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—ルネ・デュボス著 木原弘二訳—人間と適応—生物学と医療
著者: 牛場大蔵1
所属機関: 1慶大・微生物学
ページ範囲:P.797 - P.797
文献購入ページに移動「人」の本性をえぐる
かねてから宿主・寄生体関係や腸内フローラに深い興味をもってきたルネ・デュボスが,「人」の探求を目指して苦悩し,該博な知識を駆使して一つの終着的考察に達したのが,本書の原本"Man Adapting"である.
本書のテーマは,健康か病気かは環境からのチャレンジに適応する努力において,生物が成功したか否かという点に設定された.しかし人間が人間として存在するゆえんは,その秀れた適応力にあることはたしかでありながら,その能力のゆえにまた,破壊的な条件や習慣にも順応できるという矛盾,過去に人間が進化の過程でえたと自負する技術的,医学的な進歩にもかかわらず,人はあくまで"earthy"であり,大地との接触を失ったならば,その強さも消失する,という矛盾にデュボスはジレンマを感じたにちがいない.
かねてから宿主・寄生体関係や腸内フローラに深い興味をもってきたルネ・デュボスが,「人」の探求を目指して苦悩し,該博な知識を駆使して一つの終着的考察に達したのが,本書の原本"Man Adapting"である.
本書のテーマは,健康か病気かは環境からのチャレンジに適応する努力において,生物が成功したか否かという点に設定された.しかし人間が人間として存在するゆえんは,その秀れた適応力にあることはたしかでありながら,その能力のゆえにまた,破壊的な条件や習慣にも順応できるという矛盾,過去に人間が進化の過程でえたと自負する技術的,医学的な進歩にもかかわらず,人はあくまで"earthy"であり,大地との接触を失ったならば,その強さも消失する,という矛盾にデュボスはジレンマを感じたにちがいない.
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