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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科76巻9号

2022年08月発行

文献概要

症例報告

カイロの長期貼付による温熱性紅斑から有棘細胞癌を生じた1例

著者: 伊藤まどか1 福屋泰子1 鈴木瑞穂1 石黒直子1

所属機関: 1東京女子医科大学皮膚科学教室

ページ範囲:P.721 - P.725

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要約 80歳,男性.S状結腸過長症で腸切除を施行した後,慢性便秘となり,46年間連日腹部にカイロを貼付していた.当初カイロ貼付部に紅斑が出現していたが,次第に持続性の紅褐色斑となり,1年前より同部位に結節が出現したため当科を受診した.初診時,腹部の両側に手掌大で一部に網状構造を呈する萎縮性の黒褐色斑があり周囲に淡紅褐色斑を認めた.右腹部の黒褐色斑内には紅色局面があり,表面顆粒状の紅色結節を伴っていた.病理組織所見では,結節部で異型性の強い表皮細胞の腫瘍性増殖がみられ,結節部周囲の紅色局面はactinic keratosis様の所見を呈した.結節部は有棘細胞癌,紅色局面はthermal keratosisと診断した.紅色局面を全摘し,術後15か月の現在再発なし.長期間にわたる過剰な暖房器具や温熱製品の使用は,温熱性紅斑からthermal keratosisを生じ有棘細胞癌に進展する可能性があるため注意が必要である.

参考文献

1) 鈴木紀子,他:皮膚臨床 41:2085, 1999
2) 木曽雅子,他:皮膚臨床 45:849, 2003
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4) 小林祐子,他:皮膚病診療 36:255, 2014
5) 大久保絢香,他:皮膚臨床 58:572, 2016
6) 福田英嗣,他:皮膚臨床 59:126, 2017
7) 石上剛史,他:臨皮 57:241, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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