icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科76巻8号

2022年07月発行

症例報告

特発性後天性全身性無汗症と尋常性白斑を同時期に発症した1例

著者: 髙木杏子1 齊藤華奈実1 梅木真由子1 後藤瑞生1 佐藤俊宏2 西田陽登3 駄阿勉3 波多野豊1

所属機関: 1大分大学医学部皮膚科学講座 2いいそらヒフ科クリニック 3大分大学医学部診断病理学講座

ページ範囲:P.651 - P.656

文献概要

要約 16歳,男性.既往歴にアトピー性皮膚炎,3親等以内に尋常性白斑が2人いる.X−1年12月頃より運動時の全身の発汗低下と手掌の代償性発汗過剰を自覚し,同時期に両手背から両前腕に白斑が出現したため前医より当科に紹介初診.温熱ミノール法では減汗〜無汗部と発汗部がモザイク状に分布し,減汗〜無汗部と白斑部が重複している箇所を認めた.無汗部では薬剤性発汗誘発試験で発汗誘発できず,同部の病理組織では汗腺・導管周囲のリンパ球浸潤を認めた.血液検査上,甲状腺ホルモン正常,抗アセチルコリン受容体抗体を含む各種自己抗体は陰性であった.尋常性白斑を合併した特発性後天性全身性無汗症(acquired idiopathic generalized anhidrosis:AIGA)と診断した.汗腺におけるM3受容体の低下は認めなかった.AIGAと尋常性白斑に共通の自己免疫的機序を予想したが,本症例では少なくともM3受容体は共通抗原ではないと考えられた.AIGA,尋常性白斑ともにその詳しい自己免疫的機序は明らかになっておらず,新たな原因自己抗体を解明するためにも今後の症例の蓄積が望まれる.

参考文献

1) 加納宏行:日皮会誌 126:1699, 2016
2) Asahina M, et al:Intern Med 52:2733, 2013
3) 伊村紀慧,他:J Visual Dermatol 19:237, 2020
4) 朝比奈正人,他:厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)分担研究報告書22(4):278, 2010
5) 鈴木民夫,他:日皮会誌 122:1728, 2012
6) 齋藤 博,山田達也:発汗学 22:7, 2015
7) Seiter S, et al:Int J Dermatol 39:624, 2000
8) Buchli R, et al:Mol Cell Biochem 228:57, 2001
9) Sano K, et al:J Eur Acad Dermatol Venereol 31:2097, 2017
10) Abdallah M, et al:Pigment Cell Melanoma Res 31:330, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら