文献詳細
特集 これだけは知っておきたい治療のポイント
II 呼吸器 5.肺疾患の治療と管理
文献概要
通称光化学スモッグは,現代社会の大きな問題となっている.しかし,光化学反応の結果生じる大気汚染現象が,広く認識されるようになってからの月日は,比較的浅い.わが国において,その人体影響が問題になりはじめたのは,1970年の夏のことである.従来の大気汚染の問題は,かなり長い歴史をもっている.1661年に,英国政府のダイアリストのジョン・エベリンという人が,"ロンドンの空は煤煙によごれ,そのために呼吸器をおかされる人が多い"という主旨の記録をのこしており,1930年には,ベルギーのミューズ谷で,多数の住民に健康上の被害が発生したという,大気汚染の最初のエピソードがおこっている.一方,光化学スモッグの存在が認識されはじめたのは,1940年代から1950年代のはじめにかけてであった.すなわち,アメリカのロス・アンゼルス市で,白色がかったもやが発生し,植物の被害がおこり,やがて眼の刺激症状を訴える人々が多発するようになり,従来の大気汚染とは異なる現象の存在が考えられるようになったのがきっかけとなって,研究者達による検討がはじめられたのである.そしてその結果,従来の大気汚染物質が,日光の紫外線により光化学反応をおこし,さらにそれに物質相互間の作用が加わって,二次的に汚染物質を形成するという,いわゆる光化学スモッグの存在が,うかび出されてきたのであった.
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