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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科77巻12号

2023年11月発行

雑誌目次

症例報告

Elephantiasis nostras verrucosa様の皮膚変化を伴った重症アトピー性皮膚炎の1例

著者: 早川怜那 ,   倉田麻衣子 ,   青木孝司 ,   大山学 ,   水川良子

ページ範囲:P.945 - P.952

要約 52歳,男性.幼少期からアトピー性皮膚炎がある.初診2年前より腰部に隆起性の皮疹を自覚し,徐々に拡大したため,当科を受診した.初診時,全身に鱗屑を付す紅斑がみられ,一部は苔癬化を伴い,eczema and severity index(EASI)スコアは38.8であった.右腰部から臀部および両側下肢屈側には乳頭状結節が集簇する境界明瞭な局面を認めた.結節部を皮膚生検し,アトピー性皮膚炎に伴う象皮症様変化と診断した.ステロイド外用により皮疹は軽快した.自験例の臨床症状はelephantiasis nostras verrucosa(ENV)に類似していた.ENVは本邦で16例が報告され,下腿に好発し,合併症として肥満,皮膚細菌感染症,心疾患,糖尿病などがみられた.生活習慣では座位生活や不衛生環境,および歩行困難・ひきこもりの報告が多くみられた.自験例は長時間の座位保持による腰臀部,下肢への慢性的な圧迫歴があった.ENV様の皮疹をみた際には生活習慣の聴取も重要である.

不整脈を合併した抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の1例

著者: 明石憲佳 ,   満間照之 ,   水田三由希 ,   小泉遼 ,   野田達宏 ,   下村麻衣子 ,   磯部里香子

ページ範囲:P.953 - P.956

要約 48歳,女性.受診1か月前より動悸,倦怠感,息切れの自覚あり.同時期より手掌手背に皮疹出現.初診時,逆Gottron徴候,爪囲紅斑,Gottron徴候を認め,前医での間質性肺炎の指摘も踏まえ抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎を鑑別に挙げた.間質性肺炎の急速進行する可能性も考え,入院加療とした.また動悸の自覚があったことより入院時よりホルター心電図を行った.動悸自覚時の心電図で上室性頻拍や心房細動の波形があり,症状の発生時期や過去の健診で異常所見がなかったことから皮膚筋炎による症状と判断し,早期よりステロイドパルスを施行し,シクロホスファミドパルスを行った.治療開始後皮疹の改善とともに動悸の自覚と,心電図異常の消失を認めた.動悸の症状も本疾患の病勢を表していると考えられ,不整脈があった場合は心筋梗塞などを否定した上で適切な治療を開始することが重要であり,また早期から強力な治療を行うことがより良好な結果を得るために必要と考えた.

片側性の顔面皮疹を呈した抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の1例

著者: 森田裕介 ,   伊藤圭

ページ範囲:P.957 - P.961

要約 41歳,女性.初診1か月前に左顔面の発疹を生じ近医を受診した.丹毒の診断で抗菌薬内服が行われたが改善がないため当科を受診した.初診時,左眼瞼や左頰部に腫脹を伴う紅斑を認め,3週間後には手指にGottron徴候と逆Gottron徴候が出現,CT検査では間質性肺炎が確認され,抗MDA5抗体が陽性であることから,抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎と診断した.診断後はステロイドパルス療法やステロイド内服,タクロリムス内服,シクロホスファミド大量静注療法を行い,間質性肺炎は軽快したが,抗MDA5抗体価高値や顔面の皮疹は長期にわたり遷延した.抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎では間質性肺炎を高率に生じ,急速進行性間質性肺疾患の合併例では致死的経過をたどることがある.皮膚症状では片側性のヘリオトロープ疹が初発症状であることが多く,こうした特徴を把握することは本疾患の早期診断や治療のために重要である.

皮膚動脈炎による足趾壊疽に対しLDLアフェレーシスが奏効した1例

著者: 伏田奈津美 ,   池田智行 ,   大石京介 ,   前田進太郎 ,   濱口儒人 ,   松下貴史 ,   西島千尋 ,   稲沖真

ページ範囲:P.963 - P.969

要約 69歳,女性.初診19か月前に足趾に紅斑,色素沈着が出現し,次第に下腿へと拡大,浮腫や疼痛も伴った.両下肢静脈瘤に対し手術加療を受けるも症状改善なく,2か月前に前医を受診した.下腿に分枝状皮斑と硬結を伴う紅斑を多数認め,経過で両第1趾にチアノーゼが出現したため紹介となった.臨床経過,病理組織学的所見に加え,皮膚外症状を欠くことから皮膚動脈炎と診断した.経過中に両第1趾壊疽に至り,ステロイド内服,抗血栓療法,末梢血管拡張療法に加え,血管形成術を行うも難治.LDLアフェレーシスを併用したところ,急速な改善がみられ約8か月で瘢痕治癒した.本症は一般的に予後良好であるが,循環障害の強い重症例では足壊疽による下肢切断例が報告されている.既存の循環改善治療が無効かつ外科的治療が困難な症例において,LDLアフェレーシスは患肢救済の点から今後の新たな治療選択肢になりうると考えられた.

ボリコナゾールが原因と考えられた中毒性表皮壊死症の1例

著者: 藤田悠花 ,   岡林綾 ,   川合未紗 ,   渡邊美樹 ,   平田央

ページ範囲:P.971 - P.976

要約 74歳,男性.併存症に多発性骨髄腫と糖尿病があり,多種の内服薬を服用していた.アスペルギルス肺炎で入院加療後,退院時にボリコナゾール(VRCZ)の内服が開始された.内服14日目に全身の発疹,結膜充血,口唇・口腔粘膜のびらん,発熱が出現し,入院加療となった.全身にtarget lesionを伴う紅斑が多発し,体表面積の50%の水疱・びらんに進展した.中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis : TEN)と診断し,内服薬をすべて中止した.プレドニゾロン1 mg/kg/日,ステロイドパルス療法2回,血漿交換療法7回,免疫グロブリン大量静注療法を併用し,軽快した.VRCZの薬剤リンパ球刺激試験はわずかに陽性で,臨床経過を含めてVRCZによるTENの可能性が高いと考えた.VRCZを内服している患者は多剤を内服していることが多く,VRCZが原因薬剤となる可能性に留意する必要がある.

難治性抗ラミニンγ1類天疱瘡の1例

著者: 片桐正博 ,   大竹里奈 ,   野老翔雲 ,   並木剛 ,   横関博雄 ,   船積雅登 ,   宮崎安洋 ,   古賀浩嗣 ,   石井文人

ページ範囲:P.977 - P.983

要約 79歳,男性.1か月前より四肢主体に緊満性水疱が出現した.血液検査で抗Dsg1抗体陽性,抗Dsg3抗体・抗BP180抗体陰性であった.病理組織で好中球を伴う表皮下水疱,蛍光抗体直接法で表皮基底膜にIgGとC3の線状沈着を認めた.表皮抽出液を用いた免疫ブロット法は陰性で,真皮抽出液を用いた免疫ブロット法でIgGが200 kDa抗原(ラミニンγ1)に反応し,抗ラミニンγ1類天疱瘡と診断した.蛍光抗体法の所見から抗Dsg1抗体の病的意義は乏しいと考えた.ステロイド内服のみでは病勢抑制できず,ステロイドハーフパルスとアザチオプリン(AZA)の併用を要したが,経過中にAZAが一因と思われる高度白血球減少が生じ,AZAを中止した.以降慎重にステロイドを減量しているが,初診1.5年後現在,皮疹の再燃はない.一般的に抗ラミニンγ1類天疱瘡の治療経過は良いとされるが,自験例のように,複数の自己抗体が検出された場合は難治の可能性があるため,補助治療を検討する必要があると考えた.

病理組織学的に稗粒腫の所見を伴ったpseudoxanthoma elasticum-like papillary dermal elastolysisの1例

著者: 森本悠里江 ,   須藤晶 ,   山村一美 ,   堀内義仁

ページ範囲:P.985 - P.990

要約 64歳,女性.頸部および腋窩の皮疹を主訴に受診した.初診時,両側の頸部および両腋窩に,半米粒大までの白色調の弾性軟の丘疹が多発集簇していた.腋窩の皮疹を皮膚生検し,pseudoxanthoma elasticum-like papillary dermal elastolysis(PXE-like PDE)と診断した.PXE-like PDEとは後天的に弾性線維の減少・消失を認める疾患で,全身症状を伴うPXEとの鑑別が重要である.また,稗粒腫様の組織所見を1か所確認した.過去の他疾患の報告と併せて,稗粒腫の形成には弾性線維の変性や減少が関与している可能性を考えた.自験例では,両者の合併が偶発的である可能性は否定できないが,真皮乳頭層の弾性線維の減少により表皮が真皮の方向へ陥凹し,その後何らかの機序で稗粒腫を形成する可能性もあると考えた.

ステロイド治療に抵抗性を示し外用PUVA療法が有効であったサルコイドーシス皮膚病変の2例

著者: 生玉梨紗 ,   土橋人士 ,   長谷川敏男 ,   池田志斈

ページ範囲:P.991 - P.997

要約 症例1:41歳,男性.皮膚病理所見と縦隔リンパ節腫大からサルコイドーシスと診断.副腎皮質ステロイド内服にて縦隔リンパ節腫大は改善したため内服は終了し,皮膚症状は残るものの経過観察となっていた.ステロイド外用で皮疹は改善せず,ドキシサイクリン塩酸塩水和物内服と外用PUVA療法で皮疹は改善した.症例2:86歳,女性.皮膚病理所見から苔癬様型サルコイドーシスと診断.ステロイド外用で改善なく,外用PUVA療法で皮疹は改善した.サルコイドーシスの皮膚症状に対する治療としてはステロイド外用が第一選択であるが治療効果に乏しい症例が多い.UVAはTh1系免疫反応抑制作用や肉芽腫形成抑制作用を持ち,ステロイド外用に抵抗性を示すサルコイドーシスの皮膚病変に対し有効と考える.

左乳房下の乳腺堤線上に生じ副乳由来と考えた線維腺腫の1例

著者: 小川夕貴 ,   伏間江貴之 ,   小田俊輔 ,   村田有也 ,   吉田哲也

ページ範囲:P.998 - P.1002

要約 27歳,女性.初診2か月前より左乳房下に1.5 cm大の有痛性皮下結節を自覚し当院を受診.超音波検査で皮下脂肪織内に境界明瞭な,内部濃度均一の低エコー像を認めた.血管平滑筋腫や神経原性腫瘍を鑑別に手術にて摘出した.肉眼的には線維性被膜に被包された表面平滑な腫瘍であり,病理組織学的に線維性間質を背景に腺管上皮の増生を認めた.腺管上皮は免疫染色でER,PgR,FOXA1,GATA-3のすべてが陽性であった.腫瘍が乳腺堤線上に位置していたことから,自験例を副乳由来の線維腺腫と診断した.線維腺腫は乳腺外科領域で最多の乳腺良性腫瘍であり,腋窩や軀幹に生じた副乳での発生も報告されている.皮膚科診療においては稀な疾患であるが,乳腺堤線上の皮下腫瘍をみた際の鑑別疾患として重要であると考えられた.

組織学的に境界明瞭な結節性病変を呈した皮膚腺様囊胞癌の1例

著者: 橋本可奈子 ,   川島裕平 ,   田村(永津)佳奈 ,   平井郁子 ,   中村善雄 ,   松井はるか ,   河原由恵 ,   徳永雅彦 ,   比留間徹 ,   舩越建

ページ範囲:P.1003 - P.1008

要約 68歳,男性.10年前より左前胸部のしこりが徐々に増大したため前医を受診した.径5 cmの皮下腫瘤に対し,前医で実施した皮膚生検にて腺様囊胞癌の組織像を認め,当院へ紹介となった.全切除時の病理組織像では真皮浅層から皮下脂肪織にかけて結節性病変を認め,N/C比の高い好塩基性細胞が腫瘍胞巣を形成し,篩状構造,充実型構造,管状構造の3種類の組織型がみられた.腫瘍細胞は2相性を呈し,CD117陽性の管腔上皮細胞とα-SMA陽性の筋上皮細胞で構成されていた.PET-CTで他臓器病変を認めず,皮膚原発腺様囊胞癌と診断した.約1年半が経過したが,再発はみられない.一般的に,本疾患は真皮内で大小多数の腫瘍胞巣を形成し浸潤性に拡がるが,自験例では比較的境界明瞭な結節性病変を呈し,cylindromaやspiradenomaなどとの鑑別が必要であった.腺様囊胞癌は,その希少性ゆえに全体構築と予後との相関についての定まった見解はない.今後さらなる症例の蓄積が望まれる.

急速に進行し肺転移にて診断に至った原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫の1例

著者: 野邊美月 ,   下田由莉江 ,   佐藤洋平 ,   麻生純平 ,   下山田博明 ,   藤原正親 ,   大山学

ページ範囲:P.1009 - P.1015

要約 86歳,女性.3年前から自覚する顔面の皮疹を主訴に受診した.初診時,頭部から顔面に紅斑と結節を認めた.病理組織学的に真皮から皮下脂肪織にかけて好酸球やリンパ球,形質細胞を主体とした炎症細胞浸潤を認めた.臨床像と併せangiolymphoid hyperplasia with eosinophiliaと考え,ステロイド局注療法や放射線療法を施行するも難治であり,2回再生検したが初回と同様の所見であった.その後呼吸困難が出現しCTで両側多発肺結節を指摘され経気管支生検所見からCD30陽性リンパ増殖性疾患が疑われた.直近の皮膚生検標本を再検討しCD30陽性細胞を認め原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫と最終診断した.全身状態から化学療法は困難であり初診15か月後に永眠した.多発性の結節,腫瘤を呈し,リンパ増殖性疾患を疑う病理組織学的所見が継続的にみられる治療抵抗性の症例では,本疾患を鑑別の1つと考えCD30などの浸潤細胞での発現を検討しつつ早期から全身検索するべきであると考えた.

骨破壊を伴う結核性膿瘍の1例

著者: 太田円莉 ,   尾本大輔 ,   澤田雄宇 ,   岡田悦子

ページ範囲:P.1017 - P.1022

要約 84歳,女性.1か月前から急速に増大する皮下腫瘤が右前腕に多発した.2回の皮膚生検と細菌・抗酸菌培養で結核の診断に至らず,画像検査,血清学的検査結果から,サルコイドーシスと診断した.ミノサイクリンの内服で小型腫瘤は消失したが,手関節部腫瘤の増大と関節浸潤がありステロイド内服で治療した.約10か月後に骨破壊を伴う手関節部膿瘍からMycobacterium tuberculosisを検出した.同時に肺多発結節影から粟粒結核と診断した.抗結核薬による全身治療と,結核性手関節炎に対する外科的切除を行い治癒した.結核と確定診断するまでに時間を要し,ステロイド治療により病巣が拡大した.骨関節結核は組織学的に非特異的な肉芽腫を呈し,初期に結核菌が検出される頻度が低いことから,診断が遅れ骨破壊をきたすことがある.難治性の肉芽腫や関節炎をみた際には,常に結核菌感染を鑑別に挙げる必要がある.

マイオピニオン

勤務医が全国学会を開催してみた

著者: 藤田靖幸

ページ範囲:P.942 - P.943

1.はじめに
 第39回日本臨床皮膚科医会(日臨皮)総会・臨床学術大会を2023年6月に札幌で開催しました.新型コロナウイルス感染症が5類に移行した直後の開催でしたが,目に見える感染爆発は起こらず,天候にも恵まれて,参加登録者数1,628人中1,041人もの方に初夏の北海道を楽しんでいただけました.
 実は私は,学術集会の主催や運営に携わった経験がありません.そして現在勤務医として従事しており,手足として動いてくれる秘書や事務員もいません.しかも日本臨床皮膚科医会の理事・ブロック理事の中で私は最年少であり,右も左も分からない新参者です.そのような中でこの規模の学術集会を主催するのは,非常に刺激的な挑戦でした.

連載 Clinical Exercise・195

Q考えられる疾患は何か?

著者: 根岸麻有子

ページ範囲:P.939 - P.940

■症 例■
患 者:70歳,女性
主 訴:右大腿の褐色結節
既往歴・家族歴:特記すべきことなし.
現病歴:5年ほど前より,右大腿に自覚症状を伴わない褐色結節が生じ,徐々に増大したため当科を受診した.
現 症:右大腿内側に,18×12 mm大のドーム状に隆起する弾性硬の褐色結節を認め,その周囲28×20 mm大の範囲の皮下に腫瘤を触知した.圧痛はなく,下床との可動性は良好であった(図1).
ダーモスコピー所見:Central white patchないしはnetworkと,腫瘍辺縁にdelicate pigment networkを認めた.それに加え,中央部には白もやがかった赤〜青紫色の無構造領域がみられた(図2).
超音波所見:境界明瞭な囊腫様構造を認めた.内部は比較的均一な低エコー領域であり,後方エコーは増強していた.カラードプラ法で,内部に明らかな血流は認めなかった(図3).

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目次

ページ範囲:P.935 - P.935

欧文目次

ページ範囲:P.937 - P.937

文献紹介

ページ範囲:P.1002 - P.1002

書評

ページ範囲:P.1016 - P.1016

次号予告

ページ範囲:P.1023 - P.1023

あとがき

著者: 玉木毅

ページ範囲:P.1026 - P.1026

 マイナ保険証が迷走している.政府が健康保険証をマイナンバーカードと一体化させ,来年秋に元々の保険証を廃止することを打ち出した.これに対し,任意のはずのマイナンバーカード取得を事実上強制するものとして大きな反発が出ている.さらに保険証の情報との紐づけ時の誤入力などにより,赤の他人の情報が紐づいてしまい,他人の医療費や投薬情報などが閲覧できてしまうなどのトラブルが続出した.そもそも紐づけ作業が追い付いていないようで,折角マイナ保険証にしたにもかかわらず,医療機関のリーダーに反応せず,やむを得ず元の保険証を使う事態も頻発しているようである.医療機関側もオンライン資格確認などでシステムに多額の出費を強いられるため,小規模な医院などで閉院が相次ぎ,保険医療機関の廃業数が過去最多になっているという.このように酷いことだらけの中で唯一マイナ保険証の利点として考えられるのが,顔認証によるなりすまし防止(実際一部の無保険外国人の間で,他人の保険証の使い回しが横行しているらしい)であるが,これも顔写真をプリントしてかぶれば,難なく認証をクリアしてしまうことが実証されてしまった.そもそもマイナンバーカードの取り扱いはくれぐれも慎重にと,わざわざナンバー部分を隠すようなケースが一緒に配布されており,このようなものを通院の度に持ち歩かせるのは,あまりにリスキーではないだろうか? 消えた年金問題然り,新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)然り,役所が慌てて何かを進めようとすると碌なことがない.しかもマイナ保険証については,今までどおり元の保険証を使うというオプションが残されているのだから,それほど慌てて進めなければならない理由もない.医療関係の情報は非常にセンシティブで,漏洩すればその影響は甚大であり,世界中のハッカーが狙っている.大阪急性期・総合医療センターのランサムウェア攻撃も記憶に新しい.まずきちんと時間をかけて,システム欠陥の穴を一つ一つ埋めていくことが必要ではないだろうか?

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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