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文献詳細

雑誌文献

medicina12巻11号

1975年10月発行

文献概要

今月の主題 感染症としてのB型肝炎 HB抗原・抗体の臨床

細胞性免疫

著者: 伊藤憲一1 佐野万瑳寿1

所属機関: 1京大第2内科

ページ範囲:P.1660 - P.1661

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HB抗原に対する細胞性免疫とは
 HB抗原が感染性を有することは明らかであるが,HB抗原それ自身では直接的に肝細胞を破壊する作用はきわめて少なく,HB抗原が侵入し肝細胞破壊が惹起されるためにはHB抗原プラスαが必要である.現今ではプラスαとしてHB抗原とくにHBs抗原に対する血中抗体,あるいは細胞性抗体の介在が肝炎の発症や遷延に重要な役割を果たしているとの考えが有力である.
 もともと血中抗体にせよ,細胞性抗体にせよ,抗体の産生は病原体の排除のために存在する生体の防御機構である.病原体,とくにウイルスを排除するためには,まず病原体を含む細胞を破壊させ,病原体を血中に遊出せしめて,しかる後に病原体の排除に努めるという防御の機序が働く.HB抗原陽性の際はまず細胞性免疫が作動して,HB抗原を含む肝細胞を破壊せしめ,血中に遊出したHB抗原を血中抗体が処理すると考えると理解しやすい.したがって,HB抗原を体内から排除するためには,まず細胞性抗体が働かねばならない.しかし,HB抗原が侵入してもこれを排除しようとする免疫能が働かなければ,HB抗原は長期間体内に存在するが,短時日内には肝障害は惹起されない.そのかわりHB抗原の有する弱い細胞障害作用によって長年月の間には肝障害が惹起されていく.逆にHB抗原を排除しようとする免疫能が強ければ急性の肝細胞壊死を伴う.またウイルスに限らず何かの原因で肝障害が惹起されると,ある条件下,おそらくは遺伝体質的な素因が存する時,障害された肝組織の異種蛋白に対する細胞性抗体を生じ,自己免疫性の機序が介在するようになる.このように免疫能の状態によって種々の肝病変が成立する.ここではHB抗原に対する細胞性免疫について述べることにする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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