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今月の主題 糖尿病への新たなる対処 合併症に関する新知見
細小血管症—その生化学
著者: 河村真人1
所属機関: 1慈恵医大・第4内科
ページ範囲:P.746 - P.750
文献購入ページに移動糖尿病性細小血管症は全身の毛細管にみられる病変であり,組織化学的にはPAS陽性物質の増量による毛細管壁の肥厚,電顕的には毛細管基底膜の肥厚であるとする考えが一般的である.しかしこの概念には問題がないわけではない.網膜のmicroaneurysmaの壁は肥厚していないという報告も多いし,最も特異的であるとされている腎糸球体の結節性病変はメサンギウムに局在し,これが基底膜物質の増加によって形成されるものかどうかは未だ明らかではない.すなわち,Osterby1)は電顕で,メサンギウムに増加している基底膜様物質と毛細管基底膜が連続していることを示し,Vracko2)も両者の連続を認めていることから,組織化学的にも性状の類似している両者は同一のものであり,結節性病変の多くの部分は基底膜物質から形成されていると考えられる.
一方Scheinmanら3)は,免疫組織化学的方法による研究で,糖尿病性糸球体硬化症では,肥厚した基底膜は抗基底膜抗体および抗コラーゲン抗体により染色されるが,拡大したメサンギウムは,抗アクトミオシン抗体により染色されることから,メサンギウムに増量している物質は基底膜とは異なるもので,収縮蛋白としての機能を喪失したアクトミオシンの変性物質であろうと述べている.しかし,結節性病変はいずれの抗体によっても染色されないとしており,結節性病変の成因については疑問が残されている.
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