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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科78巻1号

2024年01月発行

雑誌目次

症例報告

悪性リンパ腫の経過中に中毒性表皮壊死症を発症した1例

著者: 古川真衣子 ,   角田加奈子 ,   佐藤友利 ,   荒川伸之 ,   中川倫代 ,   大西正純 ,   佐々木了政 ,   天野博雄

ページ範囲:P.13 - P.18

要約 63歳,男性.悪性リンパ腫に対し,化学療法予定であったが,38 ℃台の発熱が持続していたためアセトアミノフェンを内服した.内服翌日より,発熱とともに全身に紅斑とびらんが出現したため,当院に搬送された.当院受診時,体表の約90%の皮膚の表皮剥離と粘膜疹がみられた.病理組織像では表皮下水疱と個細胞壊死を認めた.薬剤リンパ球刺激試験でアセトアミノフェンが陽性であり,アセトアミノフェンによる中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis : TEN)と診断した.ステロイドパルス療法と2度の免疫グロブリン大量静注療法により皮疹は発症35日目に上皮化したが,悪性リンパ腫の急速な進行により死亡した.担癌患者は,易感染性などの点から通常のTENに比べて予後不良である.TENの治療を優先することで原疾患が進行するリスクを十分説明した上で,感染症の合併に注意しながら治療を行っていく必要がある.

原因薬の同定に苦慮した高齢者の多発性固定薬疹の1例

著者: 早川怜那 ,   下田由莉江 ,   大山学 ,   水川良子

ページ範囲:P.19 - P.24

要約 68歳,男性.初診1年前から同一部位に繰り返す口唇,手掌の皮疹を主訴に当科受診.初診時,顔面を含む全身に多発する紅斑を認めた.病理組織学的には表皮の個細胞壊死と空胞変性がみられ,多発性固定薬疹と考えプレドニゾロン内服で,皮疹は軽快した.皮疹出現前にトニックウォーター,抗菌薬や解熱鎮痛剤等を摂取していたが,内服試験はいずれも陰性であった.初診から2年後,ディパシオEX®〔主成分:アリルイソプロピルアセチル尿素(AIAU),イブプロフェン〕内服後に皮疹が再燃した.患者は本剤を「薬」として認識しておらず,医師側の指導で摂取物を記録していたリストにて同定できた.内服試験では,ディパシオEX®が陽性,イブプロフェンは陰性であり,AIAUが原因薬と推察した.自験例は市販薬を含む多数の被疑薬を摂取しており原因薬の同定に時間を要した.高齢化していく社会において,医師—患者間での情報共有の工夫が大切であると考えた.

ニボルマブによる乾癬様皮疹に対して紫外線療法が著効した1例

著者: 高橋美帆 ,   土橋人士 ,   大峡慎一 ,   池田志斈

ページ範囲:P.25 - P.29

要約 54歳,女性.初診2年前に発症した中咽頭癌の肺転移巣に対して化学療法が無効であったため,初診8か月前からニボルマブが開始された.その後肺転移巣は縮小傾向であったが,副作用である高カリウム血症によりニボルマブ投与を一時中断し,初診1か月前よりニボルマブが再開されていた.再開2週間後より紅斑が出現し,全身へと拡大したため当科へ紹介受診となった.初診時,体幹・四肢に落屑を伴う小型の浸潤性紅斑が多発し,強い瘙痒を伴っていた.ステロイド外用を行ったが改善には乏しく,Köbner現象を伴った皮疹の新生がみられた.ニボルマブによる乾癬様皮疹と考え,紫外線療法を併用した.治療開始後皮疹,瘙痒ともに改善がみられ,現在も紫外線療法を行いながらニボルマブの投与を継続している.ニボルマブ投与中に生じた乾癬様皮疹には,紫外線療法が有効な場合があり,ステロイド外用で改善が乏しい場合には,治療の選択肢の1つとなる.

プレドニゾロン単剤で加療し内服終了後も寛解を維持している小児尋常性天疱瘡の1例

著者: 木蜜徹 ,   土橋人士 ,   新井喜康 ,   神保圭佑 ,   山上淳 ,   清水俊明 ,   池田志斈

ページ範囲:P.31 - P.36

要約 7歳,女児.難治性の口腔内潰瘍で当院小児科を紹介受診し,4か月後に四肢・体幹に水疱が出現したため当科を受診した.膿痂疹を疑い抗菌薬加療するも改善せず,血清抗デスモグレイン1抗体・3抗体ともに陽性であり,皮膚病理組織所見,蛍光抗体法の所見とあわせて,粘膜皮膚型尋常性天疱瘡と診断した.プレドニゾロン(PSL)1 mg/kg/日で治療開始,症状改善後PSL漸減し,1年4か月で内服終了.内服終了後2年経過しているが寛解を維持している.天疱瘡は,40〜60歳台に好発し,小児期発症は稀な自己免疫性水疱症である.小児への長期にわたるステロイド全身投与は成長障害をきたすことがありしばしばためらわれる.自験例では成人症例と同様に必要十分量のPSL内服で寛解導入し,速やかに減量した結果,身長・体重増加ともに問題なく経過している.小児という理由だけで寛解導入のステロイド投与量は減量せず,初期治療をためらわず確実に行うことが肝心である.

背部に生じたlinear syringocystadenoma papilliferumと考えた1例

著者: 林航 ,   下田由莉江 ,   山崎好美 ,   下山田博明 ,   大山学

ページ範囲:P.37 - P.42

要約 16歳,女性.出生時より自覚した背部の皮疹が拡大傾向となり当科受診.初診時,背部左側に5〜10 mm大の紅色丘疹が列序性に集簇していた.伝染性軟属腫やリンパ管腫を鑑別に皮膚生検を施行した.病理組織学的に,表皮が乳頭腫状に増殖しつつ真皮内に陥凹し,好塩基性の立方上皮と好酸性の円柱上皮の2層で構成されており,linear syringocystadenoma papilliferum(SCAP)と考えた.Linear SCAPはSCAPの稀な亜型であり脂腺母斑が先行しない場合が多い.本疾患で既報のダーモスコピー所見のうちmilky red papillomatous projectionは丘疹に一致する表皮の肥厚・隆起性変化,central ulcerは表皮の陥入,white circlesは脂腺またはアポクリン腺の開口部,polymorphic vesselsは真皮内の拡張血管に相当すると考えた.これらのダーモスコピー所見を呈する列序性の丘疹をみた際にはlinear SCAPを考え,稀に悪性化の報告があることから切除を勧めることが望ましいと考えた.

外陰部に腫瘤を形成したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の1例

著者: 川上美咲 ,   西澤綾 ,   下山達 ,   比島恒和

ページ範囲:P.43 - P.48

要約 33歳,女性.初診3か月前に右外陰部に腫瘤を自覚し,急速に増大したため当科を受診した.初診時,右小陰唇内側から外方向に発育する9×6 cm大の有痛性紅色腫瘤を認めた.皮膚生検で真皮から皮下組織にかけて異型の強い大型リンパ球がびまん性に増殖し,CD20,Bcl-6,MUM-1陽性であった.全身精査で多臓器病変は認めず,皮膚原発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma : DLBCL)と診断した.R-CHOP療法を開始後腫瘤は速やかに縮小,計6クール施行し現在のところ完全寛解を維持している.外陰部腫瘤を呈するDLBCLは非常に稀であり,自験例のように外陰部に急速に増大する腫瘤や皮下硬結を認めた場合は,皮膚生検を積極的に検討すべきである.また外陰部DLBCLに関して報告が少なく,確立された治療法がないため今後の症例の蓄積が望まれる.

胸腹部に多発する多彩な皮膚症状を呈した原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫,下肢型の1例

著者: 吉田憲司 ,   小原芙美子 ,   河合匡子 ,   長瀬大輔 ,   石河晃

ページ範囲:P.49 - P.56

要約 71歳,女性.初診2か月前から臍上方に瘙痒や疼痛のない発赤を伴う皮疹が出現し,1か月前から皮疹部に硬結と隆起を伴うようになった.同時期から,胸腹部には環状紅斑や境界明瞭な不整形紅斑も出現した.ステロイド内服・外用で改善ないため紹介受診した.紅色結節の病理組織では,大型異型リンパ球が真皮浅層から皮下脂肪織までびまん性に浸潤し,CD20陽性,bcl-2一部陽性,MUM-1陽性,bcl-6陽性,CD10陰性,MIB-1標識率80%以上であった.FDG-PET/CTで皮膚以外に原発巣がないことから,原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫,下肢型と診断した.R-CHOP6クール施行で完全寛解となり,治療12か月経過した現在再発はない.本疾患の典型的臨床像は下肢の紅色結節・腫瘤であるが,自験例のように稀に進行性に多彩な皮膚症状を伴う場合があるため,ステロイド治療抵抗性の瘙痒や疼痛のない多彩な皮疹ではリンパ腫も念頭に置いた皮膚生検および免疫組織学的な検討が必要である.

発症20年で診断に至った肺結核を伴う尋常性狼瘡の1例

著者: 黒崎友木穂 ,   太田朝子 ,   宮﨑明子 ,   鉄本訓史 ,   加賀野井朱里 ,   酒井俊輔 ,   越智沙織

ページ範囲:P.57 - P.61

要約 47歳,男性.27,34歳時に肺炎の既往あり.26歳頃に結核罹患者と接触した.27歳頃より左外眼角と左手掌に紅斑が出現し,外用療法では改善せず治療を自己中断し,皮疹は増大した.2か月前に前医を受診し,皮膚生検にて肉芽腫形成を認め,精査加療目的に当科紹介となった.初診時,左外眼角と左手掌に角化性紅斑局面を認め,手掌の紅斑は環状を呈していた.病理組織学的に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫像であり,抗酸菌染色は陰性であった.T-SPOT® TBは陽性,胸部CTでは空洞を伴う結節影を認めた.皮膚組織・喀痰における抗酸菌培養およびPCR検査で結核菌が同定され,肺結核を伴う尋常性狼瘡と診断し,抗結核薬治療にて皮疹は改善し,喀痰培養も陰性化した.自験例は発症から約20年経過し,診断に至った.治療抵抗性の持続する皮疹は皮膚結核も念頭に置き,問診や結核菌PCR・培養検査を含めた皮膚生検,肺結核の有無などの各種精査を積極的に行う必要がある.

頸部リンパ節炎から皮膚浸潤をきたし外科的介入を行ったMycobacterium avium感染症の1例

著者: 河野奈央 ,   山田誠二郎 ,   牧亮平 ,   白鳥隆宏

ページ範囲:P.63 - P.68

要約 80歳,女性.初診2か月前より左頸部に皮下硬結を認め,頸部リンパ節炎の疑いで当院耳鼻咽喉科に紹介となった.穿刺吸引細胞診を施行したが炎症所見のみであった.穿刺から1か月後,同部位に皮下腫瘤を認め当科に紹介となった.初診時,左頸部に3 cm大の弾性硬の可動性不良な腫瘤を認めた.皮膚生検時に施行した皮下の壊死した脂肪織のスワブ検体の抗酸菌培養が陽性となり,DNA-DNA hybridization法でMycobacterium aviumと同定された.画像検査では肺病変はなく,腫瘤とその直下のリンパ節との連続性が疑われ,穿刺を契機に頸部リンパ節炎から皮膚浸潤をきたしたと考えた.リファンピシン,クラリスロマイシン,エタンブトールの内服を開始したが副作用が出現したため,外科的切除を施行し治癒した.非結核性抗酸菌の頸部リンパ節炎は外科的切除による治癒率が高いため検討すべき治療である.

エフィナコナゾール爪外用液が有効であったFusarium proliferatumによる爪真菌症の1例

著者: 小野弘登 ,   山口礼門 ,   二ツ谷剛俊 ,   安澤数史 ,   山田壮亮 ,   望月隆 ,   清水晶

ページ範囲:P.69 - P.75

要約 61歳,女性.初診5か月前に右1指爪先端の白濁を自覚した.徐々に白濁部が拡大し,初診2か月前に白濁部の圧痛と爪甲下の淡い発赤,および爪甲剝離が生じた.疼痛増悪のため近医皮膚科を受診し,グロムス腫瘍の疑いで,当院を紹介された.初診時,右1指の爪甲は全体に軽度混濁し,正中部の白濁が強い部分に圧痛を伴っていた.爪囲に発赤や腫脹はみられなかった.KOH直接鏡検法では短く不規則な太さの分枝した透明な菌糸がみられ,非白癬菌性爪真菌症を疑った.病理組織では爪甲の爪床側の角質中に菌要素がみられ,真菌培養では表面は白色綿毛状で中央は紫色,裏面は褐色調の集落が発育した.Translation elongation factor 1α遺伝子の塩基配列より,Fusarium proliferatumと同定した.エフィナコナゾール爪外用液で治療し,爪甲混濁と疼痛は改善傾向にある.過去報告例からもエフィナコナゾールは本症に有効と思われた.疼痛や炎症を伴う爪真菌症では,原因菌として白癬菌以外の真菌を考える必要がある.

アダリムマブ投与下で陰圧閉鎖療法と分層植皮術を行い寛解が得られた右下腿壊疽性膿皮症の1例

著者: 木下真太郎 ,   小泉滋 ,   奥山智香子 ,   中村聡子 ,   稲福和宏

ページ範囲:P.77 - P.82

要約 83歳,女性.既往に関節リウマチと軽度の認知症あり.当院初診1か月前,右下腿に潰瘍が出現し前医を受診した.軟膏処置やデブリードマンを行ったが,潰瘍が拡大し当院紹介受診となった.当院初診時,右下腿に疼痛を伴う潰瘍があり,潰瘍底は長趾屈筋腱と後脛骨筋腱が露出し壊死組織が付着していた.病理組織学的所見では,潰瘍部辺縁に好中球を主体とする炎症細胞浸潤を認め,創部培養では有意な菌の発育はなく,臨床所見なども含めて壊疽性膿皮症と診断した.プレドニゾロン30 mg/日を2週間投与したが改善なく,アダリムマブを導入した.その後潰瘍は徐々に縮小したが,大型で上皮化に時間を要すると考え,陰圧閉鎖療法と分層植皮術を行い,25日後に上皮化が得られた.壊疽性膿皮症に対してアダリムマブは有効であり,全身療法で病勢コントロールがついていれば,創傷治癒促進目的での外科的治療の併用は治療選択肢となりうると考えた.

臨床統計

順天堂東京江東高齢者医療センターにおける後期高齢者の皮膚悪性腫瘍統計

著者: 長谷川舞 ,   植木理恵 ,   池田志斈

ページ範囲:P.83 - P.87

要約 2005年1月〜2020年12月の過去16年間に当院において病理組織学的に皮膚悪性腫瘍と診断した後期高齢者について,統計的検討を行った.男性53例,女性100例で男女比は1:1.9だった.疾患別では,基底細胞癌41例,Bowen病41例,有棘細胞癌22例,日光角化症20例,乳房外Paget病7例,悪性黒色腫1例,転移性皮膚癌8例だった.また,超高齢者の皮膚癌症例についても調査を行い,その統計的傾向を比較検討した.超高齢者では女性・浸潤癌の割合,多発例が増加した.手術による重篤な合併症はみられなかった.身体的負担を考慮すると,ダーモスコピーで皮膚悪性腫瘍と診断できるのであれば,十分なマージンを確保して皮膚生検術を兼ねた切除術を行うことが望ましい.高齢でも比較的安全に手術が行われることを理解してもらい積極的に手術治療を行うよう啓発していくことが重要と考えた.

マイオピニオン

挑戦と人のつながりの大切さ

著者: 澤田雄宇

ページ範囲:P.10 - P.11

 幼少期を北海道の田舎町で育ったことから,周りの人たちと仲良く助け合っていく大切さを体に刻み込まれたこともあり,自分でできる可能な限り,人との関わりを大切にしてきました.元来の明るい楽天的な性格もあって,接すればみんなと仲良くなれることができる私は,人生の岐路において,そのような方たちに多くの支えをいただいています.今回「マイオピニオン」の執筆のお話をいただいた際に,現在希薄になっている人間同士の繋がりの大切さ,そして,どんなことでも恐れずに挑戦し続けるのが大切であるということをお伝えしたいと思いました.
 2006年に産業医科大学医学部を卒業し,九州医療センターでの初期臨床研修医を経て,2008年から戸倉新樹先生が当時教授をされていた産業医科大学皮膚科学教室で修練を積んできました.そもそも,私が皮膚科医になろうと思ったのは,戸倉先生との出会いがあったからでして,戸倉先生と当時准教授でおられた椛島健治先生から皮膚免疫が全身臓器において重要であることを教えていただいたからでありますし,それが現在の私の研究テーマの1つでもあります.その当時,助教には,日野亮介先生,吉木竜太郎先生,杉田和成先生がおられ,その上には講師として小林美和先生,尾藤利憲先生,准教授に中村元信先生がおられました.皆さんいずれも個性を持たれ専門分野で活躍されておられました.日野先生は乾癬で現在も活躍されていますし,吉木先生は現在開業されていますが,その当時は皮膚外科を専門としているかたわら,臨床を終えたらマウス実験でFACS(fluorescence activated cell sorter)を夜中まで流し続け,杉田先生は常に医局で論文作成や研究室で研究し常に働かれている状況でした.そうした先輩たちの姿を目の当たりにしていましたので,その当時はそれが普通だと感じていましたが,かなり真剣に皮膚科学を自己研鑽されていたのだと,今振り返ると思います.

連載 Clinical Exercise・197

Q考えられる疾患は何か?

著者: 日浦梓

ページ範囲:P.7 - P.8

■症 例■
患 者:6か月,男児
既往歴・家族歴:特記すべきことなし.
現病歴:生来,右上肢に多発する地図状の紅斑があった.成長により面積は拡大したが,右上肢に占める割合は不変で,色調は赤黒色から紫紅色に変化した.右肘頭部の病変は擦れる度に出血を繰り返していた.
現 症:右の手関節から前腕,肘関節,上腕にかけて,外側を中心に地図状の紫紅色局面を認めた(図1).紫紅色局面の中心部は暗紫紅色で,角化して軽度隆起していた.また,肘頭部では血痂が付着していた.右上肢以外の体幹・四肢に同様の病変はない.

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目次

ページ範囲:P.3 - P.3

欧文目次

ページ範囲:P.5 - P.5

文献紹介

ページ範囲:P.48 - P.48

書評

ページ範囲:P.88 - P.88

次号予告

ページ範囲:P.91 - P.91

あとがき

著者: 石河晃

ページ範囲:P.94 - P.94

 明けましておめでとうございます.コロナ禍では,さまざまな制約が人々の生活に影を落としていましたが,5類感染症に移行した後は少しずつコロナ前の生活が取り戻されつつあります.「梅雨明け宣言」のような「コロナ明け宣言」はありませんが,今年がコロナ明け元年と言えるのではないかと思っています.
 さて,日本専門医機構による専門医制度が開始され,医師過剰地域の募集定員に対してシーリングがかけられていることはご承知のとおりです.シーリング対象地域に住みながら皮膚科医を志す研修医や学生にとっては,診療科を変更したり,勤務地域を変えたりしなければならないかもしれません.医師の地域偏在の責任を若い世代だけに負わせているようで大変心苦しい限りです.一方ではCMでおなじみの美容診療施設に2023年度は約200名の医師が就職しているようです.プログラム修了を前提とした専門医資格は働き方のフレキシビリティに制限をかけ,ライフイベントが重なる世代には大きな負荷となっています.大学病院勤務医の給与の低さもこの傾向を助長しているかもしれません.医師の働き方改革を実現するための1つの政策としてシーリングが行われましたが,自由を束縛するだけでは人の心は動きません.専門医の診療行為に対するインセンティブが必要なこと,大学病院勤務医の給与の改善は急務であることは明らかです.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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