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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科77巻11号

2023年10月発行

文献概要

症例報告

非典型的な臨床像を呈した血管肉腫の1例

著者: 桑原彩乃1 吉田憲司1 當麻秀信1 栗田昴幸1 石井健1 四宮茂2 並川健二郎3 石河晃1

所属機関: 1東邦大学医学部皮膚科学講座(大森) 2しのみや皮膚科形成外科 3国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科

ページ範囲:P.881 - P.885

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要約 72歳,女性.初診6か月前から頭部全体の凹凸と脱毛斑を自覚.初診1か月前から前額部の紅斑と浮腫が出現し,近医皮膚科より紹介受診となった.初診時前額部に6×3 cm大の強い浮腫性紅斑があり,押すとpitting edema様に圧痕を残して陥凹した.また頭頂部に皮膚硬化を伴う紅色局面が複数みられ,一部脱毛を伴う部位もあった.前額部と脱毛斑から皮膚生検を行い,いずれも異型内皮細胞で縁取られる不規則な脈管腔が多数みられ,真皮内には紡錘形の細胞が流れるように密に増生していた.免疫染色でD2-40とFactor Ⅷが陽性であり,血管肉腫と診断した.自験例は強い圧痕性浮腫を伴う紅斑が主病変であり臨床診断は困難であった.紫斑や結節を伴わない血管肉腫も存在しうることを念頭に置き,診断や治療介入が遅れてしまわないよう注意したい.また自験例のような特異な臨床像はリンパ管分化によると考えると理解しやすいが,推論の域を出ない.今後分子遺伝学的手法によって非典型的な臨床像が説明されるようになることを期待したい.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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