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文献詳細

雑誌文献

medicina10巻7号

1973年07月発行

今月の主題 化学療法剤—現状とその使い方

化学療法剤の選び方・原因菌不明の場合

腸管感染症

著者: 今川八束1

所属機関: 1東京都立墨東病院・伝染科

ページ範囲:P.844 - P.845

文献概要

 腸管感染症の本態は複雑であり1),これを厳密に定義することは困難であるが,一応ここでは腸管にもともと器質的な病変がなく,原発的に腸管内へ病原微生物が侵入し,増殖することが主因となって発症したもの―その主要臨床症状は,発熱,腹痛,病的分泌物を伴った下痢--に限りたい.したがって,憩室炎,潰瘍性大腸炎等や,チフス性疾患は除外する.
 腸管感染症の病因となり得べき病原体としては,赤痢菌(R),サルモネラ(Sal),腸炎ビブリオ(Vib),病原大腸菌(P-C),が最も普通であるが,近年はエルシニア(Y.ent.)がこれに加わった2)-7).さらにブドウ球菌,ボツリヌス,ウェルシュ菌,アリゾナ等の細菌や,赤痢アメーバ,ウィルス等が知られているが,ブ菌以下の細菌はもっぱら食中毒による集団発生がその大多数を占め,散発例は極めて稀である8).ウィルスについても同様で,我国では伝染性下痢症や茂原下痢症が知られている.またコクサッキー,エコー等のウィルスによる下痢症の存在も明らかであるが8),散発例の頻度についてはほとんど不明である9).もっともこれらウィルスの場合は,一部集団発生の場合にのみ検査対象となされ,すべての場合に及んでいないのが現状である.したがって,原因菌不明という場合,ウィルスをも含めて全く未知の病原体によるものか,あるいは検査不充分のために一見不明にみえるのかは極めてむずかしい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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