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新刊紹介
真剣かつ勇気ある発言/いわば一種の"名医無用論"
著者: 重井達朗12 水野肇
所属機関: 1東京医歯大 2心研薬理
ページ範囲:P.128 - P.128
文献購入ページに移動本書の前半には著者が20年かかつて育ててきた計量診断学の生いたちがのべられる。内科医としての診療活動で遭遇する深刻な矛盾と,記憶・直観にたよる「古典医学」への根本的疑問に端を発し,新しい方法を求めずにいられなかつたいきさつが,戦中戦後の生々しい体験を通じて語られる。学界権威者たちに異端視されながら,従来の診断法の原理的欠陥を批判し,その多くの検査は医者がするよりもカードや機械にさせる方が能率がよいこと,確率論に立脚した診断実験の結果が十分有望であることを実証的に積み重ねて行く。病気の診断という仕事の中で,人間の頭脳と電子計算機とが分担すべき役割を冷静に分離し,より合理的な計量診断学の将来像を予見するさまは壮観である。
つぎに著者は治療学の危機を訴え,その合理化を拒む大きな要因として薬をめぐる混乱を指摘する。わが国の薬学者,薬理学者の発想を批し(この批判を筆者は必ずしも肯定しないが),薬事行政の無責任さと製薬企業の非倫理性を明らかにした上で,新薬の審査に関する健設的な意見がのぺられる。治療学の科学的建設に対するもう1つの障害はやはり古い医学概念の抵抗である。
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