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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科78巻1号

2024年01月発行

症例報告

原因薬の同定に苦慮した高齢者の多発性固定薬疹の1例

著者: 早川怜那1 下田由莉江1 大山学1 水川良子1

所属機関: 1杏林大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.19 - P.24

文献概要

要約 68歳,男性.初診1年前から同一部位に繰り返す口唇,手掌の皮疹を主訴に当科受診.初診時,顔面を含む全身に多発する紅斑を認めた.病理組織学的には表皮の個細胞壊死と空胞変性がみられ,多発性固定薬疹と考えプレドニゾロン内服で,皮疹は軽快した.皮疹出現前にトニックウォーター,抗菌薬や解熱鎮痛剤等を摂取していたが,内服試験はいずれも陰性であった.初診から2年後,ディパシオEX®〔主成分:アリルイソプロピルアセチル尿素(AIAU),イブプロフェン〕内服後に皮疹が再燃した.患者は本剤を「薬」として認識しておらず,医師側の指導で摂取物を記録していたリストにて同定できた.内服試験では,ディパシオEX®が陽性,イブプロフェンは陰性であり,AIAUが原因薬と推察した.自験例は市販薬を含む多数の被疑薬を摂取しており原因薬の同定に時間を要した.高齢化していく社会において,医師—患者間での情報共有の工夫が大切であると考えた.

参考文献

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13)高橋ユエ:J Visual Dermatol 4 : 1042, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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