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雑誌目次

雑誌文献

medicina11巻5号

1974年05月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床心電図のキーポイント

日本における臨床心電図発展の回顧

著者: 木村登

ページ範囲:P.570 - P.571

 日本に心電計が上陸したのは1911年である.その年は日本式にいえば,明治44年でくしくも私の生まれた年,2台のエーデルマンの心電計が日本にはこび込まれて,1台は東京帝国大学医学部の,1台は京都帝国大学福岡医科大学(後の九州帝国大学医学部)の生理学教室(橋田教授および石原教授)に設置された.したがって,日本の心電図の歴史はその年にさかのぼることになる.

臨床心電図判読上の問題点

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.572 - P.573

 Einthoven(1903)により出発した標準肢誘導法からWilson(1944),ついでGoldbergerにょる単極肢・胸部誘導法への進歩は,ベクトル心電図の解析法に伴われて,臨床心電図学を急速に発展させた.
 心電図学への入門が,戦前または戦後間もなくの古典心電図学時代であった臨床家と,過去10年位の近代心電図学の時代であった臨床家との間には,心電図判読法にかなりの差があるように思われる.つまり,古い心電図学で基礎づけられた臨床家は,変化する心電図学に即応して心電図判読法を改めることを怠ったために,はなはだしい誤読がなされる場合が少なくない.戦後は日本においても心電図の基礎的並びに臨床的研究がかなり広くなされるようになったが,近年の目だった心電計の実地医家への普及の割には,これが必ずしも正しく利用されていない感じを筆者はもつのである.

見逃がしやすい心電図所見

高位後壁硬塞

著者: 杉浦昌也

ページ範囲:P.574 - P.577

 心電図診断のむずかしい心筋硬塞は①小型硬塞(面積的に),②心内膜下硬塞(非貫壁性の点で),③側壁,高位後壁硬塞(心臓の部位的に)などである1).主題の"見逃がしやすい"という言葉は心電図所見があるのだが些細な変化だから見逃がされるという意味にとれるが,実際には高位後壁硬塞の診断は容易ではない.ここではしたがって"診断困難な"という方が本当であろう.

WPW症候群

著者: 松尾修三 ,   橋場邦武

ページ範囲:P.578 - P.583

 短いPR間隔と異常な幅広いQRSをもつ心電図で,ときに発作性頻拍をきたす例が1930年最初に報告されて以来1),これはWPW症候群あるいはPre-excitation Syndromeとして今日まで数多くの症例,研究が報告されてきている2〜5).ことに近年,Kent束以外にMahaim束,James線維などによる副伝導路があることがわかり,いわゆる典型的なWPW症候群以外の心電図の解明にもより多くの発展がみられてきた6).それとともに,その分類も変わりつつあるが,近年,Durrerら7)はPre-excitation Syndromeを心電図上,次のように分類している.
 1)"classic" WPW症候群(A型とB型)1)
 これはPR間隔<0.12秒,Δ波をもち,QRSの幅>0.12秒のもの

Coronary sinus rhythm

著者: 水野康

ページ範囲:P.584 - P.588

 心臓の調律は正常では洞結節で歩調取りが行なわれているが,洞結節の機能が抑制されたり,消失したときには,下位の自動中枢が働き出す.心房または房室結節が通常潜在性pace makerとしてこの役目を果たすが,心電図の波形からpace makerの部位を判定することは必ずしも容易ではない、従来は第2の歩調取りとして房室結節があげられ,QRS群が正常洞調律時とほぼ同じで,陰性P(逆行性P)がQRS群の直前(PQ時間は0.12秒以下)にあれば房室結節上部(upper),QRS群と重なれば中部(middle),QRS群の後にあらわれるときは下部(lower)の自動能により調律が起こっているとされ,房室結節調律(A-V nodal rhythm)と呼ばれていた.しかし,その後微小電極法の発達などで実験的にpacemakerの部位が詳細に検討されるようになり,房室結節そのものは自動能はほとんどなく,心房の下部か,His束以下の特殊筋系が歩調取りとなる可能性の方が大きいとされてきた.したがって,QRS群の前に陰性Pないし変形したPのみられる調律は房室結節よりも心房から発生した刺激による調律であるとみなされ,II,III,aVFで陰性Pがみられるものはすべて心房性調律(atrial rhythm)と総称する方が適当であると考えられるようになった.

見誤りやすい心電図所見

心筋硬塞と特発性肥厚性心筋症

著者: 金沢知博 ,   三浦傳 ,   佐藤孝雄

ページ範囲:P.590 - P.593

 特発性肥厚性心筋症は通常心室壁(ことに左室)が肥厚しているが内腔閉塞のない非閉塞型と,左室壁とともに室中隔の肥厚がとくに著明で左室流出路の狭窄をきたす型(Idiopathic Hypertrophic Subaortic Stenosis;IHSS)で代表される閉塞型に分けられる.いずれも心電図上高度の左室肥大所見を呈するが,弁膜疾患や高血圧心などにみられる肥大所見と少なからず傾向を異にし,異常Q波や高度のST-T異常など心筋硬塞類似の所見を伴うことが多く,心電図所見のみからではそれらを鑑別することに困難を感ずる例が少なくない.
 以下症例を示し,少しく解説を加える.

冠不全と低K血症

著者: 和田敬

ページ範囲:P.594 - P.597

 心電図は心筋の興奮過程ならびにその復旧過程を表わしているものである.そして,心筋に各種の障害が起こると,部位によって多少の相違こそあれ,まず復旧過程に変化をきたすことはすでに知られている.いま,心室壁の興奮・復旧過程を見ると,前者はQRS群であり,後者はT波に相当する.したがって,虚血性心臓病を問わず,心筋に障害が起きるとT波が最初に変化するわけである.

上室頻拍と心室頻拍

著者: 稲坂暢 ,   杉本恒明

ページ範囲:P.598 - P.602

 発作性の上室頻拍と心室頻拍は,予後や治療の上で大きく異なっており,両者の鑑別はきわめて重要である.鑑別には,通常心電図によらねばならないが,それでもはなはだ困難な場合がある.とくに発作性心室頻拍の確診は,ときに不可能のことすらある.したがって,実際の臨床では可能性の強い方を考え,診療を進めていくことになろう.ここでは,両頻拍発作の心電図上の特徴を説明し,また両者を鑑別する上で参考になる点についても触れたい.

ベクトル心電図はどこがすぐれているか

心室肥大

著者: 伊東貞三 ,   立山和美

ページ範囲:P.603 - P.608

 今回の主題は心室肥大に限られ,しかも心電図では発見できない何物かをベクトル心電図に求めることのようである,心電図およびベクトル心電図の優劣を決定する際に,左室肥大に関しては一般に学者によって意見がまちまちであるので,今回は主として右心室の肥大に問題を限定して多少の私見を述べさせていただくことにする.
 そもそもベクトル心電図の臨床的応用に際して,最も価値のある研究はGrishman誘導法による右室肥大と右脚ブロックとの判別の問題であった.その後各種誘導法の発展とともに,今日ではわが国はじめ多くの国々においてcorrected orthogonal systemであるFrank誘導法が用いられるようになった.誘導法が異なってもGrlshmanの提唱した考えには大きな狂いはないように思える.すなわち,右室肥大の判別にベクトル心電図は価値ある役割を果たしているようである.そこで,これからFrank誘導法を用いたベクトル心電図について,それが右室肥大の際にどのようなpatternを示し,どのように臨床に役立つかを筆者らのささやかな経験を通して症例とともにお見せしようと思う.

心筋硬塞

著者: 春見建一

ページ範囲:P.609 - P.613

 ベクトル心電図が12誘導心電図に比較してすぐれているとすれば次の3点であろう.
 1)ベクトル心電計は周波数特性がよく,少なくとも500Herz以上平坦に記録できる.熱書式の12誘導心電図では50Herzまでぐらいが平坦であるのみで,ベクトル心電図はより微細な変化を判定し得る.

脚ブロック

著者: 戸山靖一 ,   鈴木恵子

ページ範囲:P.614 - P.618

 脚ブロック,すなわち右脚ブロック,左脚ブロック,両脚ブロックのうち,ベクトル心電図の利点についてのべる.

心電図所見からみた救急処置

抗不整脈剤の投与が必要なとき

著者: 赤染悌三

ページ範囲:P.619 - P.625

 心室性期外収縮は臨床医が最も数多く遭遇する不整脈の1つであり,健康な心臓にみられる,無害で放置しておいてよいものから,心室性頻拍さらに心室細動と,致死的な頻脈性不整脈へ移行する危険のあるものまでさまざまである.心電図上では次の所見に注意する.
 1)R on T;期外収縮のR波が先行の心拍のT波の頂点近くにみられるとき

DCショックの必要なとき

著者: 町井潔

ページ範囲:P.626 - P.631

 DCショックは1962年Lownによって提唱されて以来,約10年,今日では上室性および心室性の頻脈性不整脈の治療にとって必要不可欠のものとなっている.このような不整脈をみたばあい,DCショックを選ぶか,薬物治療を選ぶかを決定するためには,不整脈発生機序や,種類,治療効果についての広汎な知識と,迅速適確な判断を必要とする.
 3分以上放置すれば確実に死亡する心室細動にDCショックが絶対的なことは常識である.また心拍出量の著明な減少を伴う頻脈を速やかに元に戻す必要のあることはいうまでもない.しかしながら,慢性に経過した心房細動の除細動については種々の考慮が必要である.

人工ペーシングの必要なとき

著者: 五十嵐正男

ページ範囲:P.632 - P.635

 現在,人工ペーシングが必要と考えられている状態は次の3つがあげられる.
 1)失神発作を伴うすべての徐脈性不整脈,たとえば,

この心電図からなにがわかるか

この心電図からなにがわかるか

著者: 中村芳郎 ,   楠川禮造 ,   森博愛 ,   岸本道太 ,   小林亨 ,   前田如矢

ページ範囲:P.637 - P.647

 主 訴 2年前に息切れあり,心疾患と高血圧症といわれたとのことである.1年半後浮腫,全身倦怠をきたし,このときは血圧は110/70程度.Digitoxin,利尿剤を併用して浮腫は軽快している.心肥大は存していた.その後著明な貧血,体動時の息切れがあり輸血の目的で入院した患者の心電図である.
 心電図所見 洞性脈で心拍数約82.P波形はV1にて陰性成分がやや目立つ.PQ時間0.22秒.QRS間隔は約0.15秒.I,aVL,V5,6にq波がなく,V4,5,6でS波が幅広い—前額面では著明な左軸偏位がある.

グラフ X線造影のみかた 消化管・2

著者: 白壁彦夫 ,   早川尚男 ,   鎗田正

ページ範囲:P.648 - P.655

 胃X線検査のまとめを総論的にのべると次のようである.
 1.病変を隆起するものと陥凹を示すものの2つに分けて考えると診断や所見を取り扱いやすい.

カラーグラフ 臨床医のための病理学

XIV.脳腫瘍(1)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.658 - P.659

 脳腫瘍は決して少ない病気ではなく,脳外科の発達した今日,かなりclose・UPされてきた疾患である.
 脳腫瘍は実質から発生するgliomaと髄膜から発生する髄膜腫に大別することができる,gliomaで最も多いのはastrocytomaでastrogliaの腫瘍化である,細胞の異型性により1度から4度までに分類する.

ベクトル心電図講座・5

後下壁硬塞

著者: 石川恭三

ページ範囲:P.662 - P.667

 後下壁硬塞の発生により,その部位における後下方に向かう心起電力ベクトルが失われると,QRSの初期部分は大きく上方に偏位することになります.この所見に基づいて次のようなループ表示におけるcriteriaが提唱されています.
 1)0.03秒ベクトル(あるいは0.02秒ベクトル)がE点より上方に存在すること(図1).

アルコールによる臓器障害・5

アルコールと膵臓

著者: 石井裕正 ,   村岡松生 ,   荒井正夫

ページ範囲:P.668 - P.672

 アルコールの過飲が,胆石症とともに膵炎の2大原因の一つとして重視されていることは周知の事実である.すでに1878年,Friedreich1)はアルコールによって起こってくる膵障害を"drunkard's Pancreas"として注目し,続いてFitz2)(1889年)も急性膵炎の考察においてアルコールと膵炎との関係を確認している.それ以来,アルコールに起因すると考えられる膵炎の頻度はアルコール中毒患者の増加と軌を一にし,また,その臨床経過が胆石症を原因とする膵炎とは異なることも注目され,その発生機序に関しても多くの研究者により次第に明らかにされつつあるが,すでに述べてきた3,4)アルコールと肝臓との関係に比べて,不明な点がまだ多いのが現状である.
 本稿では,アルコール性膵炎の発生機序,およびその臨床的事項につき最近の知見をとりいれつつ考察を加える.

医学英語へのアプローチ・2

MEDICAL INTERVIEWING

著者: 高階経和

ページ範囲:P.675 - P.675

 今回は,患者の病歴のとり方をつぎの3点を念頭において聞くことに致します.
 1.積極的質問 active listening

図解病態のしくみ

神経5.脊髄障害

著者: 本多虔夫

ページ範囲:P.676 - P.677

 脊髄は中枢神経系に属するものではあるが,頭蓋外に位置するという点で「脳」とは別個に扱われることが多い.しかし基本的にその形態および機能は,「脳」と異なるものではなく,灰白質と白質から成り,前者は脊髄反射などの「中枢」として働いており,後者は各種の刺激を伝える伝導路として機能している.すぐ上に続いている脳幹と多くの点で類似しているのは当然であるが,灰白質と白質はより明瞭に区分されており,前者はH型をなし中心にかたまり,後者は周囲でそれをとり囲むように配列されている.このような構造の中で,臨床的にとくに重要なのは前角,側索,後索である.
 脊髄前角 脊髄前角には末梢神経内の運動線維の起源をなす大きな神経細胞が存在する.反対側の大脳半球から出た錐体路はこれら細胞に終わり,それによって伝えられた刺激はここから末梢運動ニューロンによって筋肉まで伝えられるわけで,これらの細胞は運動に関する重要な中断点をなしている.また腱が叩打された時に起こる刺激は末梢神経内の上行性線維により直接前角細胞に伝えられ,ここから運動線維により筋肉へ伝えられ,反射運動を起こす.したがって各腱反射には前角細胞が介在するので,その存在する脊髄節をその腱反射の中枢と呼ぶ.これら細胞の障害によっては運動麻痺(弛緩性),腱反射消失が起こり,さらに著明な筋萎縮,線維束性攣縮を伴うのが特長である.

検体の取り扱い方と検査成績

免疫学的妊娠反応

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.678 - P.679

 従来,HCGの測定は生物学的手法によってなされていたが,現在は簡易性,既時性および再現性のいずれの点においてもすぐれている免疫学的方法が主に使われている.HCGの免疫学的測定法としては間接凝集反応(passive agglutination)またはその阻止反応(passive agglutination inhibtion)というきわめて一般的な血清学的反応術式が用いられており,その反応原理を利用した多くの試薬が製造市販されている。表1にその主なものを方法別に分類列記してみた.
 ところでこれらの試薬による免疫学的妊娠反応は妊娠尿のすべてで陽性反応を示すとはかぎらず,方法によって若干のちがいはあるが,0.5〜5%の疑陰性反応がみられる.また,非妊娠女子尿あるいは男子尿の検索でも1〜2%の疑陽性反応が観察されている.このような疑陽性または疑陰性反応をおこす原因としては,

くすりの副作用

フェナセチンの腎障害

著者: 清原迪夫

ページ範囲:P.680 - P.681

 鎮痛剤の乱用による腎障害が注目されてから十数年を経過し,その間,各国においては報告数も増加しているが,わが国ではその症例報告数も少ない.

小児の処置

酸素吸入

著者: 小川雄之亮

ページ範囲:P.682 - P.683

 小児,とくに幼若児は緊急の酸素投与を必要とすることが多い.酸素投与により,臨床症状が劇的に改善される場合のあることは日常の診療においてよく経験するところである。酸素吸入はlifesavingである場合のある反面,酸素の持つ毒性のゆえに酸素吸入による副作用の発現する可能性をも秘めている.したがって酸素投与は決して安易に行なうべきではなく,患児の酸素不足の状態を適確に把握した上で,酸素の毒性に充分留意しつつ,慎重に行なうべきである.

小児緊急室

頭部打撲

著者: 吉田全次

ページ範囲:P.684 - P.685

 小児は年少なほど,体に比して頭が大きく,また乳幼児期には,寝たままよりお坐り,つかまり立ち,1人歩きへの発達過程にあり,運動および平衡をとることが未熟のため,転倒,墜落などによる頭部打撲(以下打撲)の機会が多い、年長幼児より学童期になると活溌に運動するため,遊び場,運動場などにおける事故,交通事故などによる症例がみられるようになるが,頻度は減る.
 打撲の程度によって,何らの障害のないもの,単純な頭皮腫瘤を認めるもの,頭皮または骨にのみ損傷をみるもの,脳振盪,脳挫傷,頭蓋内出血を生ずるものなどがある.

婦人の診察

婦人とはきけ

著者: 橋口精範

ページ範囲:P.686 - P.687

 婦人を診察する場合,はきけがあるようなときにはなにを考えたらよいか.産科婦人科領域から考えられるものについてのべてみる.
 大別すると,妊娠初期のつわりの一症状としてみられるもの,経口避妊薬などの薬剤を服用中などの場合をあげることができる.

オスラー博士の生涯・19

欧州旅行からの便り—1890

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.689 - P.692

オスラーはジョンス・ホプキンス病院に赴任の翌年,1890年の5月から7月まで第3回目の欧州旅行をしたが,この間の欧州の諸大学の見学記を,留守をしてくれているジョンス・ホプキンス病院の5名の内科レジデントたちに旅先からそれぞれに手紙で送っている(原著:「わが病院勤務医たちへの便り」―Selected Writings of Sir W. Osler 1951 Oxford Univ. Pressより)
 以下は,その中の2つの手紙である.この資料から当時のドイツ医学をオスラーがどう受けとめ,それをアメリカでの医学教育にどう取り入れようとしたかがよく伺われる.

病院訪問

困窮している地域医療の象徴—「ある地方医の手紙」でお馴染みの穴澤咊光先生を訪ねて

著者: 編集室

ページ範囲:P.693 - P.696

 「ある地方医の手紙」を読まれた読者の方々は,ユーモラスな文章の中に,時として,孤軍奮闘している穴澤先生の悲哀が漂っているのを感じとられていることと思う、そしてその悲哀の中に,毎日の診療に多忙をきわめておられるご自分の姿を見出され,非常なる共感と親近感を覚えておられる方も多いのではないだろうか.
 そこで編集室では,誌上にて先生を紹介すべく,雪の会津若松を訪れて,一問一答を試みた.

洋書紹介

—G. Onestid K. E. Kim著—「Hypertension;Mechanisms & Management」

著者: 村尾覚

ページ範囲:P.588 - P.588

高血圧に関する新知見を網羅
 Hahnemann Symposiumというシリーズ書は既発表の論文内容を原著者が要約解説を加えたものを系統的に並べたものであるので,その方面の最前線の専門家にとっては特に新しい知見がもられているわけではないが,系統的体載の上に,新旧とりまぜた重要な仕事をちりばめてあるので,本シリーズでは,いずれも,専門家にとっては知識の整理の上に役立ち,また,それぞれの方面をこれから深く学ぼうとする人にとっても便利な書物である.
 高血圧症に関するHahnemann Symposiumは1959年,1961年に出版され,今回の第3回目が本書である.国際的に有名な143名の研究者が参加し,902頁,10部,99章から成る本書は,高血圧症に関するほとんどすべての問題点を網羅している.第1部の「血圧測定法と高血圧症の定義」から始まり,第2部では体液量,電解質と血圧との関係の解析,本態性高血圧症の循環動態の特徴,血管反応性の問題が述べられている.第3部の「本態性高血圧症の遺伝的,疫学的および環境的因子」では,Framingham調査の結果も要約され,一方Na代謝が交感神経系機能に影響を及ぼすことも示されている.第4部では高血圧症における心機能の変化が,第5,第6部では,高血圧症の薬物療法について述べられている.ここでは,従来の降圧剤が再検討され,さらにβ受容体遮断剤,guancydine,clonidine,prazosin等の新しい降圧剤にもふれている.第7部の「副腎性高血圧症」および第8部の「腎性高血圧症」では,高血圧症の成因に関連した多くの報告がみられる,本態性高血圧症と鉱質ステロイドホルモンとの関係は明らかではないが,aldosteroneあるいは18-OH-DOCの分泌増加または代謝異常の存在が指摘されており,またある種の遺伝性高血圧ラットにおいても,鉱質ステロイドホルモン代謝異常が認められるという.腎性昇圧機序としてreninangiotensin系は重要であるが,一方,腎髄質は抗高血圧作用を有する可能性が示唆されている.第9,第10部では高血圧症と妊娠あるいは経口避妊薬との関係,および高血圧治療上の特殊な問題として頸動脈洞神経刺激による降圧療法,内臓神経切断の影響,褐色細胞腫の治療指針等の問題が述べられている.また,二次性高血圧症の診断規準や薬物療法の実際的問題についても多くのスペースがさかれている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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