文献詳細
文献概要
特集 これだけは知っておきたい治療のポイント IV 肝・胆・膵 4.肝疾患に合併症のみられたとき
肝腎症候群
著者: 上野幸久1
所属機関: 1三宿病院
ページ範囲:P.1710 - P.1711
文献購入ページに移動胆道疾患に併発する腎障害についてはショックに起因する血流の減少によるもの,つまりショック腎に他ならず,肝障害の関与を必ずしも必要とせず,したがって肝腎症候群とするのに当たらないとする考え方もかなり有力である.近年では非代償性肝硬変症あるいは劇症肝炎に伴う腎機能障害のほうがむしろ注目され,その方面の報告が多い,筆者らの症例でも胆道疾患に伴う高窒素血症がショックを契機としておこることが多く,また種々の原因による急性循環不全により著しい肝腎障害をきたすことがあり,筆者らもやはり肝腎症候群をショック腎の範疇に属するものと考えたい.しかしながら,胆道疾患における腎障害はとくに高度の黄疸と炎症とが持続し,しかも高齢者である症例におこりやすいという特異的な面をもっている.また頻度がかなり高く,因果関係が比較的明らかであり,ある程度予知と予防とが可能であり,しかも適切な治療により救命し得ることが多いという点において実地医学的に重要である.したがって,本稿においては,このような症例を肝腎症候群とすることの妥当性はさておいて,紙数の関係もあり,胆道疾患に伴う腎障害の対策に限定したい.
掲載誌情報