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今月の主題 最近の老人病—臨床とその特異性 老人における非定型的徴候
糖尿病
著者: 後藤由夫1 工藤幹彦1
所属機関: 1弘前大第3内科
ページ範囲:P.2056 - P.2057
文献購入ページに移動糖尿病の頻度,また血糖の平均値が年齢とともに高くなるのはよく知られた事実である.しかしその理由となると,必ずしも明解な解答は与えられていない.筆者らは20代の健常者と,70歳以後の高齢者のうち空腹時血糖値が90mg/dl以下の症例について静脈内ブドウ糖負荷試験を行なって,血漿インスリンの増加を比較してみた,この際,負荷後の血糖の上昇度も若年者と同程度のものだけを選んで比較したのであるが,図1に示すように,血糖は30分以後で高齢者に有意に高いのがみられた.一方インスリンは血糖曲線がほぼ重なっているとみられる20分までの間でも,若年者に較べて有意に低いのがみられた.すなわち高齢者では,高血糖に対するインスリン反応の低いのが1つの理由と思われる.またラットを用いて高齢群と若年群の脂肪組織や横隔膜筋肉のin vitroでのグルコースのとり込みを比較してみると,高齢ラットではグルコースのとり込みが少ないのがみられる1)。すなわち組織の糖代謝速度の低下も1つの理由と思われる.そしてこれを規定しているものの1つとしては,細胞内に貯蔵物質(例えばトリグリセライドやグリコーゲン)が多いことが考えられる.
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