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文献詳細

雑誌文献

medicina11巻6号

1974年06月発行

ある地方医の手紙・23

「けんじょも喰いてい!」

著者: 穴澤咊光1

所属機関: 1穴澤病院

ページ範囲:P.822 - P.823

文献概要

W先生
 米国の病院で珍しく思ったものにpastoral careという制度があります.入院すれば誰もが不安と孤独に苛まれるのが人の世の常,そこで牧師さんが病人のベッドサイドを渡り歩いて患者の話相手になってやり,精神的慰めを与えるという,いかにもキリスト教国らしい発想による制度なのです.日本でも,このごろ,この制度を模倣しようとする動きがあるようですが,さてどんなものでしょうか?宗教に関心が薄く,仏教も神道も冠婚葬祭のためだけに存在しているような,わがエコノミックアニマルの経済「大」国の病人のベッドサイドを,坊さんが珠数をつまぐりながら渡り歩いたら一体どんな反応がおこるでしょうか?容易に想像できよう,というものです.たいていの患者は,「エンギでもない!俺の葬式の下準備にきたのか!俺は医者の世話にはなっているが,まだ坊主の厄介にはならん.とっとと出ていけ!」などと激怒するでしょうし,大体が看護婦にも十分な給料も払えず,十分な人数もそろえられない健保制度下の病院では,pastoral careなんてとても高嶺の花,法外なゼイタクとしかいいようがありません.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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