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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科78巻8号

2024年07月発行

文献概要

症例報告

発症早期に硬化性萎縮性苔癬の所見を伴った右耳介後部モルフェアの1例

著者: 越智安奈1 光井康博1 小川浩平2 安藤淳史3 濱川健太郎1 栗本徹1 野見恭子1

所属機関: 1奈良県総合医療センター皮膚科 2奈良県立医科大学皮膚科学教室 3奈良県総合医療センター形成外科

ページ範囲:P.569 - P.573

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要約 20歳,女性.半年前より右耳介後部に約4×2 cmの淡黄色硬化性局面が出現した.部分生検では角栓や液状変性に加え,真皮全層に膠原線維の均質化,炎症細胞浸潤を認めた.汗腺周囲にも線維化があったが,表皮から真皮上層の変化が優位であり,この時点では硬化性萎縮性苔癬と診断した.ステロイド,タクロリムスを外用するも硬化が進行し,初診の約1年5か月後に全切除に至った.全摘標本では表皮や基底層の変化に乏しく,炎症細胞浸潤や膠原線維の増生が皮下組織に及び,モルフェアの所見であった.最終診断は,発症早期に硬化性萎縮性苔癬様の変化を伴ったモルフェアと考えた.自験例は,同一病変における病理像の経時的変化を捉えた点で貴重であり,炎症性変化が真皮上層から,時間経過とともに真皮全層,皮下組織へと及んだと考えた.このような症例では,組織採取時期により診断が変わる可能性があり,それを念頭に置いて経過をみていく必要がある.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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