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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科76巻6号

2022年05月発行

症例報告

Baker囊胞破裂と続発する深部静脈血栓症とをきたした1例

著者: 新川紗由香1 新川宏樹1 大塚友貴2 舩越建1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 2慶應義塾大学医学部

ページ範囲:P.450 - P.454

文献概要

要約 74歳,男性.初診1週間前頃に誘因なく生じた右下腿の疼痛と,その後に続発した同部の発赤・腫脹から蜂窩織炎を疑い当科に入院した.入院時施行の下肢静脈超音波検査で血栓はみられなかった.入院後の下肢挙上安静および抗菌薬加療にて,炎症所見は改善したが,D-dimer上昇および右下腿の把握痛増強あり,造影CTを実施しBaker囊胞破裂と診断した.さらに遠位の膝窩静脈に血栓像がみられた.Baker囊胞は通常無症状であるが,腫大や破裂により脛骨神経・膝窩動静脈を圧排しうる.また,破裂により,周囲組織は炎症や出血をきたし下肢の発赤・腫脹・疼痛の原因となる.続発した深部静脈血栓症から肺血栓塞栓症に至った症例も報告されており,下肢の発赤・腫脹・疼痛を診た際には,稀ではあるが本疾患を鑑別に置く必要がある.膝窩の膨隆や脛骨神経圧迫による感覚障害の確認と超音波検査により早期発見ができる可能性が高い.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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