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文献詳細

雑誌文献

medicina12巻4号

1975年03月発行

文献概要

特集 これだけは知っておきたい検査のポイント I.尿検査

尿比重

著者: 浦壁重治1

所属機関: 1阪大第1内科

ページ範囲:P.400 - P.401

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異常値を示す疾患
 尿比重の高低を判断する場合に,その検体が,①24時間尿の一部か,②来院時などの随時尿であるか,③濃縮希釈試験施行時の尿の一部であるか,によってその基準が異なる.表では24時間蓄尿の尿量と尿比重を対比させながら疾患,病態別に尿比重の読み方のポイントを示した、尿量が正常領域か,それより少ないか,多いかによって尿比重(高張,等張,低張)を適確に読み分ける必要がある.
 健常成人が普通の食事・飲水をしている場合には,24時間尿の比重は,おおよそ1.015付近で,尿量は1,500ml前後である.これに対して,経口摂取不能なために生じた水分欠乏型脱水症では,その進行とともに尿量が減少し,やがて乏尿となり尿比重は1.030以上を示すようになる,これは水分を保持しようとする抗利尿ホルモン(ADH)の分泌と,その支配下にある腎臓のネフロンの生理的機能にもとづくものである.もしADH分泌機能に障害があれば(下垂体性尿崩症),水の必要注とは無関係に低張多尿となる.また腎臓自身に障害があっても異常を生じる,その1つは,尿量の如何を問わず等張尿しか排泄できない場合で(濃縮能・希釈尿ともに障害),腎不全極期ないし末期(乏尿を伴う),腎不全多尿期がこれに当たる.もう1つは,濃縮能のみがおかされるために多尿傾向と低張尿を示す場合で,慢性腎盂腎炎・カリウム欠乏腎症(たとえば,原発性アルドステロン症)・腎硬化症・腎石灰沈着症などが挙げられる.一般にアシドーシスあるいはアルカローシスのとき,血液pHを反映して尿は酸性あるいはアルカリ性を示すが,これはアシドーシス,アルカローシスの初期や非代償期にみられ,代償期に入るとこのような関係はみられなくなる.尿pHはアシドーシスの場合4.5〜5.2,アルカローシスの場合7.0〜7.9の間の値を示すことが多く,4以下あるいは8以上となることは少ない.尿pHはほとんど生理的変動範囲内の値にとどまる.また,腎尿細管性アシドーシスやダイァモックスの過剰投与時はアシドーシスを示すにもかかわらず,腎尿細管からHイオン排泄が十分におこなわれないため,アルカリ性尿が排泄される.アルカローシス(とくに代謝性)が長く続くとK欠乏を生じ,またアルドステロン症やDOCA投与によるK喪失があると,酸性尿となる(para-doxical aciduria).これは腎尿細管上皮細胞内でHイオンとKイオンが競合的にNa再吸収と共役しているために起こる現象である,また全身性疾患とは別に尿路感染症のとき,とくに原因菌がプロテウス属などの尿素分解菌による場合はアルカリ性尿が排泄されることがある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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