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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科78巻5号

2024年04月発行

文献概要

Derm.2024

脇汗に囚われて

著者: 大内健嗣1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部皮膚科

ページ範囲:P.75 - P.75

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 慶應皮膚科で汗外来を担当しております大内健嗣と申します.気象庁が,発表した昨年の夏の天候のまとめによると,1898年から統計を開始した日本の平均気温偏差は過去最高を記録したそうです.2023年の日本の夏の平均気温偏差は+1.76.これまで最も高かった2010年の+1.08を大幅に上回り,体感だけでなく昨年の暑さが大きく飛び抜けて暑かったことが裏づけられました.暑ければ汗をかくのが人間です.平均気温が上がるにつれて,人々の汗に対する意識が高まっています.汗の中でも,移動時や仕事中など事前にケアして防ぎたい「ネガ汗」と,運動などで自ら積極的に汗をかいて,汗をかいた後でケアする「ポジ汗」,2つの捉え方があります.手掌や腋窩の多汗は明らかに「ネガ汗」です.腋窩の多汗症は皮膚疾患の中で最もquality of life(QOL)を深刻に低下させる「疾患」の1つであることを皆さんはご存知でしたか? 私は汗外来を担当するまで知りませんでした.手掌の多汗は生活の質が下がるだろうな…と想像が容易につきますが,脇汗は自分が1ミリも気にしたことがありませんでしたし,脇に汗をかくのは当たり前というマインドでした.しかし,汗外来で脇汗に悩む患者さんの訴えに耳を傾け数年が経ち,「あれ?もしかして脇汗って邪魔なのかしら?」「青いシャツの汗ジミ,嫌.」「仕事中の脇汗すっごく気になる!」と徐々に脇汗に囚われていく自分がいました.そこで,脇ボトックスを打ったところ,非常に快適です.脇がさらさらなのがこんなに快適だなんて,想像できませんでした.脇汗を軽視していた数年前の自分を猛省しています.慶應の汗外来は脇汗治療の最終兵器;ミラドライがあります.ミラドライは皮膚の表面からマイクロ波を照射し,汗腺組織を熱損傷させて,永続的に汗腺組織を除去する治療機器です.アポクリン腺にも効きますので腋臭症にも効きます.患者さん熱烈募集中です.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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