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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科78巻10号

2024年09月発行

マイオピニオン

薬剤性過敏症症候群診療ガイドラインをまとめて—0から1を作る難しさ

著者: 水川良子1

所属機関: 1杏林大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.720 - P.721

文献概要

 2024年3月,日本皮膚科学会雑誌において,「薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン2023」が発表されました.このガイドラインは,薬疹とヘルペスウイルス6型(human herpesvirus 6 : HHV-6)の関係が明らかにされ,薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome : DIHS)の概念が提唱されてから25年以上を経過して初めてのものです.この四半世紀の間に,DIHSに関するさまざまな研究が行われ,多くの事実が明らかにされました.今ではDIHSの臨床所見の特徴とされる眼囲を避ける顔面の紅斑や膿疱,下肢を主とする紫斑の出現も,症例の蓄積とともに明らかになってきたことです.各施設の経験症例に基づくさまざまな治療に関する意見も,この25年の間に蓄積されてきました.しかし,多くの意見や説が存在するため,DIHSや薬疹を専門としない医師にとっては,どのように診断し治療を行うべきか,道標が明確ではなかったとも言えます.こうした背景から,DIHS診療ガイドラインの作成が強く求められるようになりました.
 DIHSの診療ガイドラインの作成においては,さまざまな意見を持つ多くのエキスパートと討議しながら意見をまとめていく作業が求められます.今までDIHS診療ガイドラインが作成されてこなかった理由の1つとして,意見をまとめることが難しかったことがあるのかもしれません.DIHSは薬剤アレルギーだけでなくウイルス再活性化の影響もある複雑な病態を有しているため,専門的な知識からの異なる意見が入り混じる状態です.これらの意見は,それぞれの経験やデータに基づくものであり,経験が異なれば意見も異なります.また,ガイドラインはその性質上,医療的な側面だけでなく社会的影響も考慮する必要があり,これが作成のハードルをさらに高めていました.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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