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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科76巻6号

2022年05月発行

雑誌目次

今月の症例

Bowman-Birk protease inhibitorがアレルゲンコンポーネントと考えられたチキンナゲット中の大豆による食物依存性運動誘発アナフィラキシー

著者: 足立厚子 ,   白井成鎬 ,   丸山伸之 ,   田中昭

ページ範囲:P.397 - P.402

要約 15歳,女性.市販チキンナゲットを摂取後運動したところ,全身の蕁麻疹とともに咳,呼吸困難が出現,2週間後にも同様のエピソードを繰り返した.血清特異的IgE(Immuno CAP)は大豆1.00UA/ml(class 2)のみ陽性,プリックテストでは大豆,豆乳,チキンナゲットが陽性.チキンナゲットの成分に大豆が含まれており,大豆による食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)を疑った.アレルゲンコンポーネント特異的IgE(ImmunoCAP)は,Gly m 3,Gly m 4,Gly m 5,Gly m 6は陰性で,大豆Bowman-Birk protease inhibitor(BBI)のみELISA法5.8UE/mlと陽性,Streptavidin ImmunoCAP法でも1.77UA/mlと陽性を示した.ImmunoCAP抑制試験にて,チキンナゲット中にBBIが含有されていることが示されたため,BBIが自験例のFDEIAの原因コンポーネントと診断した.BBIは熱や消化酵素に耐性で,クラス1アレルゲンとなりうるがこれまでに報告はなく,新規アレルゲンである.大豆蛋白は添加剤としてもさまざまな食品に含まれるため,注意を要すると考えた.

症例報告

水酸化カリウムによる広範囲化学熱傷の1例

著者: 桑折信重 ,   松立吉弘 ,   岡﨑秀規 ,   定本靖司

ページ範囲:P.403 - P.408

要約 45歳,男性.水酸化カリウム溶液(濃度10.3%)を運搬中に転倒し曝露した.受傷現場では脱衣・洗浄は施行されず,受傷80分後に前医で脱衣・洗浄が施行された後,当院に搬送された.軀幹前面,腰臀部,下肢を中心とした約55%の受傷面積で,表面は緑褐色調を呈していた(Ⅲ度49%,burn index 52).皮膚・眼表面ともにpH8.5以上であり,搬送直後より計150分間シャワー洗浄を行った.翌日からベッドサイドでのデブリードマンを開始し,自家培養表皮(ジェイス®)植皮術を含めた複数回の手術により救命しえた.自験例は,初期治療の遅れにより搬送時に既に深部への組織損傷を示唆する緑褐色変化を認めたが,受傷翌日からデブリードマンを開始し,早期にジェイス®を用いた植皮術を実施したことで救命できた.自験例のような広範囲化学熱傷を経験することは稀であるが,初期対応について熟知し,深部への組織損傷が疑われる場合には早期に外科的治療を計画する必要がある.

筋線維にミクソウイルス耐性蛋白質Aの発現を確認した皮膚筋炎の1例

著者: 勝尾公祐 ,   八木洋輔 ,   吉田康幸 ,   桒井匠 ,   高木あかり ,   高野誠一郎 ,   大越忠和 ,   西野一三 ,   市村裕輝 ,   沖山奈緒子

ページ範囲:P.409 - P.414

要約 75歳,女性.初診1か月前から体幹・四肢に淡紅色の丘疹・浮腫性紅斑が出現し筋力低下を感じていた.CK上昇と筋炎を示すMRI所見より皮膚筋炎を考えたが,Gottron徴候やヘリオトロープ疹などの特徴的な皮疹はなく,筋炎特異的自己抗体も陰性であった.皮膚生検組織で真皮浅層の炎症細胞浸潤や表皮真皮接合部の液状変性がみられ,皮膚筋炎として矛盾しないものの,特異性に乏しかった.筋生検組織で炎症細胞浸潤や筋線維萎縮は認めなかったが,抗ミクソウイルス耐性蛋白質A(myxovirus resistance protein A:MxA)抗体を用いた免疫染色が陽性であり,皮膚筋炎と診断した.MxAはⅠ型インターフェロンによって誘導される蛋白質の1つで,筋線維のMxA発現は皮膚筋炎に特異性が高い.診断に苦慮する症例ではMxAに対する免疫染色を積極的に検討すべきと考えた.

治療抵抗性の紅皮症を呈したthymoma-associated multiorgan autoimmunityの1例

著者: 勝田来未 ,   角田佳純 ,   山内周 ,   猿喰浩子

ページ範囲:P.415 - P.419

要約 60歳台,女性.関節リウマチに対して長期ステロイド内服中で,X−3年9月に胸腺腫瘍を指摘され,悪性と考えられたが慢性閉塞性肺疾患の合併もあり手術困難なため経過観察となっていた.X年7月より全身に瘙痒を伴う紅色丘疹が出現,全身に拡大傾向を認め紅皮症となった.薬疹を疑い被疑薬中止,ステロイド外用を行うも改善に乏しく,ステロイド内服増量にて緩徐に皮膚状態の改善が得られたが,漸減により部分的に症状が再燃し治療反応性は不良であった.内服薬のdrug-induced lymphocyte stimulation testはすべて陰性であり,病勢制御不良の胸腺腫があることと病理組織にて移植片対宿主病様所見を認めたことから,thymoma-associated multiorgan autoimmunity(TAMA)と診断した.胸腺腫に対する積極的治療は困難であり,初診3か月後に死亡された.TAMAは予後不良と考えられており,可能であれば胸腺腫に対して積極的に治療介入することが望まれるが,胸腺腫への積極的治療介入が困難な症例も多い.治療方針が確立しておらず,またこの疾患に対する皮膚科医の認識が十分ではなく,今後の症例の蓄積が望まれる.

全身麻酔導入時に使用したロクロニウムによるアナフィラキシーショックの1例

著者: 太田梓 ,   東山礼一 ,   中野倫代

ページ範囲:P.420 - P.424

要約 25歳,男性.上口唇皮下腫瘍に対する手術の全身麻酔導入時にレミフェンタニル,ロクロニウム,プロポフォール,ジクロフェナクナトリウム坐剤,セボフルランを投与され,その6分後に全身の発赤と血圧低下を認めた.アナフィラキシーショックの診断で原因精査のため行ったプリックテストではロクロニウムが陽性だった.一方で交差感作の報告がある代替筋弛緩薬のスキサメトニウム,ベクロニウムは陰性だった.このため再手術の際にはスキサメトニウムが投与されたが,投与後もアナフィラキシーを示唆する症状は認めず,再発を予防できたことから,皮膚テストによる原因薬同定と代替薬検討は有意義であったと考えた.本邦では周術期のアナフィラキシーに関するガイドラインが制定されておらず,原因薬剤の疫学調査も途上である.アナフィラキシーショックの再発を予防し,安全性の高い麻酔を施行するため,本邦でも海外と同様のガイドライン制定が望まれる.

顆粒球吸着療法後とセクキヌマブ投与が奏効したIL-36RN遺伝子変異を伴う汎発性膿疱性乾癬の1例

著者: 豊島芳江 ,   中村吏江 ,   坂本拓海 ,   天野愛純香 ,   片岡和洋 ,   木下ひとみ

ページ範囲:P.425 - P.431

要約 77歳,女性.当科初診2年前に全身に膿疱が多発し前医を受診した.膿疱性乾癬として治療するも増悪と軽快を繰り返し,当科初診1か月前より全身に膿疱および発熱,炎症反応高値を認め,前医からのプレドニゾロン(PSL)投与にて解熱したがPSL減量後に再燃あり当科へ紹介された.臨床経過,臨床像,膿疱部の病理組織像より汎発性膿疱性乾癬(generalized pustular psoriasis:GPP)と診断した.顆粒球吸着療法にて皮疹は改善したが新生膿疱を完全に制御できずセクキヌマブ投与に切り替えた.セクキヌマブ投与開始後新生膿疱は治まり,19週後に皮疹は完全に消失した.尋常性乾癬の先行はなく,遺伝子解析にてIL-36RN遺伝子変異を認めIL-36受容体拮抗因子欠損症(deficiency of interleukin-thirty six receptor antagonist:DITRA)と考えた.IL-36RN遺伝子変異解析によりGPP発症リスクや薬剤や妊娠等のGPP誘発因子について患者指導を行うことができ,発症時の早期受診を促すことで生物学的製剤導入等の早期治療介入が可能となるため診断意義は大きいと考える.

Moulin型線状皮膚萎縮症の1例

著者: 大竹里奈 ,   加藤恒平 ,   三浦圭子 ,   並木剛 ,   横関博雄

ページ範囲:P.432 - P.437

要約 37歳,女性.約5年前に左下腿に褐色斑が出現.徐々に左上肢や左腹部などの左半身に増数し,当科へ紹介された.左半身のBlaschko線に一致して中央が陥凹する大豆大からくるみ大までの楕円形の褐色斑が多発していた.病理組織では陥凹部での真皮の菲薄化を認めた.血液検査では各種自己抗体は陰性であった.Moulin型線状皮膚萎縮症,Pasini-Pierini型進行性特発性皮膚萎縮症,モルフェアが鑑別となったが,臨床像で硬化を認めなかったことと片側性でBlaschko線に沿っていたことから総合的にMoulin型線状皮膚萎縮症と診断した.Moulin型線状皮膚萎縮症の報告は本邦では少なく,病理像で病変部と健常部との境界において急峻な陥凹所見を確認した報告はない.陥凹部辺縁から紡錘形に生検し長軸で病変部と健常部の弾性線維の性状や膠原線維間の変化を確認することはモルフェアとの鑑別に役立つと考えた.

定期的な心電図検査で皮膚病変に遅れて生じた心病変を診断しえたサルコイドーシスの1例

著者: 北嶋友紀 ,   山﨑文和 ,   谷崎英昭 ,   岡本祐之 ,   竹花一哉

ページ範囲:P.439 - P.444

要約 48歳,男性.縦隔リンパ節腫脹があり,サルコイドーシスを疑われ当科を受診した.顔面全体に示指頭大の浸潤を触れる結節が多発していた.皮膚生検で非乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫を認め,サルコイドーシスと診断した.初診時およびその後半年ごとの定期受診時に胸部自覚症状や心電図異常はなかったが,初診から5年後に運動時の動悸と右脚ブロックが出現し,Holter心電図で房室ブロックを認めた.MRI,FDG-PET所見からサルコイドーシスの心臓病変と診断し,プレドニゾロン30mg/日から漸減治療を行った.1か月後には心電図,FDG-PETとも正常になり,現在,心臓病変の再燃はなく皮膚病変も軽快している.サルコイドーシスの臓器病変は異時性に出現することがあり特に心病変は予後を左右するため,皮膚病変の治療中でも心症状に関する問診,心電図等の検査を定期的に行うことが望ましいと考える.

Adnexal polyp of neonatal skinの2例

著者: 島田京香 ,   栗田昴幸 ,   岩渕千雅子 ,   日野治子

ページ範囲:P.445 - P.449

要約 生後4日男児の左乳輪内側,生後5日女児の左乳輪外側に,出生時より有茎性,正常皮膚色,弾性軟の小丘疹がそれぞれ単発していた.病理組織では表皮に変化はなく,真皮中央に未熟で小型の毛包,脂腺が存在した.間質には線維芽細胞および毛細血管が多数みられた.以上からadnexal polyp of neonatal skinと診断した.発生部位としては乳輪周囲が最も多く.臨床像は正常皮膚色のポリープ状丘疹と特徴的である.生後1週間以内に脱落することが多いため,新生児の約4%前後でみられるとされているが症例報告は少なく,背景・概念については不明な部分も多い.脱落する機序としては病理組織学的に血管内血栓の報告があり,流入血管の血栓により壊死に陥るとする説が有力とされている.新生児・乳児の乳輪周囲の腫瘍を見た場合は,本疾患を鑑別に挙げる必要がある.

Baker囊胞破裂と続発する深部静脈血栓症とをきたした1例

著者: 新川紗由香 ,   新川宏樹 ,   大塚友貴 ,   舩越建

ページ範囲:P.450 - P.454

要約 74歳,男性.初診1週間前頃に誘因なく生じた右下腿の疼痛と,その後に続発した同部の発赤・腫脹から蜂窩織炎を疑い当科に入院した.入院時施行の下肢静脈超音波検査で血栓はみられなかった.入院後の下肢挙上安静および抗菌薬加療にて,炎症所見は改善したが,D-dimer上昇および右下腿の把握痛増強あり,造影CTを実施しBaker囊胞破裂と診断した.さらに遠位の膝窩静脈に血栓像がみられた.Baker囊胞は通常無症状であるが,腫大や破裂により脛骨神経・膝窩動静脈を圧排しうる.また,破裂により,周囲組織は炎症や出血をきたし下肢の発赤・腫脹・疼痛の原因となる.続発した深部静脈血栓症から肺血栓塞栓症に至った症例も報告されており,下肢の発赤・腫脹・疼痛を診た際には,稀ではあるが本疾患を鑑別に置く必要がある.膝窩の膨隆や脛骨神経圧迫による感覚障害の確認と超音波検査により早期発見ができる可能性が高い.

隆起性皮膚線維肉腫と鑑別を要し5番染色体短腕の増幅を認めた粘液線維肉腫の1例

著者: 朝比奈泰彦 ,   豊島進 ,   櫻井洸貴 ,   福積聡 ,   山﨑一人 ,   沢田智恵子 ,   佐藤友隆

ページ範囲:P.455 - P.461

要約 90歳,男性.4年前から増大する大腿部の隆起性病変を主訴に受診した.同部に10×12cm大の不整形,多房性の隆起性病変を認め,皮膚生検では紡錐形細胞が稠密にシート状に増生し,CD34染色で陽性であった.隆起性皮膚線維肉腫を疑い,全切除を施行した.切除検体では粘液性の基質を背景として紡錐形細胞と細長い曲線状の血管増生を含む領域が認められ,粘液線維肉腫と診断した.また,粘液線維肉腫の既報告例と同様に,FISH(fluorescence in situ hybridization)法で5番染色体短腕の増幅を認めた.粘液線維肉腫は同一組織内でも多様な病理組織像を呈するため,生検のみでは組織診断が困難であることが少なくない.粘液線維肉腫には複数の分子遺伝学的な異常が指摘されており,今後,予後予測や治療に活用されることが期待される.

両下肢に広範囲の皮膚病変を呈し歩行障害をきたしたAIDS関連Kaposi肉腫の1例

著者: 西野温奈 ,   増井友里 ,   半田梓 ,   藤沼千尋 ,   鈴木貴子 ,   岩澤うつぎ ,   山内悠子 ,   佐藤敏秀 ,   片野晴隆 ,   長谷川秀樹

ページ範囲:P.462 - P.468

要約 40歳,男性.初診5か月前から出現した両下腿の暗紫色皮疹が拡大し,疼痛および膝関節の伸展障害による歩行困難も出現したため,当科を受診した.両下腿に板状硬の暗紫色局面が全周性に存在し,両大腿には紫褐色結節が多発していた.HIV抗体陽性,皮膚生検の病理組織所見より,acquired immunodeficiency syndrome(AIDS)関連Kaposi肉腫と診断.本症例はいわゆる「いきなりAIDS」であり,CD4値も低かったが,抗レトロウイルス療法(antiretroviral therapy:ART)を施行し,持続的他動運動も併用することで,症状を改善できた.Kaposi肉腫で歩行障害をきたす症例は稀であり,原因としてリンパ浮腫や腫瘍の皮膚および皮下,または神経への浸潤が推測された.歩行障害を伴う症例に対しては,ARTに加え持続的他動運動をはじめとする理学療法の併用も有用であると考えた.

水痘・帯状疱疹ウイルス抗原キット(デルマクイック®VZV)を用いて診断した複発性帯状疱疹の1例

著者: 西山瑞穂

ページ範囲:P.471 - P.474

要約 65歳,男性.未治療の糖尿病があり,化膿性左膝関節炎から波及した敗血症性肺塞栓にて入院中,左前額部,左鼠径部に紅斑・水疱が出現した.水痘・帯状疱疹ウイルス抗原キット(デルマクイック®VZV)を使用し,両領域の水疱から水痘・帯状疱疹ウイルス抗原を検出し,複発性帯状疱疹と診断した.糖尿病,敗血症性肺塞栓の治療は順調であり,複発性帯状疱疹はアメナメビルの投与で重篤化することなく軽快した.複発性帯状疱疹は稀だが免疫異常や悪性疾患を含む基礎疾患を持つ例が多い.生命予後に関わる基礎疾患の検索のためにも複発性帯状疱疹には早期の診断治療が望ましい.鑑別が困難な症例には,短時間で確実に複数の領域それぞれから水痘・帯状疱疹ウイルスを検出できる水痘・帯状疱疹ウイルス抗原キット(デルマクイック®VZV)は診断に有用であると考えた.

マイオピニオン

小水常流如穿石

著者: 藤本徳毅

ページ範囲:P.394 - P.395

 今後の抱負,というテーマで原稿依頼をいただきましたので,思うところをつらつらと書いてみたいと思います.
1. 皮膚科の大きな可能性
 どうして皮膚科を選んだのですか,と医学部の学生さんに尋ねられることがあります.学生時代には膠原病がなぜか気になる存在でした.皮膚科のカラーアトラスに膠原病疾患の写真が多く掲載されていたため,皮膚科に入ったら膠原病を診れるのか,なんて何の根拠もなく思っていました.また,皮膚科の入局説明会で,研究って面白いですか,と先輩に尋ねたところ,研究は大変だけど知的好奇心をくすぐられるよ,と言われたのが印象に残っていました.そのような理由で皮膚科を選んだ気がしますが,皮膚科に入局してみると,皮膚生検で診断はするけど膠原病の治療は内科に任せ,縫縮と植皮以外の手術は外科に依頼している,という状況でした.診断だけでなく治療も皮膚科でもっとしたらいいのに,と思っていましたが,他施設や他科に研修に行くほどの熱意もなく,研修医の2年間はあっという間に過ぎ去ってしまいました.

連載 Clinical Exercise・177

Q考えられる疾患は何か?

著者: 津嶋友央

ページ範囲:P.391 - P.392

症例
患 者:3歳,男児
主 訴:全身に多発する瘙痒性皮疹
既往歴・家族歴:特記すべき事項なし.
現病歴:初診の1か月前に左大腿部に紅色丘疹が出現した.その後,丘疹は増加し,1週間で全身に拡大した.近医を受診し,セフェム系抗菌薬やステロイド外用薬が処方され,一時的に改善したが,その後,皮疹が悪化したため当科を紹介され受診した.
現 症:発熱はなく全身状態は良好であった.顔面,体幹,四肢に痂皮を付着した紅斑,紅色丘疹が播種状に多発していた(図1).

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目次

ページ範囲:P.387 - P.387

欧文目次

ページ範囲:P.389 - P.389

文献紹介

ページ範囲:P.431 - P.431

次号予告

ページ範囲:P.475 - P.475

あとがき

著者: 石河晃

ページ範囲:P.478 - P.478

 2022年4月10日,ロッテの佐々木朗希投手がプロ野球史上16人目,23年ぶりとなる完全試合の快挙を成し遂げました.しかも13者連続奪三振,1試合19奪三振の日本記録つきでした.のべ27人の打者のうち8人しかフェアゾーンに打球を飛ばせなかったわけで,野手の守備機会も少なく,まさしく投手一人で成し遂げた偉業と言えると思います.さらに驚くべきはその1週間後,次の登板においても8回まで一人のランナーも出さず,もう少しで2試合連続の完全試合となる完璧なピッチングをしたことです.完全試合を2度達成した選手は世界でも一人もおらず,研究者でいえば2年連続でノーベル賞を受賞するようなものです.この試合は味方も得点できず,0対0のまま9回を迎えたのですが,井口監督は投手の交代を告げました.試合に勝たなければ完全試合と呼ばれることはなく,結局延長10回で相手チームの本塁打で敗北しましたので,結果的には続投していても完全試合達成は難しかったかもしれません.この選手交代に関して,野球解説者や引退した有名選手のほとんどは監督の判断を賞賛しています.選手の疲労,肩の消耗を考えれば仕方がないということです.佐々木投手本人も納得の上での降板,という報道をみて,ファンも納得したかもしれません.しかし,もし,自分が投手だったら,世界で誰も成し遂げたことがない大記録を前にマウンドから去ることができたでしょうか.もし自分が監督だったら,投手に降板を指示する自信は全くありません.私個人的には試合の勝敗を重視するとしてもその試合は佐々木選手に託して良いと思いましたし,野球生命を重視するなら人生の価値観は本人が決めるべきだと思いました.野球素人には,とても理解の難しい選択でした.皆さんが監督だったらどうしていますか?

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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