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今月の主題 新しい臓器相関のとらえ方 臓器相関からみた症候群
肝と消化管—とくに静脈瘤について
著者: 川井啓市1 多田正大2
所属機関: 1京府医大公衆衛生学 2京府医大・第3内科
ページ範囲:P.56 - P.57
文献購入ページに移動従来,臨床医学の成り立ちは,主として形態学に裏付けられた病理学を基礎として発展してきたが,単に形態学的な面のみでとらえられていた疾患の病態生理も,次第に形態と機能の相関,あるいは臓器相互の相関の面からも解明が試みられつつある.このような関係は肝と消化管の間でも同様で,これらの診断と治療にあたっては,常に他の臓器の病態生理の把握に十分注意せねばならない1).また肝疾患と消化管疾患では,きわめて類似した自覚症状,すなわち全身倦怠感,悪心,嘔吐,腹部膨満感,不快感,便通異常などを訴えることが多く,その鑑別診断上,またお互いの疾患をよく把握するためにも両疾患を切り離して考えることはできない.
すなわち,肝疾患時における消化管の機能異常は臨床上しばしば経験される症候の1つで,その発生機序については現段階でも必ずしも明確に結論づけられていない点も多いが,胃液分泌機能の低下,腸管運動の低下,脂溶性ビタミン(A,D,E,K)やカルシウムの吸収障害などがあげられる.また低蛋白血症が関与して腸管粘膜に浮腫もみられることもあるし,肝炎の初期あるいは閉塞性黄疸では無胆汁性の粘土様灰白色便がみられ,また脂肪酸の吸収障害によって便中の脂肪成分の増加もみられるのである.
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