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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科76巻7号

2022年06月発行

雑誌目次

症例報告

アムロジピンの関与が疑われたニボルマブ投与後の口腔扁平苔癬型薬疹の1例

著者: 野澤優 ,   馬場裕子 ,   西知彦 ,   河原由恵

ページ範囲:P.491 - P.496

要約 77歳,男性.胃癌・食道癌の術後補助化学療法としてニボルマブの投与を開始し,半年後より口腔粘膜にびらん・潰瘍を生じ摂食障害を来した.粘膜生検で扁平苔癬型反応を認め,経過からニボルマブによる扁平苔癬型薬疹と診断した.ステロイド内服および外用を開始し,症状は一時改善したが,ステロイド減量に伴い再燃した.粘膜疹出現の約2年前に開始した併用薬のアムロジピンの関与を疑い内服を中止したところ,ステロイドを増量せずに症状コントロール可能となった.口腔粘膜炎としてはニボルマブの休薬を要するCTCAE grade 3以上の有害事象に相当したが,ステロイドの内服と外用の併用と,併用薬の中止によりニボルマブ投与継続が可能であった.ニボルマブ投与後の扁平苔癬型薬疹の診療時には,ニボルマブ単独による影響だけでなく,併用薬の関与も考慮する必要がある.

直接作用型抗ウイルス薬でウイルス陰性化が得られるとともにC型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血症性血管炎も軽快した1例

著者: 小松成綱 ,   梅影香央里 ,   野崎尋意 ,   長谷部拓夢 ,   橋本喜夫

ページ範囲:P.497 - P.502

要約 71歳,女性.1年ほど前からRaynaud症状を自覚していた.10日前から手指足趾の色調変化と疼痛が出現し,近医を受診し当科へ紹介された.複数の手指足趾に紫紅色斑がみられ,両下腿に網状皮斑を伴っていた.網状皮斑部の生検で皮下小動脈の壊死性血管炎を認め,血液検査でクリオグロブリンを検出した.C型肝炎ウイルスキャリアであることが判明し,直接作用型抗ウイルス薬であるレジパスビル・ソホスブビル配合剤の投与を行い,ウイルスの陰性化を得た.その後クリオグロブリンも陰転化し,さらに2年間経過観察したが,クリオグロブリンは再検出されず,血管炎も再燃しなかった.C型肝炎ウイルスの関連が疑われるクリオグロブリン血症性血管炎では,積極的な抗ウイルス療法の導入が血管炎の改善に寄与すると考える.

Vacuumed-assisted shoelace closure療法が創閉鎖に有用であった壊死性筋膜炎の1例

著者: 新川紗由香 ,   小林研太 ,   西本周平

ページ範囲:P.503 - P.507

要約 48歳,男性.初診3週間前に左膝部に数mm大の発赤と腫脹が生じた.発赤・腫脹は徐々に拡大し,熱感を伴い,潰瘍化した.当院に救急搬送後,壊死性筋膜炎の診断で外科的デブリードマンおよび抗菌薬加療を行った.感染制御後,膝関節をまたぐ長径25cm程の幅広な残存潰瘍に対して,通常の局所陰圧閉鎖療法に加え,スキンステイプルとシリコン製血管テープを用いたシューレース法を併用した.結果として,植皮を要さずに幅の狭い線状瘢痕として治癒した.局所陰圧閉鎖療法単独ではフィラーにより創の水平方向の縮小が物理的に障害されるが,シューレース法を併用するvacuumed-assisted shoelace closure療法では垂直・水平方向ともに良好な創閉鎖促進を期待できる.感染制御目的に広範囲デブリードマンを要す壊死性筋膜炎においても,本療法の併用により治療期間の短縮,およびより小さい創閉鎖を実現できる可能性がある.

左示指に生じた表在性皮膚脂肪腫性母斑の1例

著者: 曽根明衣子 ,   福屋泰子 ,   鈴木瑞穂 ,   石黒直子

ページ範囲:P.509 - P.513

要約 54歳,男性.6年前より左第2指に自覚症状のない結節が出現し,緩徐に増大したため当科を受診した.初診時,左第2指の後爪郭部になだらかに隆起した10×5mmの常色結節があり,その中枢側に連続して10×15mmの有茎性で表面平滑な軟らかい常色結節がみられた.病理組織所見では有茎性結節部の真皮上層から後爪郭部の結節の皮下脂肪織に至るまで連続性に成熟した脂肪細胞の増殖を認めた.病変内には少数の汗腺組織や小血管の増生を見る部分もあった.以上より表在性皮膚脂肪腫性母斑と診断した.表在性皮膚脂肪腫性母斑のほとんどが腰臀部に生じる多発例で,単発で手指に生じた報告はこれまでにないことから,貴重な症例と考えた.有茎性の軟らかい常色結節を見た場合,その鑑別として表在性皮膚脂肪腫性母斑を挙げ,病変の皮下脂肪織への連続性まで考慮して,画像検索や治療を検討すべきと考えた.

臍中心に対称性に皮膚線条様配列を呈したpapular elastorrhexisの1例

著者: 髙宮城冴子 ,   宮川明大 ,   竹内紗規子 ,   崎山とも ,   稲積豊子 ,   多島新吾

ページ範囲:P.515 - P.519

要約 44歳,女性.当科初診20年前より,左腹部に丘疹が生じ,緩徐に拡大した.初診時,臍中心に対称性に5mm大までの軽度隆起する淡褐色丘疹が皮膚線条様に配列し多発していた.病理組織学的に,真皮浅層に膠原線維の増生と弾性線維の減少,電子顕微鏡においても弾性線維の減少および断裂像を認めたことから,後天性エラスチン異常症であるpapular elastorrhexis(PE)と診断した.PEの既報告例は33例と非常に少なく,また皮膚線条様配列を呈した例は海外報告例も含めて自験例が初の報告となる.自覚症状の乏しい多発する丘疹.結節がみられた際には,皮膚生検に加え,後天性エラスチン異常症を念頭に,弾性線維の染色,電子顕微鏡による精査を行うことが望ましい.

足底,頭部と稀な部位に生じた皮膚線維腫の2例

著者: 今本聡美 ,   福屋泰子 ,   曽根明衣子 ,   吉田傑 ,   石黒直子

ページ範囲:P.521 - P.526

要約 症例1:42歳,男性.既往に全身性エリテマトーデスあり.1年前に左足底に結節を自覚した.徐々に増大したため受診した.初診時,左足底に10mm大の紅褐色結節を1つ認め,全摘した.病理組織所見では真皮に比較的境界明瞭な腫瘍塊があり,線維芽細胞様細胞が束状に増殖していた.皮膚線維腫と診断した.症例2:83歳,男性.3週間前に右側頭部の結節に気付いた.右側頭部に7×5mm大で褐色調に隆起する小結節があり,全摘した.病理組織所見では真皮に好酸性の胞体を有する紡錘形もしくは多角形細胞からなる腫瘍塊を認めた.免疫染色で腫瘍細胞はfactor XIIIa陽性,多角形の細胞を中心に,CD68陽性であり,皮膚線維腫と診断した.当科で過去10年間に経験した皮膚線維腫113例について検討したが,頭部と足底の皮膚線維腫はそれぞれ1例のみで非常に稀であった.本症の発症部位として頭部と足底も認識すべきと考えた.

毛細血管拡張性肉芽腫様外観を呈した腎細胞癌の皮膚転移の1例

著者: 澤田佳織 ,   福屋泰子 ,   鈴木瑞穂 ,   石黒直子

ページ範囲:P.527 - P.531

要約 80歳,男性.71歳時に右腎癌に対し根治的右腎摘出術を施行し,78歳時に肺転移を疑われ経過観察されていた.初診2か月前より右頸部に紅色小結節を自覚した.初診時,右頸部に8×5mmの紅色小結節があり,その上に径4mmのドーム状の紅色丘疹を認め,毛細血管拡張性肉芽腫を疑った.初診1か月後の入院時には,右頸部の結節の拡大と,左鼻背部,左鼻翼部に紅色丘疹の新生を認めた.3か所ともに局所麻酔下に全摘出術を施行した.病理組織像は,真皮内に淡明な細胞質を持つ腫瘍細胞が胞巣状に増生し,間質に豊富な血管網を伴っていた.免疫組織染色では,腫瘍細胞は腎細胞癌に特異性の高いCD10,PAX8,CAⅨで陽性であり,淡明細胞型腎細胞癌の皮膚転移と診断した.3か月後に多発肺転移の増大があり,7か月後に永眠した.腎細胞癌の皮膚転移は臨床像,ダーモスコピー所見において毛細血管拡張性肉芽腫との鑑別が困難な場合があり,注意が必要である.

肛囲に発生した顆粒細胞腫の1例

著者: 益田知可子 ,   吉田裕梨 ,   池田彩 ,   原田潤 ,   小澤健太郎

ページ範囲:P.533 - P.537

要約 61歳,女性.約2年前から自覚する肛囲の腫瘤を主訴に受診した.初診時,肛門左会陰側に径25×15mmの表面が浸軟した淡紅色の腫瘤を認め,腫瘤の周囲の皮膚には紅斑を伴っていた.皮膚生検を行い,顆粒細胞腫と診断し,腫瘤を1mm程度のマージンで全切除した.術後感染のリスクを考慮して開放創として瘢痕治癒させ,現在まで再発なく経過している.顆粒細胞腫の肛囲発生例は稀で海外文献では40例の報告があるが,本邦での報告例は自験例を含めて3例のみであった.いずれも切除後,肛門機能は温存できており,悪性化や再発を認めていない.自験例では特異な臨床所見を呈したが,病理組織学的所見から,肛囲の湿潤や圧迫などの特殊な局所環境要因が関与したと推察した.顆粒細胞腫は良性腫瘍であるが,再発例も報告されていることから術後も定期的に経過観察を行う必要がある.

Pencil-core granulomaの2例

著者: 齋藤京

ページ範囲:P.539 - P.544

要約 症例1:73歳,女性.40歳のとき左拇趾先端の5mmの結節を自覚し,20年後急速増大した.生検時,ヘドロ状の黒色物質の排出があり,病理組織学的に黒色顆粒状の異物を伴う肉芽腫を認め本症と診断した.症例2:50歳,女性.右示指爪上皮部に小学生時に鉛筆を刺した.6mm大で変化がなかったが,1年前から増大した.ダーモスコピー所見では境界不明瞭に中枢側は白色,遠位側は濃淡のある青色領域を示し,病理組織では黒色異物を伴う肉芽腫のほか,顆粒状および塊状の石灰沈着を伴っていた.本症は鉛筆の芯の黒鉛に対する異物肉芽腫であり,潜伏期を経て急速に増大する特徴がある.症例1は生検後13年間治療なしでも増大はなく,本症の治療に可及的な内容排出のみで観察するという選択肢があることが示唆された.また,本症に石灰沈着を伴うことが稀にある.今回の症例2を加えた過去の報告8例は全員が女性の手に発症しており,手指のような外的な刺激が加わる部位に生じやすいと推察される.

多発肺結節と皮膚病変を呈したメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の1例

著者: 中村冴 ,   山本紀美子 ,   森眞一郎

ページ範囲:P.545 - P.550

要約 70歳台,女性.関節リウマチに対して15年前よりメトトレキサート(MTX),サラゾスルファピリジンを投与されていた.初診2か月前,右下腿に圧痛を伴う1cm大の皮下結節を自覚した.初診1か月前,CT検査で両肺に多発結節を指摘された.同時期より右下腿の皮下結節が拡大し,当科を受診した.皮膚生検を施行し,脂肪織炎として治療開始した.約1か月後,胸部CTで肺結節の増数を認め,両大腿には数個の皮下結節が出現した.再度,左大腿の皮下結節より皮膚生検を行った.病理組織学的所見から,MTX関連リンパ増殖性疾患と診断した.初回生検の病理組織について再検討したところ,同様の診断となった.MTX中止3か月後には,画像所見上の,多発肺結節と右下腿,両大腿の皮下結節はいずれも消失した.MTX関連リンパ増殖性疾患の皮膚症状は多彩であり,特異な所見はないため,MTX投与中の患者を診る際は本疾患を念頭に置かなければならない.

匍行性迂回状紅斑様の皮疹を呈した菌状息肉症の1例

著者: 坂口裕美 ,   金子高英 ,   木村有太子 ,   髙森建二 ,   須賀康

ページ範囲:P.551 - P.556

要約 49歳,男性.40歳頃から体幹を中心にかゆみを伴った紅斑が多発したため,近医でアトピー性皮膚炎と診断され加療されていたが難治であった.半年前から皮疹が急に拡大したため,当科を紹介され受診した.初診時,体幹四肢に匍行性迂回状紅斑に類似する,浸潤を触れる木目状,蛇行状の紅斑が多数みられた.真菌鏡検は陰性.左前胸部の環状紅斑より皮膚生検を施行したところ,異型リンパ球の表皮内浸潤,Pautrier微小膿瘍がみられ,浸潤しているリンパ球はCD4>CD8陽性であった.画像診断でリンパ節を含め,他臓器には浸潤はみられなかった.臨床および病理組織像から菌状息肉症(T2NXM0B0),病期ⅡAと診断.ステロイド外用,エトレチナート内服にナローバンドUVB療法を併用したところ治療開始後6か月で皮疹は寛解した.匍行性迂回状紅斑は内臓悪性腫瘍のデルマドロームとして知られているが,稀ではあるが,自験例のごとく菌状息肉症の皮疹である可能性にも留意して,皮膚生検を実施する必要がある.

乳房に生じた壊疽性膿皮症の1例

著者: 酒井あゆみ ,   堀田亜紗 ,   佐藤麻起 ,   大須賀裕子 ,   田中理子 ,   廣門未知子

ページ範囲:P.557 - P.561

要約 52歳,女性.特記すべき既往歴や乳房への外傷・手術歴なし.初診の3週間前より誘因なく左乳房が腫脹し,抗菌薬を投与されていたが急速に潰瘍化したため当科を受診した.初診時,左乳房全体に発赤,腫脹を認め,乳房の下半分は潰瘍化していた.各種培養は陰性で,皮膚生検では真皮に血管炎を伴わないびまん性の好中球浸潤を認めた.ステロイド内服・外用により潰瘍は上皮化した.上皮化後,タクロリムス軟膏外用を併用しながら再燃なくステロイド漸減中である.壊疽性膿皮症が乳房に生じることは稀であるが,文献では乳房の壊疽性膿皮症は乳房の術後に生じることが多く,また乳頭を避けて潰瘍を形成するという特徴的な臨床像を示すと報告されている.これらは乳房の潰瘍病変について他疾患と鑑別する際に重要なポイントとなると考えた.

マイオピニオン

Derma Dream Believer

著者: 金澤伸雄

ページ範囲:P.488 - P.489

 「デルマかあ」
 京大医学部登山会の先輩に大きな声で言われたのは,いつだったか.今から思うと,多分にがっかりや馬鹿にする気持ちがあったようにも思うが,特に迷いもなく予定どおり皮膚科入局を決めた僕には,特に響かなかった.

連載 Clinical Exercise・178

Q考えられる疾患は何か?

著者: 河原由恵

ページ範囲:P.485 - P.486

症例
患 者:59歳,女性
主 訴:両頰部の結節
家族歴・既往歴:特記すべきことなし.
現病歴:当科初診の約1年前に右頰部に黄褐色結節が出現した.前医の生検にて診断がつき当科へ紹介となった.その後同様の病変が緩徐に増大,増数し,整容的に支障をきたすようになった.
現 症:当科初診から8年後の所見では,左右頰に径1cm大から最大5×3cmまでの扁平な黄褐色結節が多発していた.結節は下床への浸潤も強く,一部では易出血性でびらんを呈していた(図1).

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目次

ページ範囲:P.481 - P.481

欧文目次

ページ範囲:P.483 - P.483

文献紹介

ページ範囲:P.519 - P.519

書評

ページ範囲:P.562 - P.562

次号予告

ページ範囲:P.563 - P.563

あとがき

著者: 阿部理一郎

ページ範囲:P.566 - P.566

 先日久しぶりに海外出張をしてきました.コロナが落ち着いていないのに海外に行くなどもってのほか,という意見もありましたが,海外からの観光客受け入れなど日本も徐々に交流再開に舵をきる状況になりつつありましたし,何よりも実務的にどうしても現地参加しなければいけないことがあったので,行ってきました.
 アメリカだったのですが,最初は本当に戸惑いました.全員マスクを着用していた飛行機から出た瞬間,ターミナルを行き交う人の半分はマスクをしていませんでした.マスク着用義務はなくなったと聞いてはいましたが,実際マスクをしてない人の中にいるとかなり違和感(疎外感?)を感じました.さらにターミナルを出るとますますマスク着用率は下がり,街中では1割ほどしかしていませんでした.コロナを受け入れるというかwithコロナというか,日本と全く違う対応で物事が進んでいました.コロナに関して言うと,日本入国の際に求められる事前の検査がなかなか面倒で,現地で検査をするということは心理的にも負担でした.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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