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文献詳細

雑誌文献

medicina12巻11号

1975年10月発行

文献概要

今月の主題 感染症としてのB型肝炎 HB抗原・抗体の臨床

慢性肝炎

著者: 鈴木宏1

所属機関: 1東大・第1内科

ページ範囲:P.1644 - P.1645

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 B型肝炎ウイルス(HBV)は他のウイルス感染症と異なり,ウイルスの持続感染のみみられることに特徴がある.しかも,HBVの持続感染者(carrier)すべてが肝障害を有しているわけでなく,無症候性のHBV carrierも数多く存在している.HBV carrierのうち,約10%が肝炎を発症していると考えられており,これがB型肝炎による慢性肝疾患のほとんどを占めている.HBVの持続感染の成立はわが国では胎児あるいは出産時の感染が大きな役割を占めており,この持続感染者のうち一部の者が,20歳以降に肝炎を発症し,慢性肝炎,肝硬変さらにヘパトームに進展すると考えられているが,肝炎発症の機序はまだ不明である.
 一方,乳・幼児期以降に感染し発症したもののほとんどはHBVの一過性の感染で,HBsAgの出現も一過性である.これは他のウイルス感染症と同じで,HBVの急性感染症ということがいえる.急性B型肝炎でHBsAgが一過性に出現した例はほとんど治癒し,HBs Agが持続的に出現する例に慢性化例の多いことはNielsenら1)の報告後,わが国でも同様の報告が多くみられる.したがって,B型肝炎の慢性化にはHBVの持続感染が大きな役割を果たしているのであって,HBVの感染が引き金となって,慢性肝炎が起こるとすることは考えがたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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