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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科78巻8号

2024年07月発行

雑誌目次

症例報告

薬剤性過敏症症候群の経過中に皮疹の再燃とウイルスの持続再活性化を認め橋本病を発症した1例

著者: 根本千絢 ,   下田由莉江 ,   小林英資 ,   佐藤洋平 ,   大山学 ,   水川良子

ページ範囲:P.550 - P.556

要約 65歳,男性.初診3週間前より腹痛に対しサラゾスルファピリジンを内服後,発熱と皮疹が出現した.近医にて薬疹の診断でステロイドセミパルス療法を施行されるも改善せず,当科に転院した.初診時,四肢に広範囲に紫斑を認め一部では血疱を伴っていた.Human herpesvirus 6(HHV-6)の再活性化を認め薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome : DIHS)と診断した.ステロイド内服で軽快したが,その後も皮疹の再燃とHHV-6・Epstein-Barr virus(EBV)の再活性化がみられた.初診7か月後に抗TPO抗体が陽転化し,その1か月後に橋本病と診断された.ウイルスの再活性化が,皮疹再燃と橋本病発症に関与した可能性を考えた.教室経験例の解析から長期間のウイルスの再活性化,皮疹の再燃を繰り返し認めるDIHSでは,そうでない場合と比べ自己免疫性疾患の発症のリスクを考慮すべきと考えられた.

妊娠性類天疱瘡の1例—好中球リンパ球比と相関する因子についての考察

著者: 木村温子 ,   滝吉典子 ,   原憲司 ,   千代谷成史 ,   中野創 ,   澤村大輔 ,   原田研

ページ範囲:P.557 - P.562

要約 27歳,女性.妊娠33週の初妊婦.初診の1週間前に前腕部の水疱を自覚し,徐々に範囲が拡大した.諸検査の結果,妊娠性類天疱瘡と診断.プレドニゾロン50 mg/日内服で治療開始したところ症状は漸次軽快,妊娠38週で自然分娩にて健常女児を出産した.本邦における2007年以降の妊娠性類天疱瘡の報告例を基に,初診時における好中球リンパ球比(neutrophil-to-lymphocyte ratio:NLR)と抗BP180抗体価,臨床経過,予後との相関を検討したところ,NLRは抗BP180抗体価と相関していたが,臨床経過,予後には相関しなかった.妊娠性類天疱瘡の初期治療におけるステロイド投与量の決定に際しては,好中球リンパ球比はあくまでも参考程度にとどめるべきことがうかがえた.妊娠性類天疱瘡におけるステロイドの初期投与量は,迅速に決定するのと同時に母子にとって適切な量である必要があり,産科や糖尿病内科など他科との連携がきわめて重要である.

Qスイッチアレキサンドライトレーザー照射により改善がみられた汗孔角化症の1例

著者: 外山雄一 ,   神谷浩二 ,   小宮根真弓 ,   大槻マミ太郎

ページ範囲:P.563 - P.568

要約 62歳,女性.5年前から自覚し増数傾向のある顔面・四肢・体幹の紅斑・褐色斑を主訴に当科受診した.約1 cm大までの円形・楕円形で環状隆起を示す角化性の紅斑・褐色斑が顔面・四肢・体幹に散在した.皮膚生検の結果,錯角化円柱,いわゆるcornoid lamellaの所見を認め,汗孔角化症(日光表在播種型)と診断した.治療は,マキサカルシトール軟膏外用,液体窒素療法,エトレチナート内服を試みたが効果は乏しかった.患者は露出部である前腕について整容的に治療希望が強く,前腕の病変に対してQスイッチアレキサンドライトレーザー(Q-switched alexandrite laser:QSAL)照射を3か月ごとに3回試みたところ一定の治療効果を認めた.汗孔角化症の治療においては従来の外用治療等では十分な効果が得られないことが多く,患者は整容面で不満を持つことが多い.レーザー治療は,保険適用外ではあるが,整容的に治療効果が高く,今後の治療選択肢として有望であると考えられる.この症例報告を通してQSALによる治療効果が広く周知され,今後も症例蓄積が進むことを期待したい.

発症早期に硬化性萎縮性苔癬の所見を伴った右耳介後部モルフェアの1例

著者: 越智安奈 ,   光井康博 ,   小川浩平 ,   安藤淳史 ,   濱川健太郎 ,   栗本徹 ,   野見恭子

ページ範囲:P.569 - P.573

要約 20歳,女性.半年前より右耳介後部に約4×2 cmの淡黄色硬化性局面が出現した.部分生検では角栓や液状変性に加え,真皮全層に膠原線維の均質化,炎症細胞浸潤を認めた.汗腺周囲にも線維化があったが,表皮から真皮上層の変化が優位であり,この時点では硬化性萎縮性苔癬と診断した.ステロイド,タクロリムスを外用するも硬化が進行し,初診の約1年5か月後に全切除に至った.全摘標本では表皮や基底層の変化に乏しく,炎症細胞浸潤や膠原線維の増生が皮下組織に及び,モルフェアの所見であった.最終診断は,発症早期に硬化性萎縮性苔癬様の変化を伴ったモルフェアと考えた.自験例は,同一病変における病理像の経時的変化を捉えた点で貴重であり,炎症性変化が真皮上層から,時間経過とともに真皮全層,皮下組織へと及んだと考えた.このような症例では,組織採取時期により診断が変わる可能性があり,それを念頭に置いて経過をみていく必要がある.

足底に生じた表皮囊腫に対するヒト乳頭腫ウイルス関与の解析

著者: 山本ちひろ ,   藤田壮 ,   稲垣充亮 ,   浦上揚介 ,   山本剛伸 ,   青山裕美

ページ範囲:P.575 - P.579

要約 23歳,女性.半年前より左足底に1 cm大の皮下結節を自覚した.結節は徐々に拡大,疼痛を伴うようになり,当科を受診した.切除したところ,真皮内に囊腫状構造を認めた.角質と囊腫上皮内にhomogeneous型細胞質封入体が多数みられ,免疫染色によりヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus : HPV)が検出され,HPV関連表皮囊腫(cystic papilloma)と診断した.当科で経験した足底の表皮囊腫を解析した結果,90%はHPV感染が関係していたこと,特に荷重のかかる足趾基部周囲に好発する特徴があることがわかった.はっきりとした外傷歴のない症例でも足底にHPV関連表皮囊腫が生じており,皮膚付属器がHPVの感染標的や潜伏感染部位の可能性があると考えた.今回,足底の表皮囊腫に対するくり抜き法の有用性についても検討した.

広範囲に汎発した苔癬様型皮膚サルコイドーシスにステロイド全身投与が奏効した1例

著者: 佐藤祐樹 ,   井川哲子 ,   岸部麻里 ,   西薫 ,   山本明美

ページ範囲:P.581 - P.585

要約 40歳台,女性.当科初診3か月前より瘙痒を伴う皮疹が出現し前医を受診した.コルチコステロイド外用で改善なく病理組織学的検査でサルコイドーシスを疑われ当科へ紹介.初診時,体幹や前額部に粟粒大の淡紅色から淡黄色の丘疹が集簇し一部手掌大までの苔癬様局面を形成していた.病理組織学的に表皮直下から真皮中層にかけて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めLanghans型巨細胞も散見されたため苔癬様型皮膚サルコイドーシスと診断した.肺門および縦隔リンパ節の腫大以外の他臓器病変はなく,前医の治療にクラリスロマイシンとトラニラスト内服を追加したが皮疹と瘙痒は改善しなかった.整容面と瘙痒の改善目的にプレドニゾロン20 mg/日内服を開始し皮疹は消退,漸減後も再燃していない.皮膚サルコイドーシスの治療は外用コルチコステロイドが第一選択だが,難治の皮膚病変に対するコルチコステロイド全身投与が患者のQOL改善に貢献する可能性がある.

若年発症で水平方向に緩徐に進展したと考えた萎縮性隆起性皮膚線維肉腫の1例

著者: 竹石玲奈 ,   福屋泰子 ,   石黒直子

ページ範囲:P.587 - P.592

要約 61歳,男性.幼少期より臍下方に褐色斑を認めていた.初診の5か月前に右下腹部に皮下硬結が出現し増大したため前医を受診し,切除標本から隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans:DFSP)と診断され,拡大切除目的にて当科に紹介された.初診時右下腹部に手術瘢痕があり,臍下部から手術瘢痕に一部接する形で硬結を触れる不整形の褐色斑がみられた.褐色斑を含めて全摘した.褐色斑の病理組織像では真皮全体に萎縮がみられ,真皮中層から脂肪織にかけて小型で核異型に乏しい紡錘形の細胞が水平方向に浸潤していた.臨床および病理組織所見から萎縮性DFSPと診断した.萎縮性DFSPは稀な病型で,臨床的に無症候性の萎縮性斑状局面として発症し,病理組織像では外観を反映して真皮の萎縮を伴う点が特徴的である.DFSPの亜型として,隆起がない臨床・病理組織像を呈するものがあり注意を要する.

CD30陽性細胞が散見された原発性皮膚CD4陽性小・中細胞型T細胞リンパ増殖異常症の1例

著者: 伊藤一真 ,   乗松雄大 ,   赤塚太朗 ,   森村壮志 ,   濱田利久 ,   菅谷誠

ページ範囲:P.593 - P.599

要約 50歳,女性.2023年1月より左鼻背に増大傾向のある紅色結節を自覚した.近医を受診し,ステロイド外用を行ったが抵抗性のため,3月に前医にて生検が行われた.CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症の疑いで精査加療目的に当科を紹介され受診した.再生検した病理組織では,小型から中型のリンパ球が真皮全層に浸潤し,CD3陽性細胞がCD20陽性細胞よりも多くみられた.CD4陽性細胞はCD8陽性細胞に対し優位で,一部でBCL-6,PD-1が陽性であった.増殖している細胞の中には,CD30陽性の大型細胞も散見された.T細胞受容体γ鎖再構成も認め,原発性皮膚CD4陽性小・中細胞型T細胞リンパ増殖異常症と診断した.フルドロキシコルチドテープ貼付を開始し,初診から約1か月で病変部は平坦化した.本疾患では大型細胞を伴う場合でも再発難治となる例は稀と考えられ,過剰な治療を避けるためにも正確に診断する必要がある.

右大陰唇に紅色丘疹を呈した濾胞性リンパ腫皮膚浸潤の1例

著者: 伊藤一真 ,   松岡朱里 ,   乗松雄大 ,   赤塚太朗 ,   森村壮志 ,   濱田利久 ,   菅谷誠 ,   林雄一郎 ,   森一郎 ,   青墳信之

ページ範囲:P.601 - P.606

要約 75歳,女性.8年前に他院にて腸間膜リンパ節の多発腫大を指摘されたが,確定診断はされずに経過観察となっていた.初診3か月前から右大陰唇に米粒大の紅色丘疹を認め,ステロイド外用に抵抗性のため精査加療目的に当科紹介受診.全切除し,病理組織にて真皮全層にリンパ球様細胞が濾胞構造を形成しながら結節状に浸潤していた.免疫染色では腫瘍細胞に一致してCD20,CD79a,CD10,BCL-2が陽性であり,濾胞性リンパ腫皮膚浸潤と診断した.局所再発を認めず,腫大していた腸間膜リンパ節も自然経過で縮小傾向を示したため,保存的に経過観察を続けている.原発性皮膚濾胞中心リンパ腫と濾胞性リンパ腫の皮膚浸潤では予後や治療方針が異なるため鑑別が重要であり,特にBCL-2染色が有用と考えられている.濾胞性リンパ腫の皮膚浸潤部位として頭頸部の割合が多く報告されているが,外陰部浸潤例についても留意する必要がある.

外傷性血腫より進展した非クロストリジウム性ガス壊疽の1例

著者: 佐藤知世 ,   髙橋博之 ,   小林英理 ,   安食さえ子 ,   栁澤健二 ,   静川裕彦

ページ範囲:P.607 - P.612

要約 87歳,男性.パーキンソン病およびレビー小体型認知症で脳神経内科通院中.前日に強打した右下腿の腫脹と血疱,潰瘍などで当科紹介となった.血液検査やCT検査では軽度の炎症を伴う血腫の所見であり年齢や既往症を考慮し,保存的治療で対処したが,初診の約3週間後に突然のシバリングにより救急搬送された.再度のCT検査や残存する潰瘍部と血腫内の細菌培養からKlebsiella pneumoniaeが検出されガス壊疽と診断した.抗菌薬投与と局所麻酔下に創部の切開洗浄処置を行い,入院16日後から陰圧閉鎖療法を施行し,入院52日後に治癒と判定した.ガス壊疽では,早期の積極的外科治療が推奨されているが,高齢患者では認知症などの併存疾患により治療選択に難渋する場合がある.したがって,重症感染症を発症した高齢患者に対しては病状に関する根気強い説明と早期かつ最小限の外科的処置が必要と考えた.

片側顔面痙攣に対するA型ボツリヌス毒素製剤注射部位に生じた皮膚クリプトコッカス症の1例

著者: 井土(小西)なつの ,   野呂ケイ ,   小野木裕梨 ,   宿院梨衣 ,   渡邉直樹

ページ範囲:P.613 - P.619

要約 62歳,男性.右顔面神経麻痺後遺症による片側顔面痙攣のため4年前から右頰部に計7回のA型ボツリヌス毒素製剤の筋肉内注射を行った.1か月前から右頰部に圧痛を伴う紅斑と陥凹が出現し当科受診.病理組織学的検査で多核巨細胞を伴う肉芽腫と好中球浸潤があり,真皮深層にGrocott染色およびPAS染色陽性の菌体を多数確認し,皮膚クリプトコッカス感染症と診断した.イトラコナゾール100 mg/日を内服し症状改善したが,同部位に再発を繰り返したため200 mg/日へ増量し治癒に至った.病変は注射部位に一致しており,A型ボツリヌス毒素製剤の筋肉内注射を侵入門戸とした原発性皮膚クリプトコッカス症の可能性を考えた.調べえた限り注射部位に発生した原発性皮膚クリプトコッカス症は過去に4例報告されているが,ボツリヌス毒素注射部位に生じた報告は本症例が初であった.注射部位などの外傷部位に生じた難治性紅斑ではクリプトコッカス症も鑑別に診察することが必要と考えた.

マイオピニオン

房総半島の医療過疎と医学教育について

著者: 佐藤友隆

ページ範囲:P.548 - P.549

 このような機会をいただき感謝申し上げます.市原市は千葉県のご当地キャラクターの前胸部あたりの内房にあります.大学病院では医学生の卒前教育へのエフォートが大きいのが特徴です.4年生と6年生が実習に来ます.皮膚科と形成外科でオンコールをシェアし,病理,病棟,臨床カンファを行っています.帝京大学には「良医を育てる」,「自分流」などのスローガンがあります.私は慶應義塾大学の天谷雅行先生からいただいたご縁で今の立場で努めさせていただいています.7年間医長として勤務した東京医療センターは研修医の多い基幹病院でしたし,2年9か月間勤務した北里研究所病院は,大学附属ですが医学生の実習はなく,薬学部と同じ敷地にある港区白金の地域の病院でした.帝京大学附属市原病院は市原市からの土地誘致により建設計画が立案され,1986年に開設されました.当時市原市の人口は京葉工業地帯の発展で増加傾向,マイホームを持ちたいご世帯による新しい宅地が造成され農村部に新たな戸建ての団地が造成されました.自宅を新築した世代が現在80代となり当院に多く入院・通院されています.2006年には帝京大学ちば総合医療センターと名称変更されています.市原市には更級日記に由来する更級通りのほか,青葉台,光風台といった団地があり50代前後の子供たちの世代はもっと都心に別世帯を形成し,残された戸建てに夫婦または一人暮らしの老人が増加しています.駅前大学病院と異なりマイカー通院する地域に病院があり,市内でも高齢で運転免許証を返納し近くの病院に転院を希望される患者さんもいます.房総半島中央は養老渓谷や,乗り鉄,撮り鉄に人気の小湊鉄道,いすみ鉄道がありますが電車通院は困難で,過疎化の急速に進行している農村部が存在します.非常勤講師の五味博子先生は往診をされています.私はクリニックの外来を金曜日の夕方にお手伝いしていますが,患者さんは溢れています.しかし五味先生が最もしたい診療は往診ではないかと思います.
 明治を愛し日本人とは何か考え「名こそ惜しけれ」の精神を強調した歴史小説家司馬遼太郎氏が幕末から明治の医師を描いた小説『胡蝶の夢』に主人公の一人として千葉県出身の関寛斎も登場します.それまでは幕府将軍主治医も漢方医の往診で加療されており,長崎で松本良順らがオランダ軍医ポンペと取り組んだ近代医学教育は病院を建設し患者が入院する形で医師を教育し,科学に基づく近代医学が発展しました.全身麻酔のない時代,蘭方外科の主体は皮膚外科だったのではないかと考えたりしました.5月某日,大阪の司馬遼太郎記念館を訪問しました.膨大な文献をもとに小説を組み立てた,ご自宅の書斎とお庭を拝見しました.歴史はいろいろと教えてくれます.江戸時代に戻る形となりますが,往診に対する需要は,医療過疎地域ではますます高まると考えます.皮膚外科の需要は十分あります.皮膚癌も房総は農村漁村地域のため多数の症例があります.市原市のホームページに記載されている統計をみると人口は1986年が241,207人で,2022年が270,555人です.年間出生数は1986年が2,897人で2022年には1,399人で減少傾向です.2024年5月の年齢別人口統計表では,65歳以上が188,648名であり100歳以上が125名,20歳以下が42,362名と少子高齢化が急速に進行しています.65歳以上でも元気に自宅で自立していただかないと国が持ちません.ドクターヘリで重症熱傷が運ばれてきたりもしますが,救急部や麻酔科の人員が足りません.看護師は少ないながらも,充実していますが,医師が全科的に不足しています.建物も古くなっており,帝京大学附属病院では最も古いために,実習をしている学生さんも勤務するには,板橋や溝口と比較するとアメニティーが劣ると考えているようです.千葉県地域枠で進学されている学生もいますので,将来ちばに戻ってきてくれると考えています.全国の医科大学に進学されている千葉県が地元の先生にはぜひ戻ってきていただきたいと思います.自分の家族や親戚が病気になったときに頼れる病院であると自負していますが,現状は医師不足です.注目されている女性医師の結婚出産育児問題も帝京大学は常務理事が積極的に応援していますので,地域で出産子育てをできる環境整備も整えていくと考えます.先日当院は5年後の市原市ちはら台の帝京平成大学グランドへの移転計画を発表しました.住民が移転に反対の署名を届けてくださることもあります.市原市も医師不足問題を応援してくれるように支援してくれる政治家がいるとうれしいです.当科からは鶴舞というチバニアンに近い地区にある千葉県循環器病センターへ私の月に1回を含めて非常勤で医師を派遣し,地域医療を支えています.

連載 Clinical Exercise・203

Q考えられる疾患は何か?

著者: 石川武子

ページ範囲:P.545 - P.546

■症 例■
患 者:68歳,男性
主 訴:顔面,頸部,手の瘙痒を伴う皮疹
既往歴・家族歴:特記すべきことなし.
職業歴:20年前から葬儀屋の仕事に従事
現病歴:約20年前に葬儀屋の仕事を始めたころから,瘙痒を伴う皮疹が上肢に出現するようになった.10年前から顔面・後頭部にも拡大し,夏には開襟三角部や肩などのランニングシャツから露出する部位にも皮疹が出現し,2年前には皮疹はさらに増悪してきた.
現 症:眼囲を除く顔全体,下顎下面と後頸部に著明な苔癬化を伴う紅斑を認め,特に前額部・鼻背部では強い浸潤を伴っていた(図1a).頭皮全体は淡い紅斑であった.手背や指背には苔癬化を伴う紅褐色局面がみられ,手掌には粟粒大の小水疱がびまん性に散在していた.指腹の先端部には落屑を伴っていた(図1b).ランニングシャツより露出していた部位には炎症後の色素沈着がみられたが,非露出部位には皮疹は認めなかった.

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目次

ページ範囲:P.541 - P.541

欧文目次

ページ範囲:P.543 - P.543

文献紹介

ページ範囲:P.599 - P.599

書評

ページ範囲:P.620 - P.620

次号予告

ページ範囲:P.621 - P.621

あとがき

著者: 石河晃

ページ範囲:P.624 - P.624

 6月6日〜9日に国立京都国際会館にて第123回日本皮膚科学会総会が開催されました.京都大学椛島教授会頭の下,海外から50名を超える講演者をお招きし,英語のセッションも多数ありました.主なセッションにはWEBの自動翻訳アプリが用意され,各自スマホで日本語訳を聞くあるいは読むことができるようになっていました.また,基礎研究についても多数の講演が用意され,研究皮膚科学会を彷彿とさせる部分もありました.新し試みがふんだんに取り入れられ,また,好天にも恵まれ,非常に多くの現地参加者があり,コロナ禍の終焉を実感する素晴らしい学会でした.
 大変賑やかな学会のなか,若手皮膚科医の姿が少ないように感じたのが少し気がかりです.総会は卒後教育に主眼が置かれていますが,実際のところは大学のスタッフや病院の医長などの要職にある先生が講演や座長に呼ばれることが多く,若手医師が病院の留守番役に回ってしまうことが原因として大きいと思われます.学会のために外来を休診にする文化は日本にはまだありません.また,教育講演のWEB視聴ができることで1日でも現地参加しようという意欲が減っていることも一因と思います.たしかにWEB参加は大変便利であり,手っ取り早く知識を取り入れるには合理的なツールです.しかし,質疑応答についてはチャットを介しての質問では一問一答のパターンとなり,議論の応酬をすることは困難です.質問も少なくなりがちですし,核心を突いた質問がきてもその場をかわすだけの回答をするケースが増えたように思います.総会での現地参加は地理的に難しくとも,支部総会や地方会で現地参加し,対面発表での緊張感を経験する機会を増やすべき時期に来ていると思いました.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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