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Derm.2023
通勤風景の妙
著者: 尾山徳孝1
所属機関: 1福井大学医学部感覚運動医学講座皮膚科学
ページ範囲:P.121 - P.121
文献購入ページに移動 コンクリートジャングルの病院勤務の1日が始まる前までの時間…唯一,その日の天気を確認できる時間だったりする.昔,研修医だった頃,私の恩師がポリクリの学生さんたちに向かって,「皮疹を観察するときに自然光を遮らないように」と話されていたことを思い出す.人工的な光源の下では,皮疹の色調の微妙な違いがわかりづらくなるためだと教えていただいた.最近は効率化のためか,診療の導線の中にさえ窓のある病院が少なくなっている.外からの光はもちろん,新鮮な空気の入れ替えなど,当たり前のようにできない診察室も珍しくなくなった.そんな中,病院まで向かう車中から,眼前に広がる白山連峰の山々やその裾野を流れる九頭竜川を見ながら(あまり見てると危ない)の通勤風景はとても貴重であることに気付かされる.天候に関わりなく,一日の始まりに「外との接点」があると,患者さんとの(時として殺伐とする)病気の話に,適度な潤滑油になることも少なくない.悪天候の中を頑張って受診された患者さんをいたわってあげることもでき,外来の長い待ち時間にうんざりした気分を多少なりとも和ませてあげられる付加価値にさえ満足する.
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