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雑誌目次

雑誌文献

medicina12巻8号

1975年07月発行

雑誌目次

今月の主題 感染症—最近の話題

感染症—最近の動向

著者: 真下啓明

ページ範囲:P.1154 - P.1155

化学療法と耐性菌
 いわゆる法定伝染病に属する諸疾患が激減した事実は疑いないところである.その理由として挙げられるのは公衆衛生酌諸施策の発展,これを可能にする経済成長,同時に国民栄養状態の向上,そして化学療法の成功,予防接種の貢献などが言われている.
 しかしヒトの生存する環境は,ある見方からすれば微生物にとりかこまれ,それらとのhomeostasisを保ちながら生存しているとみられ,この関係は未来永劫不変であろう.

細菌感染症—原因菌の変遷

クレブシェラ感染症

著者: 斉藤厚

ページ範囲:P.1156 - P.1157

 激症肺炎の起炎菌としてよく知られているFriedlander Bacillusを含むKlebsiellaは腸内細菌に属し,厚い莢膜を有する非運動性のグラム陰性桿菌である.近年,endogenous infection(内因性感染症)の増加に伴い,本菌感染症も注目されている.本菌はまた,最近汎用されているペニシリン系抗生剤に自然耐性であることからも,各種臨床材料から高頻度に分離され,呼吸器,尿路,胆道系の感染症の原因菌として日常よく遭遇するものである.
 Klebsiellaの分類に関しては,歴史的にかなりの混乱があり,現在もなお各専門家の間で意見の一致をみていないので,本稿では初めに本菌属の分類を簡単に説明し,呼吸器感染症を中心に述べてみたい.

セラチア感染症

著者: 那須勝

ページ範囲:P.1158 - P.1159

 数多くの抗生物質の登場と免疫抑制剤療法の普及に伴い,諸種感染症の様相は大きく変わってきた.多くの抗生剤に耐性で,通常健康人には病原性を示さない弱毒菌が,生体側の感染防禦能低下に乗じて起炎性を惹起し,それらはしばしば抗療性で患者を死に至らしめている.その一菌属として,今日セラチアが大きく注目されてきた.
 この注目された理由は,①最近,本菌の患者からの分離率が高くなってきたこと,②多くの抗生物質に耐性で,ほとんど病院感染の形式をとり,とくに泌尿生殖器系患者の尿道カテーテル施行例などで器具を介して多発することがあり,③癌,血液疾患などの重症基礎疾患を有する患者では,しばしば本菌感染が死因となっている点などによる.

アシネトバクター感染症

著者: 清水喜八郎 ,   奥住捷子

ページ範囲:P.1160 - P.1161

 Acinetobacterは自然界に広く分布し,水や土の中からしばしば分離される.近年,ヒトの喀痰,尿,血液,膿などから分離例が増加し,その病原性が議論されている.本菌は,Gram(-)の球桿菌で,チトクロームオキシダーゼ(-),硝酸塩還元(-),運動性(-)で,古くは,糖を酸化によって分解するものはHerellea vaginicolaあるいはBacterium anitratum,糖の分解性のないものは.Mima PolymorphaあるいはMoraxella lwoffiと呼ばれていたが,1954年Brisou et PrevotはAcinetobacter属を設け,糖分解菌をAcinetobacter anituratum,また,糖非分解菌をAcinetobacter lwoffiとした.1971年にspeciesはAcinetobacter calcoaceticusのみとなり,この中にAcinetobacter anitratusもAcinetobacter lwoffiも含まれることになった.

ヘモフィルス感染症

著者: 松本慶蔵

ページ範囲:P.1162 - P.1163

 ヘモフィルス菌属に含まれる細菌は,新しいBergey's Manual(第8版)でも従前と異ならず,人に病原性が明確に認められているものは,いわゆるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)とHaemophilus aphrophilus)であり,前者はとくに呼吸器感染症の原因菌として重要であり,後者は心内膜炎をはじめとした敗血症や脳膿瘍で認められる稀な起炎菌である.

嫌気性菌感染症

著者: 島田馨

ページ範囲:P.1164 - P.1165

嫌気性菌の分類
  嫌気性菌の分類,命名は形態を主としたフランス学派と,菌のブドウ糖発酵代謝産物を分類の基準にしているアメリカ学派とではかなり異なっていた.アメリカ学派の方式では,菌の最終的な同定にはガスクロマトグラフィーを必要とするわずらわしさがあるが,最近刊行されたBergeyのManual of Determinative Bacteriology第8版にはこの分類が採用してあり1),この本の性格からいっで,今後アメリカ学派の分類がひろく使われるものと思われる.この分類では,かつてSphaerophorusと呼ばれていたグラム陰性桿菌はFusobacteriumに分類され,また嫌気性CorynebacteriumはPropionibacteriumと名前が変わっている.そのほかとくにグラム陽性桿菌の分類が従来に較べて大きく整理されているのが特徴で,かつてのCatenabacterium,Ramibacterium,CillobacteriumはすべてEubacteriumに統合された.表1には臨床材料から分離される主な嫌気性菌を示した.

エルシニア感染症

著者: 善養寺浩

ページ範囲:P.1166 - P.1167

 ここ10年来,エルシニア感染症はとくに欧州において注目されてきているが1),2),日本では1972年筆者ら3)が,Yersinia enterocolitica感染症例を報告するまで関心はもたれずにきた.その後,日本で数百名の患者を数えたY. enterocolitica感染の集団発生が小・中学校を舞台に相ついで4件も起こり4),またそれらの症状が従来の食中毒型の腸炎とは異なることから,公衆衛生領域で急速に関心を集めてきた.
 臨床的には,属Yersiniaの菌は終末回腸炎,虫垂炎,ある種の自己免疫疾患,さらに重篤な敗血症さえも起こすことが知られ,近年臨床各科においても広く研究が進められている.

ニュモシスティス感染症

著者: 樋口正身

ページ範囲:P.1168 - P.1169

 Pneumoaystis cariniiが発見されたのは1909年のことであるが,その病原性の有無については長らく不明のままになっていた.ところが1952年,Vaněkらがこの微生物と乳幼児にみられる間質性形質細胞性肺炎との関係を明らかにして以来,ヨーロッパのみならず広く世界の各地で本微生物による肺炎が報告されるようになった.この微生物は正常の状態において広く各種動物の体内,ことにそれらの気管内に常在しているもので,通常の状態では病原性を示さないが,先天性あるいはコーチゾンまたはその他の薬剤の投与により生体が免疫不全の状態に陥ったとき病原性を発揮する.したがって白血病その他の基礎疾患が存在し,上記のごとき治療を受けた後,その経過の終末に本肺炎を併発してくることが多い.
 わが国で最初に本肺炎を発見したのは吉村らで(1961)彼らは本微生物による間質性形質細胞性肺炎の1剖検例を報告した.その後散発的に本症の剖検例が報告されていたが,最近とみにその数を増してきている.しかし臨床的に本肺炎の診断が下されることはほとんどなく,剖検によってはじめて証明されているのが実情である.したがって臨床家が本疾患に関心を持たれることが望まれるので,本肺炎の臨床と病理学的所見について,その大略を述べてみたい.

緑膿菌感染症

著者: 谷本普一 ,   荒井信吾

ページ範囲:P.1170 - P.1172

 およそ15年前にはほとんど問題にされなかった緑膿菌感染症は,今日では臨床上各領域で,難治性感染症のひとつとして多くの関心を集めるに至っている.日常環境内に常在し,腸内細菌として少なからず検出される緑膿菌は,白血病,悪性腫瘍,膠原病,慢性気管支疾患,火傷,大手術,臓器移植などの基礎疾患をもつ患者や新生児に感染すると,敗血症,肺炎,気道感染症,尿路感染症など,さまざまな発症を示し,種々の治療に抵抗し,しばしば重篤な予後を招来する.
 最近における緑膿菌感染症の増加の原因は,つぎの2点に要約される.①種々の抗生物質の開発により,グラム陽性球菌感染症の治療が容易になった反面,それらの薬剤に自然耐性をもつ緑膿菌の増殖しやすい条件が多くなったこと,②副腎皮質ホルモンや抗癌剤などの治療の進歩により,白血病,悪性腫瘍,膠原病など全身性の重篤な疾患あるいは重症肺不全患者,腎不全患者の延命が可能となり,全身ないし局所の抵抗力の減弱した患著が増えたことなどである.

カラー・グラフ

知っておきたい原因菌

著者: 谷本普一 ,   那須勝 ,   宇塚良夫 ,   島田馨 ,   樋口正身

ページ範囲:P.1174 - P.1175

緑膿菌
写真左側はムコイド型の緑膿菌の集落で,右側の緑膿菌の集落との間に差が認められる

細菌感染症—特殊宿主と感染

いわゆるopportunistic infection

著者: 石山俊次

ページ範囲:P.1178 - P.1181

はじめに
 主として抗生剤療法が普及してから,"急性伝染病"が減って防疫学上の意義を失うと,こんどは,人体内で病原性がないか,たとえあっても極あて微力なものと考えられていた細菌,真菌,ウイルスなどによる感染が目立ってきて,病院内感染の問題が再び注目されるようになった.ここに目立ってきたというのは,それまで少なかったものが新たに増加したのか,あるいはsubclinicalには存在したが,急性重篤な"伝染病"の蔭にかくれて注意されなかったのか,それらの点が十分明らかでないからである.
 1946年Weinsteinは,麻疹肺炎,髄膜炎,腎盂腎炎などの患者に抗生剤療法を行うと,もとの原因菌が消失して,そのかわりにKlebsiellaや耐性ブドウ菌など残ることをみて,superinfectionという概念を打ちだした.また1952年Brisauは病巣で優位を占める菌が抗生剤でたたかれると,他の種類の菌が交代して病状が再び悪化したり,慢性化したりする現象に注目してmicroorganism substituteと呼んだ.たしか1953年だったと思うが,故久保教授はこの概念を早速とり入れて菌交代現象として紹介した.その後の経験によると,菌交代現象はすべての感染に常に起こるわけではなく,当時筆者らの調べた範囲では,赤痢51.3%,結核16.5%,中耳炎7.8%,肺炎・腹膜炎各3.5%,胆嚢炎,気管支炎各2.6%,その他となっていた.また交代菌としては緑膿菌,変形菌,肺炎桿菌・真菌,それに耐性ブドウ球菌が多かったが,oxacillinなど,耐性ブドウ球菌に有効な抗生剤がでた頃から,グラム陰性桿菌が主要な役割を演ずるようになった.これらのグラム陰性桿菌はどちらかといえば毒力の弱いものと考えられていたが,菌血症やエンドトキシンショックを起こすと重篤である.

免疫不全と感染

著者: 松本脩三

ページ範囲:P.1182 - P.1184

 免疫不全(immunodeficiency)とは,免疫系の主たる機構のいずれかの部分の原発性または続発性の欠陥に伴い,宿主が主として感染侵襲に対して危険な状態におかれる均衡破綻の表現である.小児,成人の別を問わず,原発性と続発性のいずれもが経験されるが,実際的には小児期には前者にウエイトがあり,成人期では後者をとり扱う機会が圧倒的に多い.すなわち抗腫瘍剤使用中の悪性疾患ならびに移植患者を主体としたcompromised host(被感染危険度の高い宿主)であるが,それらは後の章に詳述されているので,ここではそれらのモデルとなる原発性免疫不全症における感染像の特徴を要約する.

白血病と感染

著者: 山田一正

ページ範囲:P.1185 - P.1187

 急性白血病には免疫機能不全および顆粒白血球の量的,質的不全が病態の一部として存在1)するに加えて,強力な抗白血病剤による治療により,これら不全の状態がさらに強まり,その結果,急性白血病の臨床経過における感染症の頻発は至適治療計画の継続上最大の制約となっており2,3),これに向けられる対策が化学療法の成否をきめるということができる.

悪性腫瘍と感染

著者: 坂部孝

ページ範囲:P.1188 - P.1189

 進行した悪性腫瘍患者では,貧血,低蛋白症などを伴い,かつ,腫瘍によって起こる免疫不全が加わり,一方,現今盛んに行われるようになった制癌化学療法や放射線療法などの副作用である白血球減少や免疫抑制作用などとあいまって,細菌感染に対する免疫応答は著しく減弱している.したがって,感染症の発生頻度はかなり高率で,患者の予後に重要な影響を及ぼしていることも少なくない.この問題に関して教室で行った臨床的検討ならびに実験成績について述べる.

老人と感染

著者: 関根理

ページ範囲:P.1190 - P.1191

 わが国の疾患別死亡数において,肺炎は4位ないし5位である.しかし,老人にあっては肺炎が直接,間接に死因となる頻度は高く1),死因第1位の脳血管損傷においても,死亡の際には肺炎の関与していることが多い.信楽園病院と併設の特別養護老人ホーム「松風園」で,過去5年間に死亡した70歳以上の高齢者における疾患別死亡順位では,肺炎がトップを占めている(表1).
 老人では肺炎を中心とする感染症は,化学療法時代の今日でも,直接生命に影響する重要な分野であり,しかもその背景,経過,対策は普通成人の場合と趣きを異にしている.

周産期と感染

著者: 高瀬善次郎

ページ範囲:P.1192 - P.1194

 周産期の感染症は,大別すれば妊娠時,分娩時および産褥時の母体,胎児,新生児,未熟児の感染にわけられる.
 ところで妊婦の感染症には,ウイルス感染,原虫感染,細菌感染などがあるが,周産期の感染では圧倒的に細菌感染が多く,その大多数が,外陰部,膣内などの細菌による上行感染である.すなわち,その典型的な例としては,前期破水時の羊水中への外陰部・膣内の細菌の上昇,羊水感染,胎児子宮内感染がみられる.

腎不全と感染

著者: 上田泰 ,   斉藤篤

ページ範囲:P.1195 - P.1199

はじめに
 特殊病態下での細菌感染症は,その易感染性ならびに難治性などの点で,今日の細菌感染症領域において重大な問題を提起していることは周知のところである.腎不全状態もこの例外ではなく,細菌感染に罹患する機会は極めて高く,またひとたび感染を惹起すれば本合併症によって直接死の転帰をとることさえあることは,日常診療に際してしばしば経験されるところである.
 ここでは腎不全患者の易感染性ならびに難治性について若干の文献的考察を試みるとともに,あわせてその予防対策および化学療法の基本方針などについても触れてみたい.

肝障害と感染

著者: 國井乙彦

ページ範囲:P.1200 - P.1204

はじめに
 近年,難治性あるいは慢性の基礎疾患に合併した感染症,すなわちいわゆる随伴感染症が増加していることが注目されている.これは高度に進歩した現代医学の恩恵によって生命を延長している症例が増加しており,これに感染症が合併する機会が多くなっているととも一因と考えられる.本稿では肝機能障害あるいは肝疾患を有する症例に随伴する感染症の実態とその発生機序,およびその治療,とくにその化学療法について概略を述べてみたい.

感染と修飾

免疫抑制剤と感染

著者: 中村健

ページ範囲:P.1206 - P.1207

はじめに
 免疫抑制剤の開発によって,自己免疫疾患の治療,移植免疫における拒絶反応の抑制およびアレルギー疾患の治療などに免疫抑制療法が広く行われるようになり,医療の進展に大いに寄与している.その反面,易感染,骨髄造血機能障害,腫瘍発生との関連性などの副作用が問題となっている.近年,免疫抑制剤を使用する機会が増加し,これに伴って,医原性の免疫不全状態を招来する条件がふえてきている.それだけにとどまらず,易感染の条件をふやしてきていることにもなる.
 免疫抑制療法に伴う感染症には細菌性,真菌性およびウイルス性のものがある.通常みられる感染症のほかに,宿主側の感染に対する抵抗性の低下により比較的病原性の弱い微生物による感染-Opportunistic or unusual infectionを惹起し,時に致死的な経過をとるものがある.

ステロイドホルモンと感染

著者: 藤森一平

ページ範囲:P.1208 - P.1209

 ステロイドホルモン治療中に感染が誘発されることは,まま経験するところである.こうしたステロイドホルモンの感染に対する作用機序について現在までの知見の大略を御紹介したい.

最近の菌交代現象と菌交代症

著者: 池本秀雄 ,   渡辺一功

ページ範囲:P.1210 - P.1211

 化学療法剤の普及に伴い問題となってきたのが耐性菌の出現,副作用であるが,これについで問題となったのが菌交代症である.この菌交代現象や菌交代症の概念は時代と共に多少変化し,次第に拡大解釈されるようになってきている.

滅菌法の実際

ガス滅菌—酸化エチレン・ガス滅菌について

著者: 小林寛伊

ページ範囲:P.1212 - P.1215

 いろいろなガスが,滅菌,消毒に用いられるが,この中で,今日最も有効な滅菌方法とされているのは,酸化エチレン・ガス滅菌である.この滅菌法の利点は,高圧蒸気滅菌に比し,低温で行えるため,対象物に損傷を与える度合が少ない点である.

放射線滅菌

著者: 佐藤健二

ページ範囲:P.1216 - P.1217

 放射線滅菌法が,医療用具の滅菌にはじめて導入されたのは1953年で,アメリカで行われた.初期の対象品は腸線縫合糸(カットガット)で,これは蛋白質を素材として(加熱できない)モノフィラメント様に作られており(EOガスが内部まで入らない),それまでは本品に適した滅菌法はないとされていたが,放射線のもつ強い殺菌力と,物質を通す透過力が強いという点がこのガットの滅菌を可能にしたといわれている.
 一方,わが国では,1971年2月から本法の導入が認められ,滅菌施設も2ヵ所に建設されている.これらの施設の構造(図1)は,原理的にはどちらも同じで,60Coをつめたカプセルの間を被滅菌物がベルトコンベアシステムによって通過するようになっている.滅菌条件である照射線量は,ベルトコンベアのスピードを変えることによって任意に決定でき,同条件で多量のものが自動連続的に滅菌できるようになっている.

バイオクリーン

著者: 都築正和

ページ範囲:P.1218 - P.1220

 バイオクリーンルーム(Bioclean Room)という言葉は,多くの医療関係者にとって耳馴れないものと思う.精密工業(航空機部品,IC・LSIなどの電子工業部品等)で使用されるようになった"Clean Room"(空気清浄室)は,製造工程中に部品につく微細なゴミが不良品の発生率を高めるので,製品管理のために発展した手段であった.この空気中微細粒子に対する管理の手法を空気中の微生物にまで広げた考え方が"バイオクリーンルーム"である注).NASA(米国航空宇宙局)の月ロケット計画で,月面に地球上の微生物を持込まないために,この技術が徹底的に研究され1,2),また,病院その他厳重な微生物コントロールを必要とする方面に応用されるようになった3)

輸入伝染病

最近の輸入伝染病

著者: 小張一峰

ページ範囲:P.1222 - P.1225

 伝染病という言葉が与える印象が,赤痢,腸チフス,ジフテリアなどの法定伝染病を直ちに想い起こさせた時代はすでに終わったようである.50年の歴史をもつ日本伝染病学会が,その名称を感染症学会と変更したのもこの間の事情を物語るものだろう.そして,伝染病という言葉が,たまに輸入されて話題となる天然痘とかコレラなどの海外のある地域に流行する疾病を,輸入伝染病と呼んで慣用されるようになってきた,要するに,伝染病という言葉のもつニュアンスが,従来わが国に常在していた法定伝染病から,天然痘とかコレラなどの検疫伝染病あるいはマラリアなどへと移っていった感がある.
 筆者は1974年4月までWHO西太平洋地域事務局で伝染病の仕事をしていた関係から,帰国以来,いわゆる輸入伝染病についての経験を話したり書くことをしばしば要請されたので1〜3),本誌の記事もすでに申し述べたことと重複するところのあることをご寛容願いたい.

座談会

ウイルス感染症をめぐって

著者: 南谷幹夫 ,   加地正郎 ,   平山宗宏 ,   沼崎義夫 ,   藤井良知

ページ範囲:P.1226 - P.1236

 内科においては,感染症というと,とかく細菌感染症の方に目を注ぎがちだが,最近,脚光を浴びている肝炎を持ち出すまでもなく,ウイルス感染症の持つ意味合いは大きくかつ重大なようだ.しかも日常診療において遭遇する患者の数も少ないものではない.そこでこの分野の最新の話題を,臨床との接点に焦点をあてながら,まとめていただいた.

カラー・グラフ 臨床医のための病理学

XXIV.内分泌疾患,寄生虫

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1238 - P.1239

 このシリーズもいよいよ最終段階に入り,2回に分けて,内分泌疾患,寄生虫,奇形の症例を提示する.
 内分泌疾患はクッシング症候群(Cushing's syndrome)およびアルドステロン症(aldosteronism)を示す.ともに副腎皮質の腺腫や過形成が原因である.前者では肥満,高血圧,糖尿などが起こり,後者では筋疲労,高血圧,低カリウム血症などが主である.
 他に副腎髄質の神経芽細胞腫(neuroblastoma),バセドウ病を示す.

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内科専門医を志す人に・トレーニング3題

著者: 上野幸久 ,   荻間勇 ,   高階経和

ページ範囲:P.1249 - P.1251

 問題1.下記のうち正しいものはどれか.
 ①HB抗原はB型ウイルス肝炎と密接な関連がある.

内科専門医を志す人に・私のプロトコール

VII.神経系

著者: 西崎統

ページ範囲:P.1252 - P.1253

●臨床雑誌から新しい症候群を
 内科専門医試験の受験対策の1つとして,人名のつく疾患または症候群について知っておかねばならない.日常診療において,比較的よくみられるものから,珍しい,また新しい症候群まである.これらは内科の各分野にわたっている.なかでも,とりわけ神経系疾患に多いように思われる.いずれにしろ,人名のつく疾患,また症候群は何千とあり,その中には疾患の概念すらはっきりしないものもある.膨大な知識を要求される医学において名前をみても,その疾患,症候群のわからないという非能率性を指摘されるが,一度知ってしまうといちいち説明をしなくてもよいという能率性も指摘されるであろう.今日病因が確定し,明確な疾患として取り扱われているものも,もとをただせば先輩達が一群の所見に遭遇して,その検討を重ねた結果,体系化され,病因および病態が確立されたものである.もちろん,何千とある人名のついた疾患,また症候群の全てを知る必要はないが,臨床研修中には,できるだけ多くを知るように努力することが望ましい.そのためにも,問題点の多い症例,また初めて経験する疾患については,成書または文献を一度は目を通しておくことが大切である.
 内科専門医試験では筆答,口答にかかわらず,比較的新しい疾患,あるいは症候群についての知識を要求されることがある.その対策の1つとして必ず新しい学会雑誌また臨床雑誌に目を通す習慣は,私の経験上非常に効果があったと思われるので,とくにおすすめしておきたい.

超音波診断の読み方

膵疾患,腹部腫瘤

著者: 北村次男

ページ範囲:P.1241 - P.1244

はじめに
 最近まで,非観血的で直接的な検査法のなかった膵の形態面での検索にも,ようやくSe75-セレノメチオニンを用いてのシンチカメラに続いて,この領域では画期的な進歩をきたした十二指腸内視鏡下膵管造影法の開発により光明が見出されている.一方,超音波検査でも断層法が行われるようになり,膵の断層像が描出できるようになった.この超音波断層法は造影剤の注入などの補助的手段を用いることなしに,軟部組織の形態検査が可能であり,膵以外の腹腔内臓器や腹部腫瘤の検査に非常に有用である(ただし消化管の検査には適していない).
 触診で,またはその他の検査で腹部腫瘤を認めた時,すぐに適用すべき検査は,この超音波断層法であり,本検査により診断に必要な多くの情報が簡単に得られる.ここでは膵疾患,および種々の腹部腫瘤の症例の超音波断層とその読み方を紹介する.

演習・X線診断学

単純X線写真による読影のコツ(7)腹部単純写真

著者: 大澤忠

ページ範囲:P.1246 - P.1248

 実質性臓器のうち腎は周囲全体が,肝,脾,膀胱などは部分的に周囲を放射線透過性の脂肪組織で囲まれているので,腸管ガス像などが邪魔しない限り観察できます.腸腰筋,腰方形筋陰影も同様です.しかし,やせた人や慢性疾患の患者では十分な脂肪層がなく,臓器輪郭がはっきりしないこともあります.
 腎については,大きさ,位置,形,軸,異常石灰像の有無などについて観察します.

診断基準とその使い方

aplastic anemia-PNH syndrome

著者: 高橋隆一

ページ範囲:P.1266 - P.1268

 発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria;以下PNHと略す)は,血色素尿を伴う慢性溶血性貧血であり,他方,再生不良性貧血(以下再不貧と略す)は,骨髄の無または低形成のたあに全血球減少症を呈し,溶血症状の無い疾患で,両者は全く別個の疾患と考えられていた.しかし,1944年,DacieおよびGiplinは,Fanconi型再不貧の経過中に溶血を認め,その時の赤血球がPNHとしての異常を示したことを報告し,1961年,DacieおよびLewisは,PNHが多彩な症状を示し,骨髄の低形成を示す例のあることを報告した.近年,簡便なスクリーニング試験であるsugar water testの普及によってPNHの報告例が増加し,①再不貧の経過中にPNHとしての血球異常や臨床症状を示す症例,②PNHの経過中に全血球減少症,骨髄の無または低形成を示す症例,③一過性にPNHから再不貧,再不貧からPNHの型を示す症例が報告され,1967年,LewisおよびDacieによりaplastic anemia-paroxysmal nocturnal hemoglobinuria syndrome(以下再不貧-PNH症候群と略す)が提唱されて以来,両者の関連が注目されるようになってきた.

緊急時の薬剤投与

腎不全で透析が行えないときの対策

著者: 中川成之輔 ,   渡辺一彦

ページ範囲:P.1270 - P.1271

 腹膜透析も含めるのであれば,透析が行いえないときを想定することはむずかしい.腹膜透析であれば,生理食塩水に電解質やブドウ糖を混じて,緊急用の透析液をつくり,腹壁を切開して,何らかの滅菌されたチューブを腹腔内に導入し一定時間後に排液すれば足りる.事実,腹膜灌流セットと称する塩化ビニール管回路や自動装置のないころ,筆者は自家製のチューブと液で,透析を行った,その程度のことは,特別の設備のない一般病棟でもできるはずである.緊急透析がいかなるかたちにせよ絶対に行えないということは少ないと思われるが,高度の腹膜癒着があって,腹腔内穿刺が危険であるとか,血液透析をやるにしても,1〜2時間も待てないような時の対策は一応もっている必要がある.

臨床病理医はこう読む

血液凝固検査(1)

著者: 藤巻道男

ページ範囲:P.1272 - P.1273

異型幼若顆粒白血球の出現
 歯肉出血と発熱を主徴としているが,貧血が高度であり,その貧血はMCH 34pg,MCV 95μm3にて正色素性正球性貧血である.また白血球数の減少と血小板数の減少があり,血清鉄は160μg/100mlと増加している.しかし網赤血球数は30‰であり,絶対数では6.9万/mm3と正常範囲内である.この検査成績より再生不良性貧血,鉄欠乏性貧血,巨赤芽球性貧血(悪性貧血)などは否定することができる.
 血液塗抹標本では写真のような前骨髄球に近似した異型性の強い細胞が多く,核網は微細からやや粗で,核小体は1〜3個あり,原形質は淡青または多染性で,多数の粗大または大小不同のアズール顆粒がびまん性にあり,時にアウエル小体のみられることもある.このような前骨髄球様細胞をpromyelocytoid,abnormal promyelocyteといっている.この細胞はペルオキシダーゼ反応は陽性であり,PAS反応も陽性である.

図解病態のしくみ 循環器シリーズ・5

肺水腫

著者: 博定

ページ範囲:P.1274 - P.1275

 肺水腫の原因 肺水腫の原因には,図に示したように心臓性のものと心臓外性のものとがあるが,日常の診療で,最も頻繁に遭遇するのは,心臓性のものである.事実,肺水腫の多くは,うっ血性心不全に続いて発生するので,軽度のいわゆる間質性肺水腫(interstitial pulmonary edema)が,うっ血性心不全と混同されることが多い.しかし,同じ肺水腫が頭蓋内圧亢進,肺血栓,高血圧緊急症,重症腎炎,高山病,溺水あるいはショック肺などに伴って突然発生することが,よく知られているので,その病態生理を単純に左室不全,そして高度の肺うっ血で説明しきることはできない.一言にしていえば,肺水腫は心肺性危機の急激な集約的表現であり,その治療に際しては,循環生理と呼吸生理に関する知識を動員してかからなければいけない.

小児の検査

肺活量

著者: 隅田展廣

ページ範囲:P.1276 - P.1277

 肺活量の測定は,器具もそろっており,小児にも割合簡単に行い得る検査である.これにより肺機能の面からは,拘束性障害の有無を判定する情報を得ることができる.しかし肺活量だけを測定することは少ない.肺活量は容量を示すだけで時間の因子が入っていない.したがって一般には,肺活量の測定のほかに,最大吸気量,予備呼気量,努力肺活量,1秒量,1秒率および最大換気量などを同時に測定する.これらのデータを総合して利用することが多い.

皮膚病変と内科疾患

小水疱および水疱を主徴とする内科疾患

著者: 三浦修

ページ範囲:P.1278 - P.1279

全身に散布する水疱性疾患
 汎発性帯状疱疹 身体の一部に,特定の神経支配領域に一致した典型的帯状疱疹病巣を証し,それに加えて紅暈を伴う小水疱が全身に散布する.発熱などの全身症状を併発することと併発しないこととある.血液疾患,細網症,免疫不全などの検索を要する.類似の皮膚症状としては熱性疾患の解熱時に紅暈と自覚症を欠く小水疱が,とくに胸背両面に多く,突発散布することがあり,水晶様汗疹と名づけられ,間もなく破開して治癒する.
 単純性癒疹 初感染時に全身に散布することがある.一般に重篤な全身症状を伴う.稀である.

medicina CPC

多発性関節痛の寛解増悪をくり返し,約10年間寝たきりの状態で,さらに心窩部痛,全身浮腫などをきたしてきた70歳女子の例

著者: 高橋隆一 ,   柏崎禎夫 ,   千葉省三 ,   河合忠

ページ範囲:P.1254 - P.1265

症例 70歳 女
 入院 昭和49年5月11日.
 転帰 昭和49年6月15日死亡.

オスラー博士の生涯・30

ジョンス・ホプキンス大学医学部での学生の臨床教育

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1281 - P.1283

 オスラーは,ボルチモアに赴任後,病院ができると,卒後の若い区師の教育と研究,内科のテキストブックの執筆に多忙な毎日を過ごしたが,1894年秋からはいよいよ待ちに待っていた医学部3学年の学生の臨床教育をはじめるということになった.

How about……?

どのような内科臨床医として育つべきか……切実な問題です

著者: 革島恒徳

ページ範囲:P.1284 - P.1287

 ●まず,略歴を簡単にどうぞ.
 昭和17年,京都の生まれです.42年に関西医大を卒業して,1年間大学病院で研修し,その後続いて4年間の研修はこちら(神戸市立中央市民病院)で,すませました.兄弟は3人,私がまん中で,父も弟もドクターです.

洋書紹介

—Lothar Hallmann u. Friedrich Burkhardt著—Klinische Mikrobiologie—

著者: 国井乙彦

ページ範囲:P.1181 - P.1181

豊富な図表とていねいな解説の臨床細菌学の好書
 微生物感染症の領域において,学問的また実際面においても近年かなりの進歩がみられている.これを反映して,感染症の診断,治療の面において最も基本的に重要な意義をもっているいわゆる臨床細菌学の著書も数多くみられる.なかでも本書はとくに臨床細菌学を勉強しようとする医師,臨床検査技師,学生を対象として書かれたものと思われるが,本書はさらに一般臨床医,感染症の診療に関心を持つすべての医師,学生にとっても大いに参考になる好著である.
 まず総論で,微生物の系統的分類に触れ,検体の採取,適切な処理およびその臨床細菌学的検査結果の意義づけについて述べ,臨床的に重要なものを重点的に要領よくまとめてある.

—B. H. Par & R. A. Good著—Principles of Modern Immunobiology;Basic & Clinical

著者: 折田薫三

ページ範囲:P.1194 - P.1194

臨床から基礎,基礎から臨床への絶えざるサイクル
 近年,免疫系が生物の個体維持に必須欠くべからざるものであることが明らかとなるにつれて,免疫学なかんずく免疫生物学は一科学の分野を越えて広く医学,生物学の領域に拡大しつつあるのは当然である.その反面,年毎に増加するおびただしい免疫学的情報,各人各様の解釈のため専門家といえども免疫生物学のなかでの自己の占める位置そして目的をもともすれば見失いがちである.ましてや,学生や臨床に取り組んでいるわれわれにね免疫をいやが上にも難解なるものとしている.平易にして深い最近の解説書がまたれていたゆえんである.はからずも本書は臨床家の立場から,患者における免疫生物学的考察を目的として基礎的知見より出発して書かれたものであり,われわれの要望を満たして余りあるものといえよう.
 Good一門は免疫生物学の基礎から臨床への接点に立つ世界の最高峰にあるごとは周知である.彼らの多くの仕事を加えて偏ることなく書き上げられたみごとな解説書である.

—Chr. Zywietz & B. Schneider編集—Computer application on ECG and VCG analysis

著者: 大国真彦

ページ範囲:P.1225 - P.1225

心電図およびベクトル心電図分析におけるコンピュータの応用
 本書は1971年10月にHannoverにおいて開催された第2回情報処理のための国際連盟のカンファランスで発表されたものに各発表者が自ら手を入れ,それを編集したものである.各著者の校閲のために出版がかなり遅れたが,それだけに内容については各演者の意見が十分に表されているものである.
 本書ではまずECGとVCG分析におけるコンピュータ利用の現況について述べられた後,つぎの各項目が主題としてとりあげられ,それぞれについて主討論者のまとまった意見の後,数名の研究者による討論がなされ,その討論を含めて収載してある.

—P. N. Yu & J. F. Goodwin監修—Progress in Cardiology vol.3

著者: 依藤進

ページ範囲:P.1236 - P.1236

世界中の学者の寄稿による12章
 Paul N. Yu, John F. Goodwin監修のProgress in Cardiology第3巻は,1,2巻と同じ形式を踏襲したもので,世界中の学者の寄稿による12章から成り立っている.
 第1章では,冠動脈疾患の疫学がMinnesota大学公衆衛生のBlackburn教授によって取り上げられ,心筋硬塞のRisk Factorが爼上に乗せられ,第2章では,心臓の刺激発生と興奮伝導の問題が,Atabarna大学のMc Lean, Weldo博士,James教授によって取り扱われ,解剖学的ならびに生理学的に明快な説明が与えられ,続いて第3章では,南アフリカ共和国のSchamroh教授が心室性不整脈の成因と機構について,基礎的な法則を懇切に説明した後,種々の心室性不整脈の発生の一元的な考え方を提案している.第4章は,運動循環器病学とでもいうべきもので,SeattleのBruce教授によって,最近の運動負荷試験の生理,解釈,テスト中の注意,運動に対する適応の問題等々が詳しく論ぜられ,第5章では,IrelandのPantridge教授によって,急性心筋硬塞発作後1時間以内に現れる不整脈の問題が取り上げられ,数時間して現れる不整脈と異なり,植物神経の関与が大きいことが論ぜられている.第6章では,ParisのMeyer教授により,高血圧の病態生理とレニン,アンジオテンシン系の問題が基本的にかつ批判的に取り上げられ,第7章では,Goodwin教授,Hallidie-Smith博士によってEisenmenger症候群が極めてオーソドックスに取り扱われている.第8章では,英国のLeeds大学Linden,Harry教授が薬剤の評価のしかたの原理と方法を述べつつ,βプロッカー,propranololの問題点を取り上げ,第9章では,LondonのRoss,Parker博士によって弁置換の現況が述べられ,第10章では,オーストラリアのPitney教授によって長期抗凝固療法の問題が簡単に述べられている.第11章は最近進歩してきたEchocardiographyに関するもので,RochesterのShah博士,Gramiak教授が,その原理,診断価値を論じ,次いで多くの先天性ならびに後天性心疾患のEchocardiographyの特徴を簡潔に述べている.そして最後の第12章はオーストラリアのMc Credie博士による肺水分量の測定であって,現在用いられている肺水分量測定の価値と制限,および種々の心肺疾患の肺水分量の問題が論じられている.

話題

臨床ウイルス学の将来を示唆—第49回日本感染症学会から—ウイルス関係

著者: 加地正郎

ページ範囲:P.1173 - P.1173

 ウイルスに関するものは,特別講演およびシンポジウム各1題の他は,一般講演としては総数77題のうち17題と,いささか淋しいものであった.

MorphologyからPhysiologyへの転換—第61回日本消化器病学会総会から

著者: 小林絢三

ページ範囲:P.1176 - P.1176

 第61回日本消化器病学会総会(会長:本庄一夫教授)は日本医学会総会に先立ち,同じ国立京都国際会館を舞台に3日間にわたって開催された.特別講演3題,シンポジウム2題,パネル1題,一般講演366題と近年にない大規模な学会であるといえよう.これは発表演題も食道から大腸まで消化管全域を網羅し,また,これと関連して胆,膵疾患,さらにこれらの臓器相関に関するものなど,そのテーマが拡大されたためであろう.限られた誌面で学会の全貌を紹介することはできないが,シンポジウムを中心にのべたい.

炎症のしくみ—第19回日本医学会総会のシンポジウムから

著者: 水島裕

ページ範囲:P.1177 - P.1177

 炎症の機構というテーマで,今回の医学会総会において,炎症に関する話題がとりあげられた.司会者の大島,林,両教授が述べたように,炎症反応はまず臨床的,機能的,形態学的変化としてとらえられたが,生化学,免疫学の進歩に伴い,炎症反応がさらに詳しく解明されるようになった.このような観点から炎症を見つめ,現時点における合理的な炎症の治療の樹立に貢献するために行われたのが今回のシンポジウムである.筆者もその一員として参加したが,そこでとりあげられた大きな問題点を考えてみると,第1には炎症のmediatorのこと,第2は炎症の場のこと,第3は炎症抑制の意義がいかなるものであるか,の3点であったように思う.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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