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文献詳細

雑誌文献

medicina12巻4号

1975年03月発行

文献概要

特集 これだけは知っておきたい検査のポイント VIII.血液化学検査

尿素窒素

著者: 林康之1

所属機関: 1順大臨床病理

ページ範囲:P.572 - P.573

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異常値を示す疾患
 血清尿素窒素の上昇(低下)する疾患を表に示した.高齢者の腎動脈硬化症による高窒素血症は正常値上限(20mg/dl)をわずかに越える程度(20〜35mg/dl)のまま変動していることが多い.逆に乳幼児,ことに10歳以下の腎炎では尿素窒素の上昇は頻度が低い.小児科領域での急性腎炎は尿素窒素より尿所見の推移が経過観察の目的には適しているといえるにの年齢により尿素窒素の上昇頻度が同じ腎障害であっても異なる点は注意する必要がある.尿素窒素の上昇は基本的に機能するネフロンの数と,体内合成尿素量とのバランスであり,ネフロンの機能が低下しても生成尿素量が比較的少なければ血中停滞は起こらない.この状態が小児であり,成人の場合はこの逆であると考えることができよう.したがって,成人,ことに高齢者ではわずかな腎障害でも上昇する頻度は高い.また,大手術後はしはしば尿素窒素の上昇をきたすが,上腹部臓器の手術後にみられる高窒素血症は単なる腎機能低下のみではなく,蛋白異化の亢進もかなり大きな原因となっている.膵壊死や上腹部膿瘍,縫合不全などにみられる高窒素血症は腎機能不全と考えられる他の所見がなくとも100mg/dl前後の値を示し得るのである.逆に蛋白同化の亢進は異常低値を示すことになる.表に腎炎またはネフローゼ症候群と同じく扱うべきものを示したが,中毒による腎障害も忘れてはならない.有機リン,水銀,クロミウム,フェナセチン,サルファ剤ほか抗生物質その他投与薬剤にも注意を向ける必要がある,ほかにエリテマトーデス,結節性動脈周囲炎,強皮症など膠原病による腎血管変化に伴うもの,腎血栓,凝固異常などでも当然高窒素血症は起こる場合がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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