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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科76巻4号

2022年04月発行

雑誌目次

症例報告

HIV感染症を合併した尋常性乾癬に対しイキセキズマブを投与した2例

著者: 植田麻理子 ,   竹田さゆり ,   山田尚人 ,   椙村有里子 ,   滝笑津子 ,   嘉陽織江 ,   清水真

ページ範囲:P.303 - P.307

要約 症例1:46歳,男性.17年前にヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus,HIV)感染症を発症しantiretroviral therapy(ART)療法を施行中.12年前に尋常性乾癬を発症.外用療法に加えエトレチナート,ナローバンドUVB,アプレミラストによる治療を受けていたが皮膚症状の改善乏しく1年前よりイキセキズマブの投与を開始した.症例2:39歳,男性.9年前にHIV感染症を発症しART療法を施行中.8年前に尋常性乾癬を発症.外用療法に加えエキシマライトを施行していたが皮膚症状の改善乏しく18か月前よりイキセキズマブの投与を開始した.HIV感染症を合併した尋常性乾癬はHIV非合併と比較した場合,より難治性であり管理が複雑とされる.われわれは治療に難渋したHIV合併尋常性乾癬に対して生物学的製剤を使用し,良好なコントロールを得られた症例を経験したので報告する.症例1,2ともに有害事象の出現なくPASI clearを維持できており,生物学的製剤は尋常性乾癬の治療法の選択肢の1つになりうると考える.

爪下神経鞘腫の2例

著者: 堀内あゆみ ,   長谷川道子 ,   田村敦志

ページ範囲:P.309 - P.314

要約 症例1:33歳,男性.左第5指爪甲下に12×11mmの淡紅色結節があり,爪甲変形を伴っていた.MRIではT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を示す造影効果のある腫瘤がみられた.症例2:21歳,女性.左第3指指尖から爪甲下にかけて9×5mmの弾性硬の結節があった.それぞれ,軟部腫瘍,グロムス腫瘍疑いで,指ブロック下に摘出した.病理組織像では2例とも,紡錘形の腫瘍細胞が密に増殖するAntoni A型と疎な間質内に腫瘍細胞が散在するAntoni B型の部分を認め,Verocay bodyもみられた.免疫染色では2例ともS100蛋白,SOX10が腫瘍細胞に陽性であり,神経鞘腫と診断した.神経鞘腫の爪下発生例は稀であり,過去16年間に国内外で7例報告されているに過ぎない.ほとんどが手指に発生し,臨床・画像所見は爪下グロムス腫瘍に類似するが,グロムス腫瘍が小型であるのに対し,爪下神経鞘腫はより大型で1cmを超えるものが多く,鑑別に役立つ所見と考えた.

肺非結核性抗酸菌症を伴い左母趾に生じたlocalized variant of reactive angioendotheliomatosisの1例—反応性毛細血管増殖の機序についての検討

著者: 影山葉月 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.315 - P.320

要約 68歳,女性.肺非結核性抗酸球症疑い(初診1年後に確定)にて当院呼吸器内科に通院していた.7年前より左母趾伸側に不整形な紅斑を認めていたが難治であり瘙痒も増強するため当科を受診した.病理組織にて真皮浅層に島状に毛細血管増殖像を認めた.生検後に自然消退傾向を示し,液体窒素凍結治療により短期間で治癒した.臨床経過および病理所見より,自験例を左母趾に限局性に生じたlocalized variant of reactive angioendotheliomatosisと診断した.種々の毛細血管増殖性疾患との異同において,自験例は,高齢者の母趾に限局して瘙痒を伴って生じ,真皮浅層の毛細血管増殖を主体とし,肺非結核性抗酸菌症を合併した点で特異であった.また免疫組織化学的染色では,毛細血管周囲に組織球の浸潤が多数認められ,病態に関連する可能性も示唆された.

肺多形癌の皮膚転移の1例

著者: 鈴木彩子 ,   山口貴子 ,   唐川大 ,   遠藤幸紀 ,   廣岡信一 ,   合地美奈

ページ範囲:P.321 - P.326

要約 74歳,男性.初診の約1か月前に鼻部,頭頂部に紅色腫瘤が出現し,急速に増大したため当科を受診した.鼻部には10mm大,頭部には20mm大のそれぞれドーム状に隆起する紅色腫瘤がみられ,両者の病理組織像は真皮から皮下組織のほぼ全層が多形性のある核と淡明な胞体を有する大型の異型細胞に置換されており,いずれも肉腫様癌の所見であった.画像検査で右肺上葉に腫瘤陰影を認め,胃,舌,右鼠径リンパ節に転移を疑う所見がみられたことから,自験例は肺癌の皮膚転移と考えた.剖検にて肺腫瘍は浸潤性腺癌と肉腫様癌が混在する多形癌であり,肺の肉腫様癌部分の腫瘍細胞が鼻部の腫瘍細胞と同様の所見であったこと,免疫組織学的にも両者に相同性がみられたことから,自験例は肺多形癌の皮膚転移と診断した.皮膚生検で肉腫様の構造がみられた場合,肉腫様癌の可能性も考慮し,各種免疫染色や皮膚転移を想起した原発巣の検索を行うべきである.

大細胞神経内分泌癌の皮膚転移と考えられた1例

著者: 早川道太郎 ,   鈴木千尋 ,   椎山理恵 ,   安西秀美

ページ範囲:P.327 - P.332

要約 75歳,男性.当院内科入院中に,右側腹部の皮下腫瘤を指摘され当科を紹介受診した.初診時,右側腹部に,径80mm大で表面が紫紅色,下床との可動性良好な弾性硬の皮下腫瘤を触知した.同腫瘤からの生検標本では,病理組織学的に,多数の核分裂像と壊死を伴った神経内分泌形態を示し,神経内分泌マーカーであるクロモグラニンA,シナプトフィジン陽性の腫瘍細胞がみられた.また,造影CTにて,左肺尖部に径26mmの結節影,肝両葉に不均一造影効果を有する多発腫瘤影および右側腹部に同様の造影効果を呈する63×40mmの皮下腫瘤を認めた.以上の所見から,肺原発の大細胞神経内分泌癌の皮膚,肝転移と診断した.本症の既報の多くは肺原発であり,転移巣は肝臓や骨,脳が好発する.原発・転移巣ともに皮膚での発生報告はきわめて稀であるが,皮膚転移を有する症例の半数が皮膚生検を機に診断されており,皮膚科医が本疾患をよりいっそう認知することが必要と考える.

皮膚・皮下浸潤を契機に診断した副鼻腔癌の2例

著者: 塔筋恵実 ,   米井希

ページ範囲:P.333 - P.337

要約 症例1:67歳,女性.初診2か月前から前額皮下腫瘤が出現し,徐々に増大してきたため当科受診.CT検査,皮膚生検を行い,前頭洞癌の皮下浸潤と診断した.症例2:86歳,女性.左鼻翼部の紅色腫瘤を主訴に当科を紹介され受診した.上顎洞癌の皮膚浸潤と診断した.副鼻腔癌の皮膚・皮下浸潤をきたした報告は,本邦では自験例を含め13例と非常に稀である.皮下浸潤をきたした副鼻腔癌はstage 4であり,約半数は死の転帰をとり予後不良であるが,近年,頭頸部癌に対してペムブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害薬による新たな治療法が確立され,予後の改善が期待される.進行期の副鼻腔癌であっても一概に予後不良とは言い切れず,皮膚科を初診した場合に早期診断をすることの意義は大きい.顔面に下床と可動性不良の皮膚・皮下腫瘍を診た際は,副鼻腔癌の皮膚浸潤も念頭に置き早期に診断し,耳鼻科での根治的治療につなげることが肝要である.

左中指末端黒子型と左上背部表在拡大型の同時多発悪性黒色腫の1例

著者: 池田賢太 ,   浦上仁志 ,   杉原悟 ,   加持達弥 ,   山﨑修 ,   森実真 ,   増地裕

ページ範囲:P.339 - P.344

要約 69歳,男性.左中指先端の黒色結節が徐々に拡大し,悪性黒色腫(malignant melanoma:MM)が疑われ前医より当科を紹介受診した.左中指先端から爪甲下に10×6mm大の黒色結節を認め,小指側に淡い褐色斑を伴っていた.PET-CTでリンパ節転移・遠隔転移は認めず,病変部切除・センチネルリンパ節生検の方針となった.手術前日に背部を診察すると中央に大豆大の小結節を伴う14×14mm大の辺縁不整な黒色斑を認め,MMの多発疑いで同時に切除した.左中指は末端黒子型(acral lentiginous melanoma:ALM)で病期IIC,左上背部は表在拡大型(superficial spreading melanoma:SSM)で病期IIIBであった.術後補助療法の希望なく経過観察中で,術後1年再発・転移はない.海外での原発性多発性悪性黒色腫(multiple primary melanomas:MPMs)はMM全体の1.2〜8.2%だが,本邦でMPMsは非常に稀である.また,海外のMPMsはSSMが多いが,自験例は異なる部位にALMとSSMが合併した点が特徴的であった.日本人のMMでも多発の可能性を考慮し全身の皮膚を評価することが大切である.

Streptococcus dysgalactiae subspecies equisimilisによる多発軟部組織感染症の1例

著者: 青木孝司 ,   福山雅大 ,   佐藤洋平 ,   下田由莉江 ,   大山学

ページ範囲:P.345 - P.349

要約 52歳,女性.初診3日前より左大腿に,1日前より右手関節,右腸骨部,左下腿に発赤,腫脹,疼痛が出現し,39℃台の発熱も認めた.初診時ショックバイタルであり,末梢白血球数,CRP値は著明高値であった.血液培養からStreptococcus dysgalactiae subspecies equisimilis(SDSE)が検出されたことから,SDSEによる多発軟部組織感染症と診断した.抗菌薬の投与にて発赤は改善し,炎症反応も速やかに改善した.関節痛や浮腫の治癒はやや遷延したものの,徐々に改善した.従来SDSEはG群溶連菌に分類され病原性に乏しいとされており,本邦における多発軟部組織感染症の報告も数例に留まっているが,近年劇症化した症例も散見される.基礎疾患がなくとも,軟部組織感染症でSDSEが検出された場合は,多発化や劇症化の可能性を念頭に置いて治療を行うことが重要であると考えた.

Escherichia coli単菌によると考えられた壊死性筋膜炎の1例

著者: 谷口君香 ,   臼居駿也 ,   横田日高 ,   吉見育馬 ,   山脇聖子

ページ範囲:P.351 - P.357

要約 66歳,男性.既往に糖尿病,慢性腎不全,慢性膵炎からの胆管狭窄があり,39℃台の発熱と左下肢の発赤,紫斑と熱感腫脹を認めた.意識は清明で,皮膚試験切開では,出血があり,フィンガーテストは陰性であった.抗菌薬を開始したが,敗血症性ショックを起こした.翌日,採血でCKとCRPの上昇を認め,壊死性筋膜炎と診断した.血液,切除した壊死組織の培養からは共にEscherichia coli単菌が検出された.E. coli単菌が起因菌と考えられた壊死性筋膜炎の症例は珍しく,肝硬変や糖尿病などの基礎疾患があることが特徴である.胆汁内の細菌はE. coliが最も多いことを考えると,本症例は胆管狭窄から胆囊内圧が上昇し,バクテリアルトランスロケーションを起こしたと考えた.基礎疾患のある患者では胆管狭窄の既往歴はE. coli単菌の壊死性筋膜炎のリスク因子になりうることを念頭に置くべきである.

来日外国人女性に生じた皮膚腺病の1例

著者: 櫻田芙美 ,   河野秀郎 ,   夏秋洋平 ,   上村知子 ,   名嘉眞武国

ページ範囲:P.358 - P.362

要約 46歳,女性,フィリピン人.1か月前に出現した左鎖骨上窩から頸部にかけての熱感,発赤,腫脹を伴う皮下腫瘤を主訴に当科を受診した.エコー検査で同部位に膿瘍形成を認めたため皮膚生検を施行し,膿汁と皮膚を各種培養,遺伝子検査(PCR)に提出したところ結核菌が同定された.病理組織所見では,真皮内に形質細胞,リンパ球,好中球,好酸球を含む多彩な炎症細胞浸潤と真皮深層に乾酪壊死を認めた.血液検査所見では結核菌特異的インターフェロン-γ産生が陽性であり,皮膚腺病と診断した.胸部CT検査を施行したところ右上葉S2,左下葉S6に結節影を認め,肺結核を合併していた.喀痰培養からは抗酸菌陰性であり,隔離は行わずにピラジナミド,イソニアジド,リファンピシン内服で加療開始した.眼科受診後からエタンブトール投与も開始する予定であったが,受診が途絶えその後の経過は不明である.自験例のように来日した外国人における皮膚結核は今後も増加する可能性があり,皮下腫瘍や皮膚潰瘍を診察する際は皮膚結核も鑑別に挙げ培養検査を検討すべきであると考えた.

免疫抑制状態の患者に生じたTrichophyton rubrumによる白癬性膿瘍の1例

著者: 齋藤聡一郎 ,   竹内瑞希 ,   吉野裕美子 ,   中村かおり ,   人見勝博 ,   福田知雄

ページ範囲:P.363 - P.367

要約 67歳,男性.ネフローゼ症候群に対しプレドニゾロン,タクロリムス内服中,初診3か月前から左下腿に小結節が多発してきた.初診時,左下腿から左足に淡褐色局面を認め,局面内には大豆大までの皮下結節が多発していた.褐色局面から真菌鏡検で糸状菌が確認されたが,皮下結節は初回の皮膚生検では診断確定に至らず,体部白癬に対して抗真菌薬外用での経過観察となった.外用で褐色局面は軽快したが,皮下結節は増大,膿瘍化したため,再生検を施行した.組織内に糸状菌を認め,また真菌培養および分子生物学的手法でTrichophyton rubrumを同定,本菌による白癬性膿瘍と診断した.テルビナフィン内服単独では難治であったため,追加で切開排膿処置を行い改善がみられた.深在性白癬の中でも膿瘍形成をきたすものは稀である.難治例が多いため,十分な治療効果を得るには抗真菌薬内服に加え,積極的に外科処置を加える必要があると考えた.

潰瘍形成を伴った単純ヘルペス性汗管炎の1例

著者: 岡本修 ,   橋本拓造 ,   秋篠宏介 ,   宗元碩哲 ,   蒲池綾子 ,   橋本裕之

ページ範囲:P.369 - P.374

要約 81歳,女性.ステロイド内服中.14日前に鼻孔部に小潰瘍が出現した.単純疱疹と診断してビダラビン軟膏外用で加療したが潰瘍は増大した.治療を抗菌薬点滴に変更したが皮疹は軽快しなかった.再度単純疱疹を考え生検を行い,アシクロビルの点滴を開始したところ潰瘍は縮小し点滴6日目に上皮化した.病理組織では真皮中層の汗管上皮にすりガラス状の核を持った大型の変性細胞が散在し,この部は単純ヘルペスウイルスの免疫染色が陽性で,単純ヘルペス性汗管炎と最終診断した.汗管のヘルペス感染の報告はわずかで,自験例は稀な病態と考えた.免疫抑制状態や全身状態不良の患者のヘルペス感染症は特殊な臨床像や組織像を取りうるが,それらを知らなければヘルペス感染症を疑うことは困難である.このため今回稀な組織型を呈した1例を報告した.

肛門周囲潰瘍よりサイトメガロウイルス感染症による小腸穿孔と診断した後に下肢深部静脈血栓症を発症した1例

著者: 影治里穂 ,   飛田泰斗史 ,   竹内大平 ,   富林敦司 ,   来島敦史

ページ範囲:P.375 - P.379

要約 66歳,女性.Castleman病にてプレドニゾロン7.5mg/日内服中で,末期腎不全にて血液透析も受けていた.来院3日前より腹痛があり,前医の腹部CTで消化管穿孔を認め,当院に紹介された.緊急手術にて小腸穿孔が確認され,小腸部分切除術が施行された.両足背と肛門周囲に潰瘍を認め当科に紹介された.皮膚生検等よりサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)感染症と診断した.ガンシクロビルを開始したが,術後24日目に両下肢深部静脈血栓症を発症した.自験例はCMV感染症に伴う肛門周囲潰瘍,小腸穿孔,下肢深部静脈血栓症を合併した稀な症例であった.免疫抑制状態での肛門周囲潰瘍を診たときには,CMV感染症を考える必要がある.また,深部静脈血栓症の発症にも注意する必要がある.

マイオピニオン

仕事は楽しく 人にやさしく 医療を前進させよう

著者: 大塚篤司

ページ範囲:P.300 - P.301

 2021年4月より川田暁先生の後任として,近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授を拝命いたしました.私は2003年に信州大学医学部を卒業し,京都大学医学部附属病院にて研修を開始しました.その後,島根県立中央病院皮膚科で2年間,外来診療,入院患者の加療や手術を学び,2006年から京都大学大学院博士課程にて皮膚免疫とアレルギーの研究手法を習得いたしました.2012年からの2年間,チューリッヒ大学病院皮膚科にて免疫チェックポイント阻害薬の研究に携わりました.現在はアトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚アレルギー疾患や悪性黒色腫(メラノーマ)を専門に診療と研究を行っています.
 皮膚科の診療は近年,生物学的製剤と免疫チェックポイント阻害薬の登場で大きく変化しています.これまで治療が難しかった重症の乾癬やアトピー性皮膚炎が治療可能となり,従来の抗癌剤が全く効果のなかった悪性黒色腫は免疫チェックポイント阻害薬が効果的であることがわかりました.一方,治療の発展に伴い臨床の現場ではクリニカルクエッションが新たに生まれています.例えばアトピー性皮膚炎ではデュピルマブに加え経口JAK阻害薬も使用可能です.それぞれの使い分けに関して,効果を反映するバイオマーカーやフェノタイプとの相関を見つけ出すことが必要です.また,免疫チェックポイント阻害薬は日本人に多い末端黒子型に効果が乏しく,より効果的な薬剤の開発も喫緊の課題となっています.臨床現場で感じた課題を1つ1つを丁寧に拾い上げ,トランスレーショナル・リサーチにつなげていきたいと思っています.

連載 Clinical Exercise・176

Q考えられる疾患は何か?

著者: 福安厚子

ページ範囲:P.297 - P.298

症例
患 者:80歳,女性
主 訴:両足部の皮疹
家族歴:特記すべきことなし.
既往歴:高血圧,脂質異常症,多発性脳梗塞(アスピリン100mg/日,塩酸サルポグレラート300mg/日,シロスタゾール200mg/日,内服中),完全房室ブロック(ペースメーカー挿入中).
現病歴:虚血性心疾患に対して経皮的冠動脈形成術を2回施行された.約1.5か月後に腎機能障害,約2か月後に両足に自覚症状のない網状の皮疹が出現した.
現 症:両第3〜5趾腹に自覚症状や圧痛のない点状から線状の紫紅色調の紅斑がみられ,右第5趾外側では癒合傾向を呈していた(図1a,b).右第5趾外側から連続して外足縁部は紫紅色調の網状皮斑を呈していたが,左外足縁には皮疹はなかった.

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目次

ページ範囲:P.293 - P.293

欧文目次

ページ範囲:P.295 - P.295

文献紹介

ページ範囲:P.357 - P.357

書評

ページ範囲:P.380 - P.380

次号予告

ページ範囲:P.381 - P.381

あとがき

著者: 玉木毅

ページ範囲:P.384 - P.384

 先日見かけたネット記事だが,「スマホがない時代は,みんな電車の中で何してたんですか」と聞かれて「ジャンプとか漫画雑誌を読んでたよ」と言ったら「あんなデカくて重い物を持ち歩いてたんですか」と言われたとのこと.確かに今は8割方の乗客がスマホやタブレットに見入っていて,「デカくて重い」漫画雑誌を読んでいる若者はほぼ皆無である.若者に限らず,日経新聞・スポーツ新聞・週刊誌を読んでいるサラリーマンも,最近とんと見かけなくなった.このほかにも当時当たり前のようにあったものが,今は皆無という例は枚挙に暇がない.回すテレビのチャンネル・電話のダイヤル・リンリンという電話の呼出音・駅の伝言板・写真のフィルム・フロッピーディスク・カセットテープ・ビデオテープ・ポケベル・ワープロ等々,思い出すだけで懐かしく隔世の感がある.公衆電話・電話ボックス・家電(固定電話)・ファックス・石油ストーブ・和式便器・切符や回数券あたりも風前の灯火だろうか.テレビ番組も,若者はYouTube・Netflix・Hulu・Amazonプライムビデオといったオンデマンド配信のメディアに軸足を移しているらしく,チューナーのないネット動画テレビというのが人気らしいから(これはNHKの受信料を払わなくてよいという事情もある),テレビ業界も今後はどうなっていくことか.皮膚科の世界でも,ボチ・リバ湿布・リバコメ・カチリ・バリダーゼ・エレース・フランセチンパウダー・アンダーム・ソルコセリル・リフラップ・ケナログ・硝酸銀・ヒスタ/ノイロ・グリセオフルビン・デルモパン・乱切あたりが該当するだろうか(まだやっている先生がいらしたらごめんなさい).まだあった.でもトシがバレるので,トリルダン・ヒスマナールは知らないことにしておこう.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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