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アメリカのレジデント生活のなかから
著者: 谷川久一1
所属機関: 1千葉大内科
ページ範囲:P.582 - P.583
文献購入ページに移動 私は日本で医学部を卒業してすぐアメリカの大学病院でpostgraduateの臨床教育(インターン,レジデント)を受けたわけでありますから,その後帰国して日本の医局に戻つて,種々のとまどいや矛盾に悩んだのは当然のことであります。しかしさらに年月のたつた現在,日米両国の医学教育を比較してみますと,帰国当時に比べて日本には日本の特殊事情のあることに気づいたわけであります。それはちようどインターン制度がアメリカではなくてはならない一過程でありますが,日本では廃止運動がその成果をおさめつつあるようで数年前私の父などがその運動を始めたおり,私に意見を求めたさいにも,あえて父に反対しなかつたわけであります。しかしながら日本のpostgraduateの教育には大きな疑問があります。その源は学位制度にあるようです。ほとんどすべての人が学位をうるため卒業後相当長い期間研究に従事する習慣があることであります。そのことが日本の医療におよぼす影響はきわめて大であります。すなわち卒業後論文を作るために相当アカデミックな勉強をしなくてはならないからであります。アカデミックな勉強そのものは決して悪いわけではありませんが,医師の90%以上が第一線に出る臨床医であるということで,卒業後6〜7年を論文を作る努力のために臨床の勉強を割愛しなければならないという事実であります。
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