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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科78巻9号

2024年08月発行

文献概要

症例報告

愛知県瀬戸市で初めて報告された日本紅斑熱の1例

著者: 井土(小西)なつの1 小野木裕梨1 宿院梨衣1 武藤義和2 渡邉直樹1

所属機関: 1公立陶生病院皮膚科 2公立陶生病院感染症内科

ページ範囲:P.695 - P.700

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要約 74歳,男性.1週間前から持続する発熱と全身紅斑のため受診した.初診時に40 ℃の発熱と掌蹠を含む全身に米粒大から小豆大の紅斑がみられた.瀬戸市外への移動歴はなく,毎日市内で農作業を行っていた.中毒疹のほかリケッチア症を含む細胞内寄生菌感染を鑑別にドキシサイクリンとセフトリアキソンの投与を開始し速やかに症状の改善を得た.第8病日に血液でのPCR検査でRichettsia japonicaが陽性となり日本紅斑熱の確定診断に至った.日本紅斑熱は以前は関東以西での感染報告が多かったが,近年は東北や日本海側の地域にも拡大している.愛知県では2016年に県内初の感染が報告されて以降,三河地方を中心に患者数が増加しているが,自験例は尾張地方における初の報告例であった.日本紅斑熱は特徴的な刺し口が見つからない場合など診断に苦慮し致命的な転帰を辿ることもある.紅斑を伴う不明熱を診た際は,感染地域の拡大も考慮し日本紅斑熱も鑑別に挙げ診療を行う必要があると考えた.

参考文献

1)日本紅斑熱1999〜2019年.病原微生物検出情報月報 41 : 133, 2020
2)愛知県感染症情報(週報),2013〜2023年 https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/2f/kansen.html
3)山藤栄一郎:病原微生物検出情報月報 43 : 186, 2022
4)佐藤寛子,他:リケッチア感染症診断マニュアル(令和元年6月版):p 4 https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/Rickettsia20190628.pdf
5)Holly M, et al : MMWR Recomm Rep 65 : 1, 2016
6)吉田恭子,他:病原微生物検出情報月報 44 : 145, 2023
7)Sando E, et al : Emerg Infect Dis 24 :1633, 2018
8)藤田博己,安藤秀二:病原微生物検出情報月報 41 : 138, 2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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