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文献詳細

雑誌文献

medicina10巻12号

1973年11月発行

文献概要

特集 これだけは知っておきたい治療のポイント IV 肝・胆・膵 4.肝疾患に合併症のみられたとき

肝腎症候群

著者: 上野幸久1

所属機関: 1三宿病院

ページ範囲:P.1710 - P.1711

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 肝・胆道疾患に腎障害が稀ならず認められることは古くから注目され,1939年Nonnenbruchにより提唱された肝腎症候群という概念が今日でもかなり広く一般に受け入れられている.しかしながら一方には,Martiniの指摘しているように,果たして真の意味での肝腎相関が存在するのか,また肝腎症候群という概念が妥当であるかについては疑問の余地が少なくない.肝腎の両者に障害が存在するばあいをMartiniに従って整理すると,1)胆道疾患における高窒素血症,2)肝硬変症に伴う糸球体腎炎,3)末期の肝硬変症あるいは劇症肝炎における水分および電解質代謝異常ないし腎不全,4)中毒あるいは感染などによる肝・腎の同時障害(Weil病,4塩化炭素中毒など)の4群に分類される.
 胆道疾患に併発する腎障害についてはショックに起因する血流の減少によるもの,つまりショック腎に他ならず,肝障害の関与を必ずしも必要とせず,したがって肝腎症候群とするのに当たらないとする考え方もかなり有力である.近年では非代償性肝硬変症あるいは劇症肝炎に伴う腎機能障害のほうがむしろ注目され,その方面の報告が多い,筆者らの症例でも胆道疾患に伴う高窒素血症がショックを契機としておこることが多く,また種々の原因による急性循環不全により著しい肝腎障害をきたすことがあり,筆者らもやはり肝腎症候群をショック腎の範疇に属するものと考えたい.しかしながら,胆道疾患における腎障害はとくに高度の黄疸と炎症とが持続し,しかも高齢者である症例におこりやすいという特異的な面をもっている.また頻度がかなり高く,因果関係が比較的明らかであり,ある程度予知と予防とが可能であり,しかも適切な治療により救命し得ることが多いという点において実地医学的に重要である.したがって,本稿においては,このような症例を肝腎症候群とすることの妥当性はさておいて,紙数の関係もあり,胆道疾患に伴う腎障害の対策に限定したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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