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文献詳細

雑誌文献

medicina12巻5号

1975年04月発行

今月の主題 糖尿病への新たなる対処

知っておきたい合併症

神経因性膀胱

著者: 藤原昇1

所属機関: 1浜の町病院・内科

ページ範囲:P.768 - P.769

文献概要

 糖尿病患者で自然排尿が停止したとき,各種の原因による神経損傷,局所性尿路疾患による場合を除けば,糖尿病性神経因性膀胱が想起される.いうまでもなく糖尿病性神経障害は糖尿病患者の大多数に何らかの異常を示し,多彩な症状,中でも自律神経症候を伴いやすいところに特徴があるが,これに基づく膀胱機能障害を糖尿病性神経因性膀胱と呼び,Cord bladder,Atonic bladderの別名がある.Marchal de Calvi(1864)により初めて記述されたといわれ1),その頻度は糖尿病者の1〜2%に過ぎず,比較的稀な合併症と考えられてきた.ところが何らかの排尿障害を訴えるものは意外に多く,末梢神経障害をもつ糖尿病患者で83%に膀胱機能低下を認めた報告2)もあり,潜在性異常は相当な数に達するものと推測される.
 神経組織学的には実験糖尿病で下腹・骨盤神経のみならず,腰・仙髄に脱髄変性を認めており3),その病因については古くから血管障害あるいは代謝異常などが考察されているが,未だ明確でなく,ストレスに求めるものもある,本症が糖尿病の初発症状であったとする報告もあるが,一般に罹病期間の長いものほど他の神経障害を含めて高率に出現し,代謝の破綻が顕症化の誘因となる症例が多くみられるのは事実であり,網膜症・腎症を合併しやすいことも病因解明の手がかりとして考慮されるべきであろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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