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雑誌目次

雑誌文献

medicina12巻6号

1975年05月発行

雑誌目次

今月の主題 出血傾向の新知識

出血傾向の最近の動向

著者: 松岡松三

ページ範囲:P.886 - P.887

 出血傾向に関する最近の動向について,今後の研究の方向を示唆していると思われるいくつかをとりあげて,その概略を述べてみたい.

出血と止血のしくみ

止血における血管のはたらき

著者: 長谷川弥人 ,   安藤泰彦 ,   村木宏行

ページ範囲:P.888 - P.889

 止血,血栓形成において血液成分.とくに血小板,血漿凝固因子が主役を演ずることはいうまでもないが,これらの成分と相互作用を営む血管壁の役割もこれらに劣らず重要である.ここでは血管壁の構成成分を列挙し,それらが止血,血栓,血液凝固,線溶において果たす役割を簡単に述べる.

血液凝固のしくみ

著者: 福武勝博 ,   伊藤多紀

ページ範囲:P.890 - P.892

はじめに
 凝血の機序については古くはMorawitz(1904)がいわゆる古典的凝血論を発表しているが,その後,血液凝固に関する研究の進歩により次々と新しい因子が発見された.そして種々の混乱を防ぐために1954年国際血液凝固因子名称選定委員会は凝血因子の名称を表のごとく,また1963年に凝血過程の模型図(図1)を提案している.

血小板のはたらき

著者: 山中學

ページ範囲:P.893 - P.895

血小板の数と出血
 血小板がある数以下に減少すると,歯肉や鼻からの粘膜出血や皮膚の紫斑が現れ,出血時間は延長し,毛細血管抵抗が減弱する.血小板減少の典型的なものは特発性血小板減少性紫斑病であるが,ほかに再生不良性貧血,白血病,がんや肉腫の骨髄転移,薬物や感染症による減少,あるいは血管内凝固症候群の際の血小板消費の結果としての減少があり,いずれも出血傾向を示す.
 血小板は血液を血管外へ出さないようにいくつかの重要な機能をもつ.その1つは,①毛細血管内皮保護機能で,血小板が毛細血管の内皮細胞に積極的に入り込んで,これを強化し,血管から血液を外へ出さないようにする.これに使われる血小板数は1日約3万/mm3といわれる.したがって血小板が3万以下になると,血管内皮細胞の機能異常をきたし,赤血球は血管外へ逸出する.自然出血という形でみられる粘膜あるいは皮下の出血がこれに相当するであろう.

線溶とは

著者: 風間睦美

ページ範囲:P.896 - P.897

 19世紀の末頃に動物のショック実験で血液が凝固性を失い,あるいは試験管内でフィブリン塊が溶解し去る肉眼的現象に対して命名された線維素溶解現象は,その背後にある機序が解明されるに従いさらに広い意義が認められるようになった.

出血傾向をみたとき

大人の出血

著者: 安部英

ページ範囲:P.898 - P.899

大人における出血傾向の部位と型式,その頻度
 大人の出血傾向はまことに多岐多様である.わが教室が開設されてから3年,出血傾向が病態の生役あるいは生死の鍵を握るものとして注目された症例は少なくとも200名を下らないが,これら出血の部位や型式はまちまちで,種々の形の出血が同時に起こってくることがしばしばである.いま重複を許してこれら症例の出血を統計すると,最も多いのは紫斑(点状出血petechia,斑状出血ecchymosis,び漫性出血suggillationを含めて)で大むね55%を占め,血尿がほぼこれに同じく(約50%),ついで口腔(主に歯齦)出血,鼻出血(合わせて約45%),吐,喀血(約30%),下血(20%),性器出血の順である.
 このほか出血が外部には直接現れず,関節内や筋肉内(15%),皮下,肋腹膜腔(合わせて10%前後)あるいは脳内ないし脳膜下に出血として認められるもの(15%)も少なくない.実地臨床ではこれら各出血の部位や型式により,その出血がどの臓器,組織から起こったものか,またいかなる要因ないし病的変化によって起こったものかを判定することが必要で,これにより適応する治療方針を決めることができる.

小児の出血

著者: 赤塚順一

ページ範囲:P.900 - P.901

 紫斑や鼻出血を主訴に外来を訪れる患者,あるいは諸種疾患の経過中に合併する出血症状などは小児の診療でしばしば遭遇する厄介な問題である.ここでは小児の出血患者に直面したときに,いかに対処するかを中心に解説する.

婦人の出血

著者: 真木正博

ページ範囲:P.902 - P.903

 出血はすべて病的なものであるが,女性の月経のみは例外である.しいていえば,分娩時の正常範囲内での出血も生理的といえよう.
 さて,女性に月経以外の出血をみた場合に,どのような疾患を考えるかという設問であるが,性器出血の性状および出血をきたしている婦人の年齢から診断のいとぐちを考えたらよいと思われるので,その線に沿って稿を進めたい.なお,出血傾向といっても男女共通なものが多いので,性器出血一般を合めることにしたい.ただし,妊娠中期以降の出血については,腹部を触診すれば妊娠と関係のある出血であることはすぐわかるはずであるから,これは特殊なものを除いて省略したい.

老人の出血

著者: 松田保

ページ範囲:P.904 - P.905

 老年者と若年者または幼小児との間に,出血の機序そのものに差があるわけではないが,異常出血の原因となる疾患の頻度や出血の程度には老年者と若年者または幼小児との間にかなりの差がみられる.本稿においては,老年者の出血傾向をみたとき,どのような疾患を考慮すべきかについて,出血傾向の原因別に簡単に述べることとする.

検査のすすめ方

著者: 梅垣健三

ページ範囲:P.906 - P.908

 出血は,①血管機能.②血小板機能,③凝固能および④線溶能の単一または2つ以上の機能障害の組み合わせにより生ずる.したがって,検査にはどの機能検査でも1つでは出血原因の確認は困難で,それぞれの機能を鋭敏に反映し,かつ簡単に実施できるスクリーニング試験を組み合わせて行い1,2),その上で精密検査へとすすめるのが順序である,なお,極めて重篤な出血を認めた場合,ある種の出血性疾患においては,問診および臨床所見から原因を推測でき,機を逸せず処置できることもあり得る.

カラーグラフ

目でみる出血傾向

著者: 前川正

ページ範囲:P.910 - P.911

 出血傾向の診断にはまず既往歴を詳しく聴取し,あるいは現在の出血症状をみて,出血が局所的なものでなく,止血機構の障害に基づく全身的なものによることを明らかにする,たとえば鼻の疾患で出血するのではなく,全身的な出血症状の一環としての鼻出血であることを聴き出す.
 次に出血傾向が疑われる場合,多数の要因より成立する止血機構のどこに障害があるかを明らかにする,そのためには家族歴を詳細に検討し,遺伝的・家族的素因の有無を明らかにすると共に,現症の検索,既往の出血状況および出血を併発しやすい原疾患の発見などが重要である.このためには出血傾向を血小板障害,凝固障害および血管障害に3大別し,主要疾患の出血症状の大要を記憶しておいた方が良い.もちろん,このような症候のみから止血機構の障害部位を確定することは困難で,出血傾向診断のためのスクリーニングテストや精密検査の成績の分析に主として依存せざるを得ない.

知っておきたい出血性素因

第XIII因子欠乏症

著者: 鈴木弘文

ページ範囲:P.913 - P.915

 血液凝固第XIII因子は,1963年の国際血液凝固因子命名委員会にて認定された最も新しい凝固因子である.この凝固因子の作用は図1のように血液凝固機構の最終段階である安定性フィブリンポリマーの生成に関与するものであり,フィブリン安定化因子(FSF:fibrin stabilizing factor)とも呼ばれている.第XIII因子は平常は不活性状態で血液中に存在しているが,ひとたび血液凝固が惹起されトロンビンの生成がみられると,このトロンビンとCa++の作用により活性化され,フィブリンの安定化をはかる.したがって第XIII因子の減少もしくは欠損している血液では,凝固時間は正常域値を示すが,形成されたフィブリン塊(凝血塊)が脆弱であるといった特有な所見を呈する.なお,第XIII因子の分子量は約30万といわれている.
 本凝固因子の欠乏症には先天性と後天性のものが存在する.

異常フィブリノーゲン血症

著者: 井出望

ページ範囲:P.916 - P.917

 異常フィブリノーゲン血症(congenital dysfibrinogenemia)はフィブリノーゲン分子のアミノ酸配列異常などフィブリノーゲン分子構造の異常ないしはフィブリンモノマーの重合が完全でないため,凝固能をもたないフィブリノーゲンが血中にみられる遺伝子性血液疾患と考えられ,男女両性に出現する.本症でのフィブリノーゲンはトロンビン時閥が延長し,トロンビン凝固性フィブリノーゲンは低値であるが,免疫測定法などで得られるフィブリノーゲンは正常値を示す,近年,後天的にもある種の肝疾患(primary hepatocellular carcinoma,acute liver failure,chronic hepatitisなど)の場合にフィブリノーゲンの異常(フィブリンモノマー重合異常など)がみられたとの報告がある.

von Willebrand病

著者: 吉岡慶一郎

ページ範囲:P.918 - P.919

 1962年,von willebrand1)はフィンランドのÄland島において,皮膚粘膜出血を主症状とし,血小板数正常で出血時間の延長を特徴とする男女両性に家族性に出現する先天性出血性素質を見出し,hereditary pseudohemophiliaと命名した.その後この疾患の止血障害に関して多数の検索がなされ,その成因に関して種々の論議が行われてきた.ここでは最近の報告を中心として現在における本疾患の概念について述べる.

特発性血小板減少性紫斑病

著者: 安永幸二郎

ページ範囲:P.920 - P.922

 特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)の本態はなお十分に明らかでなく,治療に関しても決定的なものがないために,厚生省のいわゆる難病に指定されている.本症は急性型と慢性型に分けられる.急性ITPは小児,とくに2〜6歳に多くみられ,成人には少なく,男女に発生頻度の差はない.そのほとんどは数週間ないし2,3カ月の経過をとって完治する.問題なのは慢性ITPであって,数年の経過をとりつつ,その間,軽快,増悪をくり返すもので,各年齢層にみられるが,発生は20歳前後に多く,とくに女性が多い(男女比は1:3).

血友病とその周辺

著者: 福井弘

ページ範囲:P.923 - P.926

 血友病は代表的な伴性劣性遺伝性の出血性疾患で,皮膚,粘膜はもとより深部組織,とくに関節内,筋肉内,その他諸臓器,組織の出血を反復するが,凝血学的には第VIII因子活性の欠乏する血友病Aと第IX因子活性の欠乏する血友病Bの2病型に大別されていることは周知のところである.遺伝形式は異なるが,I,II,V,VII,X,XI,XII因子などの凝固因子の先天性障害症も血友病型の出血様式を示すので,これらは血友病類縁疾患として取り扱われている.
 従来,血友病および類縁疾患の研究は臨床的観察と凝血学的検索が中心であったが,近年,生化学,免疫学的検索法の進歩とともに,血友病の病因,病態は分子レベルでの究明がなされつつある.また,治療面でも,部分的純化濃縮剤による補充療法が発達している.

Wiskott-Aldrich症候群

著者: 長谷川弥人 ,   森本幾夫

ページ範囲:P.927 - P.929

 Wiskott-Aldrich症候群(以下 WAS)は1937年Wiskott1)により初めて報告され,出血傾向を伴った血小板減少症,湿疹,反復する感染症により特徴づけられ,1954年Aldrichら2)は6カ月の男児に同様の症状を認め,また,同胞男子40人中10人に同様の症状を認め,それが伴性劣性遺伝であることを明らかにした.予後は不良で大部分は幼少時に死亡するといわれている.現在原発性免疫不全症候群の中に含めて考えられており,T-cell,B-cellの両方に欠陥があると考えられている.また本疾患は非常に稀な疾患であり,欧米では少なくとも90例以上,本邦では筆者らの調査し得た範囲では9例にすぎない(表1).

Ehlers-Danlos症候群

著者: 田川徳治 ,   村上義樹

ページ範囲:P.930 - P.932

 本症候群は常染色体性不完全優性に遺伝する中胚葉組織の先天発育不全症で,血管および血管周囲組織の脆弱性による出血素因を伴う稀な疾患である.Ehlers(1901)が皮膚および関節の過弛緩性に出血傾向を伴う症例を,Danlos(1908)が皮膚の過弛緩性に肘,膝部皮下組織の偽腫瘍を伴う症例を記載し,その後Ehlers-Danlos症候群と呼ばれている.Ronchese(1936)は自験3症例を含む30症例について臨床的特徴を検討し,3主徴として皮膚および血管の異常な脆弱性,皮膚の過伸展性,関節の過伸展性をあげ,とくに皮膚および血管の脆弱性が最も重要な症状であると述べている.
 本稿ではEhlers-Danlos症候群の成人および幼児の各1症例を紹介し,あわせて本邦報告例について出血症状を中心に考察を加えたい.

消費性凝固障害

著者: 松田道生

ページ範囲:P.933 - P.935

 血栓形成傾向と出血性素囚とは,一農には全く相反する方向の反応ないし現象と理解されている.しかし,血栓の形成,とくに多発性の血栓形成と出血傾向とが成因上密接に関係して,前者が因,後者が果として現れる結果,臨床上は出血傾向を主症状としながら抗凝血薬が奏効する場合がある.これが本稿のテーマ"消費性凝固障害(consumption coagulopathy)"と呼ばれる症候群で,その成因ないし病態生理が明らかにされるにつれ,多くの臨床家の関心を集めるに到っている。
 その成因は基礎疾患に関係して何らかの機序で凝血系が活性化され,血管内に多くは多発性の血栓を作る結果,血小板やフィブリノーゲンなど,血栓形成の基材としての血液成分が消費され,二次的に出血傾向が招来されると解されている1〜3)

出血傾向のみられる諸疾患

血液疾患

著者: 野村武夫

ページ範囲:P.936 - P.937

 前項の血液凝固異常症や血小板減少症も血液疾患の範疇に含めるのが普通であろうが,ここでもう一度改めて"血液疾患"が出て来るのは,"造血臓器疾患"を取り上げるようにとの意向ではないかと思われる。このように解釈してみると,すぐに考えつくのは,造血臓器の腫瘍性疾患,なかんずく急性白血病と再生不良性貧血である.この両疾患の出血傾向について,自験症例を中心に解説を加えてみることにする。

肝・胆道疾患

著者: 山本祐夫 ,   吉村良之介

ページ範囲:P.938 - P.939

 血清アルブミンが肝臓で生成されるように,凝血因子の大部分は肝で作られる.
 ビタミンKの作用により肝で作られる凝血因子は,プロトロンビン,第VII,第IX,第Xである.後述のように閉塞性黄疸ではビタミンKの消化管よりの吸収阻害が起こり,次いで肝における上記のビタミンK依存の凝血因子の生成が低下し出血傾向が出現してくる.肝ではそのほか,フィブリノーゲン,第V,第XI,第XII,第XIIIの凝血因子が生成されているといわれている.すなわち,肝は第VIII因子を除いた主要な凝血因子の生産の場である.

膠原病

著者: 畔柳武雄

ページ範囲:P.940 - P.943

はじめに
 膠原病グループに属する疾患にはそれぞれ臨床所見および免疫学的所見に特徴がある.たとえば結節性動脈周囲炎は,白血球増多,好酸球増多を示すことが多いが,高免疫グロブリン血症や血中自己抗体の出現は比較的少ない.これに反しSLEでは,白血球減少,高免疫グロブリン血症および自己抗体陽性が常にみられる.したがって膠原病の各疾患についてそれぞれの出血傾向を述べなければ,"膠原病と出血傾向"という与えられた標題にふさわしくないわけであるが,本稿では主としてSLEにおける出血傾向について述べることとする.

腎疾患

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.944 - P.946

 出血傾向をきたす主な原因は,大きく分けて血管機能の異常,血小板の異常および凝固因子(線溶系も含む)の異常に大別される.
 さて急性・慢性腎不全の場合,異常出血がしばしばみられ,時として致命的な原因となり得るが,臨床的には紫斑,溢血斑,鼻出血,消化管出血などが見られやすい.これら腎不全の際の出血傾向の主因は何であろうか?

出血傾向の管理

止血剤とは

著者: 三輪史朗

ページ範囲:P.947 - P.949

 出血傾向の管理に用いられる治療法ないし薬剤としては,血小板減少に対する血小板輸血,凝固因子欠乏症(血友病など)に対する第VIII因子製剤,第IX因子製剤などの血液製剤ないし新鮮血漿輸注や輸血,特発性血小板減少性紫斑病や再生不良性貧血などの血小板減少症に対する副腎皮膚ステロイド剤,血管内凝固症候群(DIC)に対するヘパリン,線溶亢進による出血に対しての抗線溶剤,そしていわゆる血管強化薬とかビタミンK,トロンボプラスチン製剤などの止血剤と称せられる諸薬剤の使用などがあげられる.
 出血傾向の治療について最も大切なことはいかなる原因によるか(①血小板の異常か,②血管の異常か,③凝固系の異常か,④線溶亢進のためか,あるいは④これらの異常が複合して生じたものか)の究明にある,原因に応じて上述したように血小板輸血,凝固因子製剤,輸血,抗線溶剤などを十分量適確に用いることによって,多くの出血傾向は管理できる.したがって出血傾向を有する患者に遭遇したら,いたずらにすぐにいわゆる止血剤を用いることなく,まず原因の解明に力を注ぐべきである.

輸血と血液製剤

著者: 山田外春

ページ範囲:P.950 - P.951

 輸血と血液製剤輸注で止血される出血性素因は,主として血液凝固機序異常による出血性素因で,かつ凝血因子欠乏症の形をとるものが多い.その代表的なものは血友病A(第VIII因子欠乏症),血友病B(第IX因子欠乏症),von Willebrand病ならびに症候群,無(低)フィブリノゲン血症〔フィブリノゲン(第I因子)欠乏症〕および血管内血液凝固症候群(DIC)である.
 輸血はこれらに対して通常すべてに有効である(ただしDICの際は慎重な態度が要求される).しかしこれらの出血性素因の多くは治療上補充される必要のある成分が,血液中の1つないし2,3にすぎないので,他の成分は受注者にとっては余分のものであり,これを抗原とみなしての抗体産生,それによる副作用,治療効果の減弱をきたすことがある.また血液製剤は保存性にすぐれ,常に院内保存が可能なため緊急時に有用であり,かつ製剤作成技術の進歩により,貴重な供血が無駄なく利用されるようになってきている.

血小板輸血

著者: 遠山博 ,   柴田洋一

ページ範囲:P.952 - P.953

血小板輸血の方法と手技
 多血小板新鮮血 platelet-rich whole blood ACDを使用し,プラスチック・バッグかシリコン処理血液壜に採血し,直ちに(少なくとも2〜3時間以内,室温)輸血すれば血小板減少症に対し大きな威力を発揮するので,出血中のそれらにとって好適である.この血液は4℃24時間保存してもなお40〜50%の血小板が有効と考えられる.
 多血小板血漿 platelet-rich plasma,PRP 記の血液を軽遠沈light spinして血漿部を分離蒐集する.Beckerら1)は米国製Sorval RC-3遠沈機で20℃,2,500rpm,6分遠沈し,血小板の75〜100%の回収を得たとしている.高速短時間遠沈法も普及しつつあり,AABB2)では上記でHG-4のHeadを使用(4,470×G),4,000rpm,3分の遠沈を推奨している.筆者らは国産K社製遠沈機(スイング型ローター,公称容量350ml×6,2,240×Gで3,000rpm)で,22℃,2,000rpm,血液壜を7分遠沈し血漿を他の陰圧シリコン壜にそっと吸引し,PRPを製造している.ここに大問題は血液・血小板の保存温度である.実用的問題は日赤新鮮血が病院に到着するのが夜になることも多く,その血液を翌朝まで血小板機能をあまり落とさず持ち越せるかどうかである.Murphyら3)は4℃より室温保存がよいとし,22℃に保存してあれば,3日保存の血小板でも体内生存期間はかなり長いとした.しかしCaenら4),Shivelyら5)はadenosine diphosphateによるaggregationであらわされた血小板機能は4℃保存のものの方がよいともした.Kattlove6)は出血の予防には体内生存の長い室温保存血小板がよく,出血に対する緊急血小板輸注には4℃保存の血小板がより有効であるとしたが,なお今後の検討によらねばならないと思われる.

抗線溶剤の使い方

著者: 青木延雄 ,   吉田信彦

ページ範囲:P.954 - P.955

 種々のストレスや炎症,組織損傷などにより,その局所や血中において,プラスミノゲン活性化因子が増加し,自然に存在する阻害因子との間の平衡が破れ,過剰にプラスミノゲンが活性化された状態が,病的な線溶亢進状態である.プラスミノゲンが活性化して出現したプラスミンはフィブリン溶解以外に,フィブリノゲン,第V,第VIII因子などの血液凝固因子を分解し不活性化したり,そのほかにもカリクリノーゲンを活性化し,キニン系を賦活して毛細血管透過性を亢進させ,炎症反応を増強せしめ,またACTHを分解する作用を持つとされている.
 このように線溶亢進は炎症やアレルギーなどにも関連を有しており,出血傾向を惹起するほかに種々の障害をきたすことに注目する必要がある,したがって,過剰な線溶の亢進は抑える必要があるが,一方,線溶活性は血液凝固活性といわば平衡状態を保ち,生体全体の動的平衡状態の一端を担っていることも事実であり,いたずらに線溶活性を抑え,その動的平衡を破ることは,各種臓器におけるフィブリン析出ないしは血栓形成傾向の増大という好ましからざる状態をきたし,危険であることを十分認識する必要がある.したがって,抗線溶剤は,病的線溶活性の亢進とそれに基づく各種障害に対して極めて強力な武器ではあるが,一方,安易に不必要な抗線溶剤の投与を続けることは厳に慎むべきと考えられる.

出血傾向と手術

著者: 村上文夫

ページ範囲:P.956 - P.959

はじめに
 外科手術に際し,大きな血管からの出血はいちいち結紮止血しなければならないが,無数の毛細血管からの出血はとくに手を加えなくても自然にとまってしまい,何ら手術操作の妨げとはならない.これは出血と同時に毛細血管機能,血小板機能ならびに血液凝固機能の3者が協調的に働いて自然止血の機序が営まれ,血管破綻孔がフィブリン塊でしっかりと塞がれてしまうからである.しかしながら,これら3つの機能のいずれかに障害があるか,または凝固系に拮抗する線溶系が異常に亢進した場合には,手術創からとめどない毛細管出血が起こって,ときには生命をも危うくすることがある。したがって,術前にこのような出血性素因の有無をよく検し,もし異常があれば予めこれに対する的確な止血対策を立てておくことが,外科手術を安全に遂行する上に,きわめて重要である.
 本稿においては,とくに術前止血検査に関する2,3の問題点を取り上げて概説
したい.

出血傾向を起こしやすい薬物

著者: 小竹要

ページ範囲:P.960 - P.961

 止血機序は血管の性状,血小板,血液凝固性,線維素溶解現象が複雑に組み合わされた連鎖反応であり,細胞成分,蛋白代謝,酵素反応が密接に関係している.したがって,出血傾向を起こしやすい薬物は止血機序のどの段階を障害するかによって,いくつかの種類に分類され,その症状や治療方針も異なる.
 止血機序は精巧なhomeostasisを維持しており,容易に破綻されない仕組みになっているので,軽い障害では出血傾向として表現されないことが多い.

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内科専門医を志す人に・トレーニング3題

著者: 上野幸久 ,   三浦恭定 ,   飯田喜俊

ページ範囲:P.963 - P.965

 問題1. 25歳の女性,点状皮下出血,性器出血,貧血を主訴として来院.ヘモグロビン4.0g/dl 赤血球数124万/mm3であった.脾腫はふれない.
 A.この患者の診断上ます行うべき検査を3つあげよ.

内科専門医を志す人に・私のプロトコール

V.血液

著者: 西崎統

ページ範囲:P.966 - P.967

●新しい知識を得る場として
 内科専門医受験を志すためには,幅広い,奥深い知識が要求されると同時に,最近の新しい知識も必要とされる.もちろん,専門医の試験のためだけではなく,内科医として常に新しい知識を吸収してゆくことは大切である.とくに内科臨床研修中はその機会が非常に多い.まず輪読会,抄読会,症例検討会,研究会,CPC,学会などがある.その中でもとくに輪読会,抄読会はたいていの医局,あるいはグループで,いろいろな形式で気軽に行われているであろう.その場合,材料は成書,雑誌,文献,論文などといろいろあるが,できるだけ広い分野にわたっていることが望ましい.中でも比較的新しい外国雑誌,また問題となっている症例に関連した文献などを,とくにおすすめしたい.抄読会にもいろいろな方法があると思われるが,単に論文を直訳し,その原稿をただ読むだけでは,聞き手にとってはあまり興味はなく,また記憶に残らないことが多い.そこで,できるだけ論文・文献の内容を整理,要約し,決められた時間内にわかりやすく説明できるよう訓練した方がよい.このような方法にすれば,新しい知識の吸収はいうまでもなく,話し方,説明の仕方の訓練にもなり,聞き手にとってもはるかに理解しやすいので,一挙両得となる.さらに,できれば各分野の専門家に出席を願って,ディスカッションの場を持ち,また専門家の意見を聞く機会を持つようにすると,いっそう効果があるのではないかと思われる.
 そのほか,いろいろな機関でもたれるCPC,研究会,さらに学会にも積極的に出席するように努め,新しい知識の吸収,ならびに最近の話題点を知るように,常に心がけることも大切であろう.

カラーグラフ 臨床医のための病理学

XXIII.運動器疾患(2)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.982 - P.983

 骨腫瘍と並んで,軟部組織の悪性腫瘍である肉腫が,運動器疾患の最も恐るべき命取りの病気である.線維肉腫,脂肪肉腫,横紋筋肉腫,血管肉腫,平滑筋肉腫,滑液膜肉腫,神経線維肉腫,蜂巣状軟部肉腫などがあるが,今回は前記4種の肉腫を載せた.
 これら肉腫の組織学的鑑別は必ずしも容易でなく,普通染色(H.E.染色)のみならず,特殊染色を参考とする場合が多い,どうしてもオリジンの分からぬ時は仕方がなく,単に円形細胞肉腫,紡錘細胞肉腫,多形細胞肉腫などと純形態学的な名前をつけるのである.

症例

肺炎症状に終始し,急激に経過したWegener肉芽腫症の一剖検例

著者: 上田昭 ,   藤田敏郎 ,   甘慶華 ,   新田征史 ,   赤塚誠哉 ,   佐藤菅宏 ,   岡島重孝 ,   福井俊夫 ,   関口進

ページ範囲:P.968 - P.970

 Wegener肉芽腫症は,近年,本邦でもその報告が増加し1,2),決して稀な疾患ではないが,われわれは最近,臨床的に鼻咽頭症状を呈さず,肺炎症状に終始し,しかも全経過25日間で死亡したWegener肉芽腫を経験したので報告する.

演習・X線診断学

単純X線写真による読影のコツ(5)腹部単純写真

著者: 大澤忠

ページ範囲:P.971 - P.973

 腹部は胸部や骨系統と異なり,同じ程度のX線吸収度の組織,器官が隣接して存在するので,X線診断には消化管造影,腎盂造影,後腹膜気膜,血管造影などの造影検査が必要になる.そのためが,造影剤を用いない腹部X線検査―腹部単純写真(KUBとも呼ばれる;K-腎,U-尿管,B-膀胱)の価値は比較的軽視されている場合が多いようである.しかし,KUBはすべての腹部造影検査の基礎であり,注意深く観察することによりpositive,negative両方の意味で多くの情報が得られ,予期しない異常所見を発見するチャンスも胸部単純写真に近い.

超音波診断の読み方

心臓断層図による診断

著者: 田中元直

ページ範囲:P.975 - P.980

はじめに
 超音波心臓断層法はパルス反射法を応用した方法であり,その原理については他の臓器における断層法と同じである,しかし.循環器疾患においては,先天奇形にるける心血管構造変化をはじめとして,後天性疾患においても心房や心室の拡大,心筋肥厚,弁尖の変形等の形態異常,あるいは解綱学的構造異常が疾患の本質をなし.形態異常が機能上にも大きな影響を及ぼすことが多い.したがって.軟性組織構造の非観血的映像化の方法である超音波断層法の診断上の効果は他の臓器の場合とは比較にならぬほど重要な意味を有する.しかも心臓本来の機能であるポンプ機能の原動力は心臓壁の動きで生じ,その動き自体は心臓の各部分の位置や形の変化に現れるので,心臓構造に関する診断情報は機能判定上でも大きな役割を演ずる.このような点から,循環器領域における超音波応用は独特の展開がなされている.
 心血管系は主として筋性組織や弁尖,腱索などの線維性組織から成り立ち,内容として均一媒質とみなしうる血液を充たしており,その構造は音響的には超音波を用いて映像化するのに好都合な構造をなしている.弁尖や心臓壁と血液との境界面は良好な反射を生じ,心拍同期法による心臓断層図では心臓構造の2次元的断面像が容易にとらえられる.この断層図の上から,現在,次のような診断情報が得られている.

診断基準とその使い方

Guillain-Barré症候群

著者: 濱口勝彦

ページ範囲:P.985 - P.987

 「Guillain-Barré症候群」(以下GBSと略す)は,1916年,Guillain,Barré & Strohlが報告した2例の根神経炎に類似の臨床症状を呈するものにつき,Draganescu & Claudian(1927)がはじめて命名した症候群である.その後Landryの上行性麻痺とも同一範疇に属するものとして,Landry-Guillain-Barré症候群ともよばれる(Haymaker & Kernohan,1949).しかし本症候群の概念や臨床的特徴あるいは診断基準について諸家の間に必ずしも意見の一致をみず,若干の混乱がみられる.これらの混乱をなくするためにOsler(1960)が1つの診断基準を提唱したが,その後もなお統一的見解は得られず,Marshall(1963),Poser(1963),Wiederholt(1964),McFarland(1966),Sigwald(1970),Masucci(1971)らがそれぞれの立場から診断基準につき考案している.このような状況下にあることを念頭において,診断基準についてのべる.
 現在,GBSは原因不明の多発性根神経炎のうち,特徴的な発病様式,臨床症状,髄液所見,および経過を呈するものと考えられる.

重症肺結核

著者: 山本正彦

ページ範囲:P.988 - P.989

 重症肺結核の定義は必ずしもはっきりしたものではない.しかし,国際的に広く使用されているNTRDA(National Tuberculosis and Respiratory Disease Association)分類における高度進展(Far Advanced;F. A.),または日本結核病学会病型分類(学会分類)のI型,すなわち広汎空洞型,あるいは学研肺結核病型分類(学研分類)のF型,すなわち重症混合型をさすと考えて大きな誤りはないものと思われる.

術後障害とその管理

乳がん手術後の再発と転移 その1

著者: 金上晴夫 ,   牧野永城

ページ範囲:P.990 - P.994

10年間のフォローアップが必要
 金上 最近,乳がんが非常にふえているようですが,乳がんの治療はもちろん手術が最善のわけです.そこで手術をしたあと,外科ではどの程度フォローアップされているのか,そのあたりからお話しください.
 牧野 乳がんの再発は,術後2〜3年の間がパーセンテージとしては一番高いんでしょうけれども,とにかく乳がんは長い年月がたってから再発することがあるということで有名です.10年以上たってからの再発も決して珍しくありません,ですから,われわれは乳がんの手術成績を論ずる場合に,5年生存で論じると治癒の実体を見失う可能性があることをよく知っていなければなりません.

緊急時の薬剤投与

慢性肝炎・肝硬変患者が肝昏睡に陥ったとき

著者: 涌井和夫

ページ範囲:P.995 - P.997

 慢性肝炎や肝硬変症で,その経過中,発生する肝昏睡は,2,3の点で,急性肝炎の時の肝昏睡とは異なるものがある,昏睡の誘因が明らかにされうる場合,また昏睡の深化の過程が把握される場合が多い.それとともに,患者,その周囲,また医療関係者への比較的に負担の大きい,交換輸血をはじめとする各種方法がはたして適応とされるか否かの問題も加わる.保存的療法が重視されるわけであるが,またそれによる覚醒への期待も,比較的にではあるが,もてることが多い.慢性肝障害時には,合併する疾患の数が多い.また,それが昏睡の誘因とも重なり合う.したがって,多彩な病状を呈するのが一般であり,各症例への対応策は常に個別的なのであり,概説
することはむずかしい.要点の記述ということになろうが,付図を参照とされれば幸甚である.
 肝昏睡例へのアプローチの第一歩は,常に鑑別診断である.脳血管障害,合併糖尿病によるもの,逆にインスリンや経口剤による低血糖発作など,昏睡をもたらしうる要因は多いので注意が必要である.

臨床病理医はこう読む

血清蛋白分画像(5)

著者: 河合忠

ページ範囲:P.998 - P.999

β分画の明らかな増加
 本症例のパターンでまず目立つ所見としては,βLが著明で高βリポ蛋白血症が考えられ,β分画の比較的幅狭い増加があり,しかもβ分画峰がα2分画峰より著しく高いのが特徴である.
 セ・ア膜電気泳動法で分画された血清蛋白のβ分画は比較的変動の少ない分画である.β分画は主としてトランスフェリンによって占あられているので,β分画の著しい増減はまずトランスフェリンの変動に基づくと考えてよい.極あてまれにトランスフェリン欠損症がみられるが,その時はβ分画が著しい低値を示す.たとえば,先天性無トランスフェリン血症ではβ分画が4%以下,あるいは0.15g/dl以下になる.

図解病態のしくみ 循環器シリーズ・3

僧帽弁狭窄

著者: 博定

ページ範囲:P.1000 - P.1001

 リウマチ性の僧帽弁膜症のうちの60%強は僧帽弁狭窄(M. S.)であり,純型のM. S.は少なく,僧帽弁閉鎖不全に始まり,長年月のうちに瘢痕性弁組織の攣縮によりM. S.が優位にたつ場合が多い.女性に多いことは有名で男女比は1:4である.
 M. S.は病理解剖的に次のような特徴を有する.

小児の検査

GOT,GPTとLDH

著者: 白木和夫

ページ範囲:P.1002 - P.1003

 血清酵素活性値の測定は各種疾患の診断に鋭敏な方法として,小児でも広く用いられているが,その測定値の解釈にあたっては必ずしも成人とは同じにゆかないこともある,本稿では一般に検査されることの多い血清のGlutamic-oxalacetic transaminase(GOT),Glutamic-pyruvic transaminase(GPT),Lactic dehydrogenase(LDH)について,その小児期の正常値と,主として小児肝疾患におけるこれらの値の変動について概説
したい.

皮膚病変と内科疾患

斑(その2)

著者: 三浦修

ページ範囲:P.1004 - P.1005

紅 斑 その2
炎症による紅斑
 この部類の紅斑はその炎症の性質に従って,換言すれば多くの場合原因によって,①紅斑のみに終始するもの,②他種発疹を当初から.または容易に併発するものに分けられる.
 紅斑に終始するもの 紅皮症は除いて,指頭大までの紅斑に終始する疾患には梅毒性バラ疹,腸チフス性バラ疹,風疹,突発性発疹症などがある,前2者はほとんど全身の組織を犯し,風疹は妊婦が罹患した場合には胎児への影響を考慮する必要がある.

診療相談室

潜在性甲状腺機能低下症の臨床症状と診断

著者: 吉田尚義

ページ範囲:P.1006 - P.1006

質問 潜在性甲状腺機能低下症の臨床症状,およびルーチン検査のみによる診断法について,とくに最近の知見をご教示ください.(仙台市 I生 41歳)
答 甲状腺機能低下症の分類は,大別すれば,原発性,続発性(下垂体性)および三次性(視床下部性)の3つになる.このうち,実際に臨床的に遭遇するのは原発性が圧倒的に多い.したがってここでは原発性の潜在性甲状腺機能低下症について述べることにする.

腎盂像とその解説書について

著者: 三條貞三

ページ範囲:P.1007 - P.1007

質問 腎盂像についての本がありましたらお教えください.(宮城県 H生 35歳)
答 腎盂撮影は泌尿器科のみならず内科においても診断上必要な検査で,現在は造影剤の進歩により腎機能低下例でも安全に実施しうる.

How about…?

医師と患者の間

著者: 高階経和

ページ範囲:P.1009 - P.1011

●患者さんが気楽に話しができ,安心して何でもう ちあけたり相談できるようにするには,どうした らよいですか? また実際どのようなことに気を 配っていますか?
 そうですね.これは一番大切な問題だとおもいます.一般に,TPOという言葉がありますが,これはなにも服装の時にだけ使う言葉ではないと思うのです.というのは,患者さんが先生に話をする場合,いきなり先生に「わたしは,どこが腫れています」といった表現はとらないと思います.やはり患者さんが,先生に話をするためには,『タイミング』(T)があるわけです.そして,一体どこで話をするかということになると,先生と患者さんが,病院の廊下を歩きながら話をするということは,まずないわけですね.これもやはり落着いた診察室で,先生と患者さんが何でも話ができるという『場所』(P)が必要なのです.それに,患者さんも先生もやはり人間である以上感情に左右されがちです.ですから,どういった『機会』(O)に先生と話をすればよいかということを絶えず患者さんが考えているのだということを忘れてはなりません.

洋書紹介

—Wilson, C. O. & Jones, T. E. 著—American Drug Index 1974

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.946 - P.946

アメリカの薬に関する情報を得るには格好の書
 本書は1956年に初めて刊行され,1958年以降毎年発行されているものの1974年版である.A5判とB6判の中間の大きさで,796ページの大部分を本文が占め,最後に製薬会社ないし販売会社700社以上の宛名がアルファベット順に記載されている.
 年ごとに出る薬剤の種類はおびただしいことはわが国同様であり,なかなか覚えきれるものではないので,市販名・一般名などを含めてアルファベット順に記し,すぐに探しだせるようになっている,一般名のところをみると,同じ成分をもつ市販品名と製造会社名が書いてあり,市販品名のところをみると,製造会社名・化学構造・含有量・包装の大きさ・使用目的が並んでいる.しかし,使用目的については抗痛風とかビタミン欠乏症とかいった程度の簡単なものであり,使用量などについては全く触れていない.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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