icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina10巻12号

1973年11月発行

特集 これだけは知っておきたい治療のポイント

II 呼吸器 5.肺疾患の治療と管理

光化学スモッグによる肺障害の治療

著者: 長岡滋1

所属機関: 1都立広尾病院呼吸器科

ページ範囲:P.1628 - P.1629

文献概要

 通称光化学スモッグは,現代社会の大きな問題となっている.しかし,光化学反応の結果生じる大気汚染現象が,広く認識されるようになってからの月日は,比較的浅い.わが国において,その人体影響が問題になりはじめたのは,1970年の夏のことである.従来の大気汚染の問題は,かなり長い歴史をもっている.1661年に,英国政府のダイアリストのジョン・エベリンという人が,"ロンドンの空は煤煙によごれ,そのために呼吸器をおかされる人が多い"という主旨の記録をのこしており,1930年には,ベルギーのミューズ谷で,多数の住民に健康上の被害が発生したという,大気汚染の最初のエピソードがおこっている.一方,光化学スモッグの存在が認識されはじめたのは,1940年代から1950年代のはじめにかけてであった.すなわち,アメリカのロス・アンゼルス市で,白色がかったもやが発生し,植物の被害がおこり,やがて眼の刺激症状を訴える人々が多発するようになり,従来の大気汚染とは異なる現象の存在が考えられるようになったのがきっかけとなって,研究者達による検討がはじめられたのである.そしてその結果,従来の大気汚染物質が,日光の紫外線により光化学反応をおこし,さらにそれに物質相互間の作用が加わって,二次的に汚染物質を形成するという,いわゆる光化学スモッグの存在が,うかび出されてきたのであった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら