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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科76巻3号

2022年03月発行

雑誌目次

症例報告

当院にてプリックテストを施行した小児ナッツアレルギーの6例

著者: 岡谷真希 ,   峠岡理沙 ,   益田浩司 ,   土屋邦彦 ,   加藤則人

ページ範囲:P.201 - P.206

要約 当院にて2015年1月〜2019年4月に,ナッツアレルギーに対しプリックテストを施行した小児の6例について報告する.うち2例は経口負荷試験も実施した.患者の内訳は男児5例,女児1例で,年齢は1〜14歳(中央値:9歳).合併症はアトピー性皮膚炎4例,気管支喘息3例,アレルギー性鼻炎2例であった.プリックテスト陽性率はピーナッツ3/4(75%),カシューナッツ3/5(60%),アーモンド2/6(33%),マカデミアナッツ4/4(100%),クルミ0/3(0%),ピスタチオ3/4(75%),ヘーゼルナッツ1/3(33%),ピーカンナッツ1/1(100%),ココナッツ1/2(50%),ジャイアントコーン0/1(0%),栗0/1(0%),ブラジルナッツ0/1(0%),プリックテストの結果と血清特異的IgE抗体価は相関した.また,6例すべてが複数のナッツにプリックテストで陽性を示したため,症状を起こしたナッツを含め複数のナッツを精査することが大切である.ナッツ類への感作例では盲目的に除去を指示するのではなく,血清特異的IgE抗体価,プリックテスト反応を評価し,経口負荷試験を実施することによって,除去が必要か正しく判断することが大切である.

トラベクテジンの血管外漏出による壊死性潰瘍の1例

著者: 日高太陽 ,   堀内あゆみ ,   大森俊 ,   岡田悦子 ,   中村元信

ページ範囲:P.207 - P.213

要約 64歳,女性.治療抵抗性の子宮平滑筋肉腫に対して,トラベクテジンの投与を開始された.初回投与中,右前胸部のCVポートから血管外漏出した.発赤・疼痛が出現し,第4病日に当科を受診した.CVポートの抜去を行ったが皮膚壊死が緩徐に進行した.壊死は筋層まで及んでおり,デブリードマン,肉芽増生を十分に行ったのち植皮で創閉鎖した.デブリードマン後にトラベクテジンの投与を再開し,部分奏効を1年以上維持している.トラベクテジンは治療抵抗性の軟部肉腫に効果を期待できる薬剤だが,血管外漏出により広範囲の組織障害・壊死をきたす.本邦での承認は2015年と比較的新しく,漏出例の報告はいまだ少数である.自験例では,肉眼的な壊死の拡大停止を見定めたのちにデブリードマンを行うことで,最小限の侵襲となるようにした.また,トラベクテジンを再開し骨髄抑制が生じるタイミングを確認してから植皮を行うことで感染リスクの逓減をはかった.

再発時に生じた皮疹の生検により組織球性壊死性リンパ節炎と考えた1例

著者: 渡部桃子 ,   妹尾春佳 ,   山下彩 ,   大谷稔男 ,   中務治重

ページ範囲:P.214 - P.218

要約 16歳,男性.2か月前に39℃の発熱と左頸部リンパ節の腫脹,腹痛,下痢を認め,近医内科を受診した.伝染性単核球症が疑われ,アセトアミノフェンを処方された.1週後には症状は消失したが,さらに2週後,発熱と左頸部リンパ節腫脹が再燃した.再びアセトアミノフェンを内服し,5日程度で治まった.その3週後,発熱を伴って体幹・四肢の紅斑がみられるようになったため,当院救急内科を受診し,当科に入院した.頸部リンパ節の腫脹は認めなかったが,CTで回結腸動脈リンパ節が腫大していた.紅斑の病理組織学的所見は,組織球性壊死性リンパ節炎(histiocytic necrotizing lymphadenitis:HNL)として矛盾しなかった.前医からの一連の症状もHNLによるものと考えた.HNLは再発時に初めて皮膚科を受診する可能性もある.再発時には,頸部リンパ節腫脹などの典型的所見がみられないこともあり,診断に際して留意する必要がある.

小児と若年者に生じた結節性多発動脈炎の2例

著者: 田中弘子 ,   中馬久美子 ,   鑑慎司 ,   日野治子 ,   西尾晴子 ,   渡邉浩

ページ範囲:P.219 - P.224

要約 症例1:23歳,女性.初診3か月前より2週間ほど発熱あり,いったん解熱した.初診2か月前から両下腿に軽度の圧痛を伴い浸潤を触れる紅斑と足・膝関節痛が出現した.症例2:10歳,男児.初診2週間前から足関節痛を,1週間前から右下腿に疼痛を伴う紅斑を自覚した.いずれの症例も抗核抗体は陰性で,皮膚生検で脂肪織内の動脈に炎症細胞の浸潤,血管壁のフィブリノイド変性を認め,結節性多発動脈炎と診断した.2例ともプレドニゾロン内服開始し,紅斑は消失した.その後の経過で再発を認めていない.結節性多発血管炎は稀な疾患であるが,診断の遅れは不可逆的な臓器不全を起こす可能性があるため,皮疹と発熱を呈する例では鑑別に入れることが重要である.早期診断のためにも皮膚症状がある場合は積極的な皮膚生検が望まれる.

水疱内容液で診断することができた塩酸バンコマイシン誘発性線状IgA水疱性皮膚症の1例

著者: 吉濱絵理 ,   吉田憲司 ,   加藤寿香 ,   守井茅 ,   黒沼亜美 ,   小林麻友子 ,   志水陽介 ,   水谷沙織 ,   石河晃

ページ範囲:P.225 - P.230

要約 67歳,女性.膵体部癌Stage IV.急性閉塞性胆管炎に対する塩酸バンコマイシン(VCM)投与2日目に手掌足底に緊満性水疱,両下腿に紅斑が出現した.病理組織では表皮下水疱と,真皮乳頭部に好中球の浸潤を認めた.蛍光抗体直接法では表皮真皮境界部にIgAの線状沈着を認めた.また水疱内容液を用いた酵素免疫測定法ではVCM添加下でVII型コラーゲンに対するIgAの反応性の増強を認め,1M食塩水剝離皮膚を基質とした蛍光抗体間接法ではVCMを添加した場合に真皮側にIgAの線状沈着の増強を認めた.以上よりVCM誘発性線状IgA水疱性皮膚症と診断した.VCM中止後新生水疱はみられなくなったが,膵体部癌肺転移による呼吸不全で死亡した.近年VCM誘発性の線状IgA水疱性皮膚症ではVCM存在下でのみVII型コラーゲンへの反応性を有する血清中IgA抗体の存在が注目されている.本症例では保存していた水疱内容液を用いてVCM誘発性線状IgA水疱性皮膚症と診断しえた本邦初の報告であり,診断困難症例における検体保存の重要性を改めて認識した.

バンコマイシン誘発性線状IgA水疱性皮膚症と考えた1例

著者: 安達夏紀 ,   池田英里 ,   梅垣知子 ,   石崎純子 ,   山上淳 ,   田中勝

ページ範囲:P.231 - P.234

要約 88歳,男性.ペースメーカー感染に対し塩酸バンコマイシン(VCM)を15日間投与したが,感染症状は改善せず,抗菌薬をメロペネムに変更された.その2日後,四肢に浮腫性紅斑と緊満性水疱を生じた.病理組織学的には好酸球主体の炎症細胞浸潤を伴う表皮下水疱であり,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部にIgAとC3の線状沈着がみられた.抗菌薬中止後,紅斑・水疱は速やかに軽快した.経過から,薬剤誘発性線状IgA水疱性皮膚症(linear IgA bullous dermatosis:LABD)と診断した.薬剤誘発性LABDは,原因の約半数がVCMである.VCMの発症への関与の検討には,VCM添加下での蛍光抗体間接法と7型コラーゲンに対するELISA法が有用とされている.自験例では,水疱治癒後の血清を用いた検討を行ったが陰性であった.原因の特定には,水疱出現時の血清を用いることが重要と考えられた.

Fumarate hydratase (FH)遺伝子変異が同定された多発性皮膚平滑筋腫の1例

著者: 寺尾香菜 ,   林良太 ,   横山令 ,   安齋理 ,   結城明彦 ,   濱菜摘 ,   久保田葉子 ,   阿部理一郎

ページ範囲:P.235 - P.239

要約 53歳,女性.多発性子宮筋腫により子宮全摘後.10年前から左下顎に弾性硬の紅色結節が多発し,53歳時に結節の増大を認めた.前医および当科で施行した生検組織では,真皮内の結節性病変内に平滑筋線維束が縦横に錯綜し,腫瘍細胞はデスミン,SMAが陽性であったことから,多発性皮膚平滑筋腫と診断した.さらに,遺伝子解析でフマル酸ヒドラターゼ(fumarate hydratase:FH)遺伝子のexon5に既知のミスセンス変異c.584T>C(p.Met195Thr)heterozygousを同定し,多発性皮膚平滑筋腫・子宮筋腫と診断した.FH遺伝子に変異を有する皮膚平滑筋腫患者の家系では,子宮筋腫や腎細胞癌の合併頻度が高く,腎細胞癌の合併は予後規定因子となるため,定期的な画像検索が必要である.特に子宮筋腫の合併のある患者,家系内に腎細胞癌患者やFH遺伝子変異の同定された患者がいる場合には,FH遺伝子変異の有無につき積極的に解析すべきと考える.

左膝に生じたグロムス腫瘍の1例

著者: 吉村智子 ,   吉原渚 ,   池田志斈

ページ範囲:P.240 - P.244

要約 86歳,女性.初診約2か月前に左膝に受傷した.その後同部位に疼痛を伴うしこりを自覚し,当科を受診した.初診時,左膝に4mm大,自発痛を伴う紅色ドーム状丘疹がみられた.病理組織学的所見では,真皮内に周囲と境界明瞭な結節状病変がみられた.結節内部には好酸性から両染性の立方体の胞体と類円形の核を有する腫瘍細胞が密に増殖していた.また腫瘍巣には拡張した血管腔がみられた.免疫染色において,腫瘍細胞はαSMA陽性,デスミン陰性であった.以上よりグロムス腫瘍と診断した.2008〜2019年で医学中央雑誌で調べえた範囲で皮膚単発性グロムス腫瘍337件中,自験例と同じ膝に発生した症例は2.1%と比較的稀であった.疼痛を伴う皮膚腫瘍の発生部位が手指足趾以外であっても,グロムス腫瘍を鑑別疾患として考える必要がある.

右内頸静脈閉塞を合併した顔面有棘細胞癌の1例

著者: 中原智史 ,   梶原一亨 ,   尹浩信

ページ範囲:P.245 - P.250

要約 83歳,女性.当院初診2か月前より右眉毛部に腫瘤を自覚,生検にて有棘細胞癌の診断となった.皮膚悪性腫瘍切除術を施行したが,術後4か月頃より局所再発し,右耳介周囲から頸部にかけてリンパ節転移を認めた.同時に右顔面浮腫が出現し,CTにて腫瘍による右内頸静脈の圧迫および閉塞を認めた.内頸静脈への腫瘍浸潤の可能性,高齢でありperformance status(PS)が低下していたこと,および予後改善の見込みが低いことから手術療法や化学療法は施行しなかった.右顔面から頸部へ姑息的放射線照射療法を施行し,局所再発部やリンパ節転移巣の縮小および顔面浮腫・疼痛の軽減が得られ,症状緩和に至った.内頸静脈閉塞を合併した皮膚悪性腫瘍はきわめて稀であり,侵襲的治療が困難な症例においては症状緩和を目的とした放射線療法が有効であると考えられた.

手指に生じた低分化型syringomatous carcinomaの1例

著者: 角田梨沙 ,   亀谷葉子 ,   矢澤真樹 ,   安西秀美

ページ範囲:P.251 - P.256

要約 88歳,男性.半年前からの手指紅色腫瘤を主訴に当院受診した.初診時,後爪郭に表面湿潤した隆起性紅色腫瘤を認めた.下床との可動性不良で,爪甲の破壊を伴った.組織像では,表皮は壊死し,表皮直下から皮下組織に腫瘍細胞が管腔構造を伴いながら胞巣形成し,骨皮質や指腹側まで浸潤性に増殖していた.腫瘍細胞は異型性が目立ち,免疫染色でCK7とc-kitが部分的に陽性,EMAとCEAが管腔側で陽性,CK20,GCDFP-15は陰性だった.全身検索で明らかな他臓器病変は確認されず,他の皮膚原発の汗腺・汗管系腫瘍を組織所見で除外し,低分化型syringomatous carcinomaと診断した.本症はアポクリン分化のない汗管系悪性腫瘍と総括され,低分化型の組織像は特に多様性に富み,診断困難なことが多い.自験例のような低分化型SCはリンパ節・他臓器転移の報告も比較的多く,分化度を含めた診断が重要と考えた.

仙骨部の紅斑を呈した尿管癌皮膚転移の1例

著者: 関満里奈 ,   大草健弘 ,   武井華子 ,   荻原麻里 ,   鈴木茉莉恵 ,   伊藤雄太 ,   中田土起丈 ,   山本向三

ページ範囲:P.257 - P.261

要約 80歳,男性.初診5年前に尿管癌のため左腎尿管全摘除および放射線療法を施行された.初診1年前に傍大動脈リンパ節転移が出現したが化学療法は希望しなかった.初診1か月前に仙骨部に瘙痒感および疼痛を伴う皮疹が出現したため近医を受診,当科を紹介された.仙骨部に比較的境界明瞭な,軽度の浸潤を触れる紅斑局面を認めた.淡紅色で一部紫紅色調を呈し,瘙痒感を伴っていた.皮膚生検では,真皮上層から皮下組織にかけて,索状,胞巣状に増殖する細胞集塊を認めた.腫瘍細胞は異型性に富み,免疫組織学的にCK7に陽性,CK20一部で陽性,uroplakinは一部で弱陽性であった.以上より尿管癌の皮膚転移と診断した.転移様式としては傍大動脈リンパ節からの逆行性の浸潤が考えられた.腎盂尿管癌の皮膚転移例は稀であるが,既報告例では自験例のような紅斑を含め多様な病変がさまざまな部位に生じている.腎盂尿管癌の患者では,全身皮膚を注意深く診察する必要がある.

手指の腫脹と関節痛が初発症状であった多中心性細網組織球症の1例

著者: 大竹里奈 ,   加藤恒平 ,   三浦圭子 ,   並木剛 ,   保田晋助 ,   横関博雄

ページ範囲:P.263 - P.268

要約 67歳,女性.初診1年半前より腹膜癌に対して化学療法を施行.初診1か月前より両手指の腫脹,関節痛が出現し当科へ紹介された.全指の腫脹を認め,MP関節背面,爪囲に紅斑を認めた.皮膚筋炎や強皮症,混合性結合組織病を疑い手指の腫脹部と手背の紅斑から生検した.両者で真皮浅層から脂肪織にかけてすりガラス状で好酸性の胞体をもつ組織球様細胞・多核巨細胞を認めた.免疫染色ではCD68陽性,CD1a陰性,S100蛋白陰性であり,多中心性細網組織球症と診断した.プレドニゾロン内服で加療中,手指の腫脹は軽快し,典型的な指背の小結節が出現した.手指の腫脹に関節痛を伴っている場合は関節リウマチに加えて多中心性細網組織球症を鑑別に挙げる必要があると考えた.

クラリスロマイシン,イソニアジドの多剤併用療法で治癒した皮膚Mycobacteroides abscessus subsp. massiliense感染症の1例

著者: 中村かおり ,   福田知雄

ページ範囲:P.269 - P.273

要約 13歳,女性.初診6か月前,左下腿に擦過傷を生じた後から刺虫症様の発赤が出現し潰瘍化した.病理組織では多核巨細胞を伴う肉芽腫様病変を認め,小川培地では淡黄色のコロニーの発育を確認した.DNA-DNA hybridization法,質量分析法ではいずれもMycobacterium abscessusが同定され,後に行ったmultiplex PCRでMycobacteroides abscessus subsp. massilienseと菌種同定された.クラリスロマイシン,イソニアジドの2剤内服6か月で潰瘍は瘢痕治癒した.近年,Mycobacterium abscessusは遺伝子検査にてMycobacteroides abscessus subsp. massilienseを含む3亜種のcomplexであることが判明し,Mycobacteroides abscessus subsp. massilienseはクラリスロマイシンに対し誘導耐性を生じにくい菌種であることが示された.しかしながら,クラリスロマイシン無効例や反応が不十分なために切除を要する場合もあり,本菌の治療にはクラリスロマイシンを含む多剤併用療法が妥当と考える.

シクロホスファミド間欠静注療法が著効した難治性壊疽性膿皮症の1例

著者: 黒沼亜美 ,   志水陽介 ,   青木周平 ,   森須祥子 ,   加藤寿香 ,   三海瞳 ,   今井俊輔 ,   市村知佳 ,   石河晃

ページ範囲:P.275 - P.280

要約 55歳,男性.3か月前に右下腿内顆に1cm大のびらんが出現したため紹介医を受診した.受診時,右下腿内顆に堤防状に隆起する壊死組織が固着した疼痛を伴う潰瘍があった.前医で生検施行後,潰瘍が急速に拡大したため精査加療目的に当院を紹介され受診した.病理組織像では真皮全層に好中球を主体とする炎症細胞浸潤があり,臨床経過および組織学的所見から壊疽性膿皮症と診断した.炎症性腸疾患や血液・造血系疾患の基礎疾患はなかった.ステロイドパルス療法,プレドニゾロン1mg/kg/日内服で改善せず,シクロスポリンを導入したが肝腎機能障害が生じ継続困難となった.長期のステロイド全身投与による肺炎,圧迫骨折を併発し,その後も潰瘍は拡大したためシクロホスファミド間欠静注療法を施行したところ潰瘍は急速に縮小した.壊疽性膿皮症に対するシクロホスファミド間欠静注療法の使用については,海外で有効例が少数散見されており,治療選択肢の1つとなりうると考えた.

慢性骨髄性白血病患者に生じた壊疽性膿皮症に対し植皮術を行った1例

著者: 榊原萌 ,   清原佐央里 ,   久本晃義 ,   加藤麻己 ,   中嶋智香子 ,   下山陽也 ,   平林恵 ,   桒野嘉弘

ページ範囲:P.281 - P.284

要約 75歳,男性.初診の2週間前より発熱,左下腿の腫脹発赤があり当院受診.左下腿に腫脹発赤,黒色〜黄色の潰瘍局面を認め,生検を施行した.病理組織では,真皮から皮下組織にかけて高度の好中球浸潤がみられたが,細菌・真菌・抗酸菌培養を数回行ったがすべて陰性であった.以上より壊疽性膿皮症と診断した.プレドニゾロン30mg/日より開始し,潰瘍の新生は抑制された.広範囲の潰瘍が残存したため,プレドニゾロン25mg/日内服継続下に植皮術を施行し上皮化がみられ,現在潰瘍の新生はない.壊疽性膿皮症でプレドニゾロン投与中においても病勢がコントロールされていれば,広範囲の潰瘍に対して,植皮術を治療選択肢として検討すべきである.

マイオピニオン

多くの縁に恵まれて

著者: 谷崎英昭

ページ範囲:P.198 - P.199

1. はじめに
 この度,「今後の抱負」というテーマで本欄の執筆の機会をいただきました.2020年4月より現職を務めており,「今後の抱負」ということで期待された内容は,医局運営の方針であったりもっと大きな将来の皮膚科像であったりを述べることがよいのかもしれませんが,そのような内容については私には荷が重いと感じました.そこで,もっと皮膚科の魅力を広めたいことともっと所属している教室や病院を超えて日本全国あるいは世界に仲間を増やすことで,医師として働くことの充実度が上がることを伝えたい,について本欄では述べさせていただきます.

連載 Clinical Exercise・175

Q考えられる疾患は何か?

著者: 田中隆光

ページ範囲:P.195 - P.196

症例
患 者:45歳,女性
主 訴:発熱,体幹四肢の皮疹
既往歴:子宮筋腫,2か月前から外耳炎と感音性難聴.
現病歴:初診の6日前から40℃台の発熱があり,2日後,体幹・四肢に自覚症状のない紅色丘疹が散発した.同時に両大腿内側に圧痛のある爪甲大の紅斑が数個出現した.数日後,紅色丘疹は一部水疱化した.
現 症:体幹四肢に小豆大までの紅色丘疹と膿疱が混在し,一部痂皮が付着していた(図1a).また,体幹四肢に米粒大の表面が白色で中央が萎縮した丘疹(図1b)も数個認め,さらに両大腿に爪甲大,表面淡紅色の境界不明瞭な皮下硬結(図1c)が4〜5個あり,下床との可動性は良好であった.頸部リンパ節腫脹と項部硬直を伴っていた,40℃台の高熱も続き,頭痛,嘔気,全身の筋肉痛が出現した.

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目次

ページ範囲:P.191 - P.191

欧文目次

ページ範囲:P.193 - P.193

文献紹介

ページ範囲:P.250 - P.250

書評

ページ範囲:P.285 - P.285

書評

ページ範囲:P.286 - P.286

次号予告

ページ範囲:P.287 - P.287

あとがき

著者: 朝比奈昭彦

ページ範囲:P.290 - P.290

 コロナ禍の中,冬の北京オリンピックが終了しました.日本からの観客もなく,選手に多くの制約がかかるなか,日本選手は立派な成績を残しました.日頃はスポーツと無縁な私も,にわかファンになって観戦し,睡眠時間や仕事の時間が削られることもありましたが,日頃の雑用を忘れて元気になれる有意義なひと時を過ごしました.特に感心したのは,チームプレーの力です.団体競技や団体戦で良いパフォーマンスを発揮するためには,個人の力量以上に,チームワークや戦略が必要になってきます.女子カーリングの試合の中継では,選手同士が声を出し合ってしっかりコミュニケーションを取っているのが印象的で,これが好成績につながっていたようです.今現在,新型コロナウイルスのパンデミックが続き,残念ながら人と人とのコミュニケーションが大きな制約を受けています.たとえば先日の親族の結婚式の際に,私は大学の規定もあって披露宴に出席することができませんでした.自らの医局でも,大学からカンファレンス開催を縮小する指示が出ているうえに,マスク越しでは参加者の表情がわかりません.医局でこれまで当たり前のようにあった送別会や歓迎会も,長らく実施できておりません.医局員同士で顔を突き合わせ,時に無礼講で談笑する機会が減ってしまい,これが巡り巡って,目に見えない形で「組織力」が削がれてしまうことを危惧しています.本音を語り合いながら周囲とコミュニケーションを取っていくことが,各人のベストパフォーマンスにつながっていくことは間違いなく,早くこのパンデミックの出口が見えることを祈っています.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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