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あとがき
著者: 朝比奈昭彦
所属機関:
ページ範囲:P.1118 - P.1118
文献購入ページに移動 円安が止まりません.一時的かもしれませんが,このあとがきを執筆している現在,1ドル150円を超えています.コロナ禍がほぼ収束し,かつてのように街中は外国人で溢れかえっています.彼らは日本の物価の安さに驚愕し,財布のひもを緩めています.そのインバウンドのあおりで,国内の学会出張の際にホテルの宿泊予約が急に取りにくくなり,宿泊代も高騰しています.ましてや,欧米の学会へ現地参加しようものなら現地の物価高をもろに食らうこととなり,そもそも費用の高騰を理由に学会参加をあきらめる先生方もおります.私が米国に留学していた30年ほど前は,ドルベースの物価そのものが安かったうえに今ほど円安ではなかったため,日常生活も楽に過ごせました.ところが米国ではその後,インフレが継続し,昨今の円安とも相まって,ニューヨークの外食ランチ代が4〜5千円以上という驚くべき状況になっているようです.この円安や低金利の状況が,30年にわたる日本の景気と経済の停滞,さらには国力の低下を反映するものであれば嘆かわしいことです.日本では若者が安心して子育てできる環境の整備が十分でなく,人口の縮小と超高齢化,労働力不足といった構造的な問題を抱えており,その解決が必要なのは言うまでもありません.しかしながら,その根底に流れている,何かにつけ悲観的な日本人の気質は変革すべきです.日本はご承知のように技術立国であり,また自然科学の分野でノーベル賞受賞者を何人も輩出しています.われわれ皮膚科を取り巻く状況を見ても,日本における皮膚科学はこの30年で目覚ましい成長を遂げました.欧米に頼らずとも多くの有能な研究者が育っています.われわれ日本人は,どの分野でも未来に向けたゆるぎない自信を持ち,またそうした自信を保てる環境を整えることが大切と感じています.
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