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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科76巻2号

2022年02月発行

文献概要

症例報告

膜性腎症を合併し大腸癌術後に改善した硬化性脂肪織炎の1例

著者: 下村尚子1 田中由華1 磯山直仁2 原田栄二郎3 下村裕1

所属機関: 1山口大学大学院医学系研究科皮膚科学講座 2山口大学大学院医学系研究科泌尿器科学講座 3山口大学大学院器官病態外科学講座

ページ範囲:P.175 - P.180

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要約 66歳,女性.65歳で膜性腎症と診断され,ミゾリビンを内服していた.初診20日前に左下腿に疼痛を伴う紅斑が出現.抗菌薬内服で改善せず,疼痛のため歩行困難になり入院した.病理組織所見では真皮深層から脂肪織にかけて線維化と炎症細胞浸潤がみられ,静脈うっ滞を示す所見は軽度ではあったが,硬化性脂肪織炎と診断した.経過中に低蛋白血症と貧血が進行し,入院後の精査で上行結腸癌が判明したため,当院外科で切除術を施行された.術後,それまで難治であった紅斑と疼痛は著明に改善し,蛋白尿,低蛋白血症も改善した.硬化性脂肪織炎は下肢の静脈還流障害によることが多いが,その他の基礎疾患の報告もあり,自験例においては上行結腸癌の稀なデルマドロームであった可能性を考えた.膜性腎症も上行結腸癌と関連した二次性膜性腎症であった可能性が高い.明らかな静脈還流障害のない硬化性脂肪織炎では基礎疾患の精査も重要であると思われた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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