診断した.本症は毛母腫の一亜型であり,欧米では稀であるが,本邦からの報告では欧米よりも頻度が高いとされる.臨床的な色素沈着を伴うとは限らないが,周囲の間質内に大量のメラノファージが存在することがある.本症においては上皮成分からなる腫瘍塊のみの摘出では色素沈着を残す恐れがあり,手術時には注意が必要である.

成人発症の多発したtufted angiomaの1例

著者: 渡邉千夏 ,   本多教稔 ,   金澤早織 ,   福島聡 ,   尹浩信

ページ範囲:P.137 - P.140

要約 42歳,女性.初診の6年前より有痛性の扁平に隆起した紫紅色局面が右足首両側に出現した.外用剤(詳細不明)で改善したが,1年前に同様の症状が再び出現した.その後,徐々に拡大したため前医受診し,皮膚生検にてtufted angiomaと診断された.ステロイド外用で改善がないため,加療目的で当科に紹介された.治療として電子線を10Gy/5回照射し,症状は消失した.外来受診時に新たに左足首に同様の皮疹が出現したが,ステロイド外用で改善した.Tufted angiomaは,その70%が1歳未満に発症するといわれる.成人発症は頻度が少なく,多発することも稀といわれている.治療は,経過観察,外科的切除,放射線治療,持続圧迫,ステロイド投与などがある.非ステロイド性抗炎症薬内服では疼痛コントロールが不良であったこと,自然消退する場合は1年以内のケースが多く経過の長い自験例は経過観察では改善が見込めないと思われたこと,手術は衛星病巣もあり範囲が広く再発リスクが高いこと,本人の手術の希望がなかったことから放射線治療を選択し,治療が奏効した.再発例も多いため,注意深く経過観察中である.

臍部に生じた子宮内膜症の2例—既報告例の統計学的解析を含めて

著者: 松井悠 ,   佐々木仁 ,   高塚純子 ,   竹之内辰也

ページ範囲:P.141 - P.146

要約 症例1:45歳,女性.初診1か月前より臍部に無症候性の紅褐色結節を自覚した.皮膚生検を行い,子宮内膜症と診断した.治療希望はなく,婦人科で経過観察中である.症例2:26歳,女性.初診8か月前に臍部下縁の暗赤色腫瘤を自覚した.尿膜管遺残の疑いで近医より紹介となり,皮膚生検の結果から子宮内膜症と診断した.ホルモン療法を開始し,腫瘤の増大はみられていない.子宮内膜症の臍部発生は1%程度と非常に稀であるが,女性の臍部に生ずる腫瘍の内で子宮内膜症は40%程度を占めるとされる.自覚症状を欠く場合はsilent typeと呼ばれ,月経周期に伴う特徴的な所見を欠き,診断には皮膚生検が必要である.病型の違いによる臨床,組織学的所見に統計学的有意差は認めなかったが,初診までの期間と腫瘤径の間には正相関を認めた.稀ながら悪性転化することからも女性の臍部腫瘤・結節性病変を診療する際には,早期の確定診断のためにも本疾患を念頭に置き,皮膚生検や画像検査を行う必要がある.

急速に増大したが外科的に切除しえた外眼角部Merkel細胞癌の1例

著者: 古明地久子 ,   佐藤洋平 ,   成田陽子 ,   青木孝司 ,   尾崎峰 ,   大山学

ページ範囲:P.147 - P.152

要約 78歳,女性.2か月前から増大する眼囲の結節を前医生検にてMerkel細胞癌と診断され紹介受診した.初診時,右外眼角部に径4cm大の紅色腫瘤があり,PET-CT検査で右耳下腺,上深頸部リンパ節転移を認めた.その後も増大したため早急に外科的治療を計画し初診12日後に腫瘍辺縁よりマージン2cmをとり拡大切除,遊離皮弁を用いた再建術,右耳下腺全摘,転移リンパ節切除を施行した.術後13か月間再発を認めない.最近10年間の本邦Merkel細胞癌報告例における腫瘍径の変化率と増大期間の相関を検討したところ自験例では腫瘍の増大が急速であった.また,同様の顔面発症例と比較して自験例では積極的な加療が局所制御を可能にし,現時点では良好な経過につながった可能性がある.本疾患は,短期間で腫瘍径が倍以上に増大する症例もあるため,それを念頭に置きつつ積極的な治療計画を立てることが予後の改善に重要であると考えた.

Helicobacter cinaediによる再発性蜂窩織炎の1例

著者: 岩本雄太郎 ,   野老翔雲 ,   並木剛 ,   横関博雄

ページ範囲:P.153 - P.156

要約 55歳,男性.既往に急性リンパ性白血病があり寛解状態だった.慢性C型肝炎の腹水コントロール目的に入院.入院中,右下腿の発赤腫脹が出現した.蜂窩織炎の診断でセフトリアキソン(CTRX)にて加療された.1か月後に同部位に蜂窩織炎が再燃した.血液培養検査では2回ともHelicobacter cinaediを検出した.感受性に基づき,イミペネム/シラスタチンで加療し改善したが,IPM/CS終了2日後に腹膜炎を発症した.各種培養検査は陰性だったがH. cinaediの関与も否定できずCTRXで腹膜炎治療後も予防的にミノサイクリン塩酸塩を1か月間追加投与し,再燃はみられていない.H. cinaediはグラム陰性らせん桿菌で,蜂窩織炎以外にも腸炎,関節炎,髄膜炎など他臓器の感染症を合併することもあるため注意が必要である.適切な抗菌薬の選択,投与期間は定まったものはない.現時点では血液培養での感受性を参考に抗菌薬を選択し,血液培養の陰性化を確認して1か月以上の長期にわたり抗菌薬を投与する必要があると考えた.

ステロイド投与中に生じたExophiala oligospermaによる黒色菌糸症の1例

著者: 山崎由里子 ,   川島秀介 ,   若林正一郎 ,   岩澤真理 ,   丸裕吾 ,   矢口貴志 ,   松江弘之

ページ範囲:P.157 - P.164

要約 63歳,女性.2001年に関節リウマチとSjögren症候群の診断.間質性肺炎と肺高血圧症合併のため,プレドニゾロン13mg/日を維持量として長期間内服していた.2011年10月に転倒して左膝に擦過傷を受傷し,その1か月後に左下腿に膿疱が多発した.膿疱部の皮膚生検で真皮に感染性肉芽腫がみられ,その内部に淡褐色でPAS染色陽性の有隔壁性菌糸を認めた.生検組織片を接種した真菌培養で茶褐色フェルト状の集落が発育し,スライドカルチャーで菌糸側壁より出芽した楕円形の分生子を認めた.ITS領域の解析により原因菌をExophiala oligospermaと同定した.テルビナフィン125mg/日による内服治療を開始したところ皮疹は改善傾向であったが,治療開始から4か月後に肺高血圧症の増悪により患者は逝去した.E. oligospermaによる黒色菌糸症の治療は抗真菌薬や全摘出術,温熱療法が有効とする報告があるが確立されたものはなく,症例に応じて治療法を選択する必要がある.

ホタルイカ生食後の旋尾線虫による皮膚幼虫移行症の1例

著者: 松井彩乃 ,   関根万里 ,   中村ふくみ ,   田宮彩 ,   簗場瑞貴

ページ範囲:P.165 - P.168

要約 53歳,女性.初診2〜3週間前に購入した生のホタルイカを喫食した.初診3日前から右大腿内側に紅斑が出現し近医を受診.ステロイド外用が開始されるも改善せず,徐々に皮疹が移動したため近医皮膚科より紹介され受診した.初診時右大腿内側に蛇行する線状皮疹と周囲に浮腫性紅斑を認めCreeping diseaseを疑い,線状皮疹の先端を切除した.病理組織学的に表皮直下に線虫の食道筋質部を通る断面が観察され,血管周囲性に炎症細胞浸潤を伴っていた.ホタルイカの生食歴,移動する線状皮疹,生検による虫体断面からホタルイカ生食による旋尾線虫の皮膚幼虫移行症と診断した.本疾患の皮疹好発部位は体幹部であるが,自験例のように下肢に皮疹が生じることも念頭に置き,日々診察しなければならないと考えた.

遷延する尿閉をきたした再発性帯状疱疹の1例

著者: 田中弘子 ,   青笹尚彦 ,   杉森彩香 ,   小原明希 ,   野々垣彰 ,   玉木毅 ,   吉崎宇蘭 ,   新美文彩 ,   宮嵜英世

ページ範囲:P.169 - P.173

要約 82歳,女性.初診1週間前から左下肢〜臀部の皮疹が出現し,徐々に拡大した.50歳代に同一部位の帯状疱疹の既往があった.初診時左下肢〜臀部にかけて紅暈を伴う水疱の集簇を認め,帯状疱疹と診断し,アメナメビル(アメナリーフ®)内服開始した.皮疹拡大を認めたため初診2日後に入院のうえ,アシクロビル点滴に変更した.半年前より自覚していた残尿感が増悪し,翌日泌尿器科受診.500mlの残尿を認め,尿閉と診断し,尿道カテーテルを留置のうえ,ウラピジル(エブランチル®),ジスチグミン(ウブレチド®)内服を開始した.皮疹軽快し退院後も泌尿器科通院を継続.何度か尿道カテーテル抜去を試みたが十分な自排尿が得られなかったため,退院後12か月時点でも間欠的自己導尿継続中である.帯状疱疹の合併症の1つに排尿障害があり,時に遷延しうることを認識する必要がある.

膜性腎症を合併し大腸癌術後に改善した硬化性脂肪織炎の1例

著者: 下村尚子 ,   田中由華 ,   磯山直仁 ,   原田栄二郎 ,   下村裕

ページ範囲:P.175 - P.180

要約 66歳,女性.65歳で膜性腎症と診断され,ミゾリビンを内服していた.初診20日前に左下腿に疼痛を伴う紅斑が出現.抗菌薬内服で改善せず,疼痛のため歩行困難になり入院した.病理組織所見では真皮深層から脂肪織にかけて線維化と炎症細胞浸潤がみられ,静脈うっ滞を示す所見は軽度ではあったが,硬化性脂肪織炎と診断した.経過中に低蛋白血症と貧血が進行し,入院後の精査で上行結腸癌が判明したため,当院外科で切除術を施行された.術後,それまで難治であった紅斑と疼痛は著明に改善し,蛋白尿,低蛋白血症も改善した.硬化性脂肪織炎は下肢の静脈還流障害によることが多いが,その他の基礎疾患の報告もあり,自験例においては上行結腸癌の稀なデルマドロームであった可能性を考えた.膜性腎症も上行結腸癌と関連した二次性膜性腎症であった可能性が高い.明らかな静脈還流障害のない硬化性脂肪織炎では基礎疾患の精査も重要であると思われた.

紅斑にタクロリムス軟膏が有効であった小児腹壁遠心性脂肪萎縮症の1例

著者: 真屋由佳 ,   松村若菜 ,   藤村悠 ,   清水聡子

ページ範囲:P.181 - P.184

要約 3歳,男児.1歳6か月頃から下腹部の皮疹が出現し,おむつ皮膚炎として悪化時に副腎皮質ホルモン剤の軟膏外用で加療されていた.徐々に拡大したため当科を受診した.初診時,臍上部から両鼠径部にわたって辺縁に淡い紅斑を伴う皮膚陥凹を認めた.紅斑部からの皮膚生検では皮下脂肪織の減少と炎症細胞浸潤がみられた.特徴的な臨床所見および病理組織学的所見から小児腹壁遠心性脂肪萎縮症と診断した.副腎皮質ホルモン剤の外用では変化がみられなかったが,タクロリムス軟膏の外用を開始したところ,紅斑は部分的に軽快した.正常部を含めた3か所から皮膚生検を施行し,病理組織学的に検討した.紅斑部では脂肪織への炎症細胞浸潤が著明であり,早期に炎症を抑制することができれば病勢を抑えられる可能性が示唆された.副腎皮質ホルモン剤による加療で効果が得られない場合は,早期にタクロリムス軟膏も治療の選択肢として検討する必要がある.

マイオピニオン

健康と安全について考えたこと—過去・現在・未来

著者: 杉田和成

ページ範囲:P.104 - P.105

1. 産業医科大学卒業生として
 私は,平成14年(2002年)に産業医科大学医学部を卒業した.産業医科大学は産業医を養成する目的大学で,その点,特色ある医学部と言える.私は,入学間もない医学部1年次に確か講義だったと思うが,そこで言われたことを今でも鮮明に覚えている.それは,「産業医は感謝されない医者」だということである.入学当時,医者は患者を診て病気を治すわけだから,それは患者や家族にとって幸せなことであり,感謝されるのではないか?と思っていた.そのため,当時の記憶は今でも鮮明に覚えているのだ.産業医科大学皮膚科に入局後,戸倉新樹先生にご指導いただき,皮膚科の臨床を存分に学ぶ機会に恵まれた.当時医員だった私と戸倉先生の様子は,16年前に私が本誌に執筆したコラムに詳しく書いてあるが,皮膚科の奥深さに魅力を感じていた時期でもある1).その後,皮膚科医として経験を積みながら,産業医として勤務する機会をいただいた.

連載 Clinical Exercise・174

Q考えられる疾患は何か?

著者: 竹中祐子

ページ範囲:P.101 - P.102

症例
患 者:13歳,女性
主 訴:顔面の紅斑,びらん,口唇の水疱,潰瘍
既往歴:気管支喘息
家族歴:特記すべきことなし.
現病歴:5歳頃から紫外線曝露後に顔面や上肢に紅斑,水疱の出現があり,ステロイド外用にて症状は軽快するも再燃を繰り返していた.初診の2か月前に虹彩炎を発症し,同時に皮膚症状も再燃したため当科を受診した.
現 症:両上眼瞼,両頰に大豆大までの紅斑ないし痂皮を付すびらんが多発していた.上口唇に水疱,びらん,下口唇には厚い痂皮を伴う潰瘍とその周囲に紅斑を認め,頰痛を伴っていた.両眼球結膜の充血を認めた.両頰に大豆大までの萎縮性瘢痕が散在していた(図1).

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目次

ページ範囲:P.97 - P.97

欧文目次

ページ範囲:P.99 - P.99

文献紹介

ページ範囲:P.164 - P.164

次号予告

ページ範囲:P.185 - P.185

あとがき

著者: 大山学

ページ範囲:P.188 - P.188

 新春なので明るい話題で始めたいと思います.つい先日のこと,診察室に満面の笑みを浮かべて長らく私の外来に通ってくれている若い女性患者さんが入ってきました.「いいぞ.きっと随分と発毛したに違いない!」とこちらもついニコッとしました.すると座るなりいきなり,「先生! 私,合格しました!」と言うのです.聞いてみると,ある医学部に合格したのだとか.「それは良かったね.がんばった甲斐があった! それで,もちろん,ずっと皮膚科にかかってきたのだから将来は立派な皮膚科医になるのでしょう?」と訪ねたところ,地域枠での合格(だから普通より合格が早い)とのことで,将来進む診療科もある程度限定されているとのこと.内心少しだけ残念でしたが,それでも立派なことです.「おめでとう! ではせめて皮膚科の教科書は先生の書いたやつを使ってね(笑)」などと言ってから診察してみると,不思議なことに脱毛のほうも再発毛傾向がみられました.こうしてみると,やはり心身のバランスというのは疾患の病態に影響するようです.
 私の外来に通院する若い患者さんには,幼少期に発症し重症のまま症状が固定してしまった方が多くいらっしゃいます.おそらく私たちの予想をはるかに超えて精神面,あるいは社会生活面でつらい経験をされたのでしょう.自分で何とかしたい,あるいは同じ悩みを抱えている人たちを助けたい,という思いが強いためか,医歯薬系への進学率が有意に高い印象をもっています.もう医学部を卒業し,初期研修を終え皮膚科医として活躍している元患者さんもいます.さらには,私が勤務しているから(が本当の理由であると嬉しいのですが…),本学に入学し,医師を目指しながら通院している医学生さんもいます.医育機関に勤務する者としてこれほど冥利に尽きることはありません.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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