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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科77巻7号

2023年06月発行

症例報告

肢端に生じたSpitz母斑の2例

著者: 湯川圭1 吉岡啓子1 保坂直樹2

所属機関: 1社会医療法人生長会府中病院皮膚科 2社会医療法人生長会府中病院病理診断科

ページ範囲:P.519 - P.524

文献概要

要約 症例1:15歳,女性.3か月前より増大している左第5指の辺縁不整な黒色斑を主訴に当科を紹介され受診した.症例2:38歳,女性.1か月前より増大している右足底の黒色斑を主訴に来院した.ダーモスコピー所見では,いずれもglobular pattern,中央部でdiffuse regular black pigmentationを呈し,症例2では明らかなparallel patternは認めなかった.病理組織学的所見は,表皮真皮境界部に核異型を有する紡錘形細胞からなる腫瘍胞巣を認め,症例1では多核巨細胞も認めたが,病変はいずれも左右対称性で境界明瞭であった.免疫染色では,S100蛋白,Melan-A,HMB-45は陽性だが,p16はびまん性に陽性でありKi-67陽性率は低く,上記から2例をSpitz母斑と診断した.Spitz母斑は,若年者の頭頸部や下肢に好発し,手指や足底は稀である.悪性黒色腫との鑑別が困難であり,定期的なダーモスコピー所見の観察で侵襲的な手術を回避できる可能性があるが,一律に経過観察するのではなく,患者の年齢や理解度に応じた個々のアプローチが重要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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