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文献詳細

雑誌文献

medicina10巻12号

1973年11月発行

文献概要

特集 これだけは知っておきたい治療のポイント X 腎・泌尿器 5.利尿法のポイント

排尿障害の生活指導

著者: 和久正良1 河村毅2

所属機関: 1帝京大泌尿器科 2三井記念病院泌尿器科

ページ範囲:P.1966 - P.1967

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前立腺肥大症か,神経因性膀胱か
 まず最も大切な排尿困難について述べよう,これは,1)排尿開始までの時間がかかる.2)腹圧の助けで排尿する.3)細くて小さい尿線,4)尿線の中断,尿淋歴,5)排尿後に尿が残っている感じのあること,6)尿閉の有無について状態を聞いて判断する.これはほとんど男子にきやすい症状で,放置すると腎機能の低下をおこす.臨床的によくみる形を男子の年齢順にみると,幼少年期に高度の真性包茎がある.この時,排尿に際して包皮がふくれ,かなり排尿困難がおこることがある.このような時には背面切開を行なう.男児に環状切除を行なわない理由は,皮膚がまだ弱いために亀頭ならびに尿道口を包皮でおおっておかなければならないからである.これを取り去ると,尿道口が狭くなる副作用がおこることが多いからである.男児の場合このような排尿困難やたびたびおこる亀頭包皮炎がなければ,むやみに手術をすることは良くない.青年期,壮年期に,とくに40歳代に,排尿困難を訴えて来院する方が良くある.これらの多くの方を良く調べてみると,前立腺肥大症はなく,外括約筋の緊張が亢進していることが多いようである.その場合,尿線は細く,残尿感があり,尿が中断したりするが,残尿は全くないのが普通である.膀胱鏡検査でも異常がなく,外括約筋の抵抗が高まっている.原因は,はっきりしないが,精神的緊張,社会的ストレス,環境などによるようである.精神安定剤がかなり効果を奏する.50歳を過ぎると,膀胱頸部硬化症がおこってくる,外国では,30歳代から少しくみられるが,やはり50歳を過ぎると,急にふえるようである.これは前立腺がそれ程直腸内触診で大きくなく,しかも排尿困難を示し,徐々に残尿も出てくる.この病気は,膀胱鏡的にみると,膀胱頸部が狭くなっており,また排尿の時に動きが悪く,膀胱の入口が充分に開かない.そのために,排尿困難がおこる.この原因はまだはっきりしないが,外国での研究では,前立腺の中に精液の欝滞がよくおこり,前立腺に浮腫をきたし,それが徐々に線維化をきたして狭くなるようである.また外国ならびにわが国の解剖的な研究によれば,前立腺肥大症の蟻小型で,やはり前立腺の小さな腺腫がその狭くしている組織の中にかなりの部分を占めてみられる.このように50歳代からおこる排尿困難には膀胱頸部の疾患が多いが,60歳よりあとになると,いわゆる前立腺肥大症や,とくにその媛小型からくる膀胱頸部硬化症が非常に多くみられる.以上のように,機械的の原因による排尿困難を英語で,Mechanical obstructionという.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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