今月の主題 内科医に必要なバイオプシー
生検で何がわかるか
肝
著者:
安部井徹1
所属機関:
1東邦大・第2内科
ページ範囲:P.996 - P.997
文献購入ページに移動
今日では,肝生検の第1の目的が肝の組織学的検索にあるように考えられ,確かにこの目的で肝生検が行なわれることが多いが,1883年にPaulEhrlichがはじめて肝生検を行なったのは,面白いことに,糖尿病患者の肝のグリコーゲン量を知るためであった.次いで熱帯地方の肝膿瘍の診断に肝生検が盛んに行なわれたといわれる.したがって,肝生検で何がわかるかとなると,死後という限られた条件ではなく,あらゆる疾病の,あらゆる過程のある時点における,肝の病理組織学的,細菌学的,生化学的変化のすべてを把えることができるといっても過言ではないであろう.ただ,生検可能な状況に制限があり,採取される組織片の大きさに限りがあり,採取の回数にも限りがあるから,おのずから制限をうける.
今日一般に行なわれている肝生検の目的を大別すると,①黄疸患者における内科的および外科的黄疸の鑑別,②無黄疸性肝障害の診断,その中でとくに③肝細胞のびまん性変性疾患の診断,および④臨床研究における生検材料の応用の4つに分類することができる.さらに細菌学的検索や生化学的微量定量などをあげることができるであろう.