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文献詳細

雑誌文献

medicina12巻9号

1975年08月発行

文献概要

今月の主題 甲状腺疾患のすべて 臨床的アプローチ 甲状腺機能亢進症の治療

眼症状とその治療

著者: 入江実1

所属機関: 1東邦大第1内科

ページ範囲:P.1372 - P.1373

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眼症状の分類と成因
 バセドウ病の眼症状には大きく分けて2つのものがある.1つはバセドウ病の成因そのものに直接結びついたもので,眼の種々の組織に腫脹,浮腫,ムコ多糖類沈着,細胞浸潤,循環障害などの変化をきたし,眼球突出をはじめ眼球運動障害,とくに上方注視障害,複視,眼球および眼瞼の浮腫,結膜の浮腫状腫脹,角膜潰瘍,視神経障害による視力低下などをきたすものである,このうち眼球突出は以前バセドウ病のTriasの1つとして考えられた時代もあるが,実際には眼球突出のない患者も多くみられ,その比率はほぼ半々であると考えてよい.これら眼症状の成因はバセドウ病の成因が未だ不明であるので,やはり不明であるといわざるをえないが,LATS,TSH以外の甲状膝刺激物質が,直接的または間接的にこの種の眼症状の発現に関与している可能性があると考えられている.またある種の免疫反応が甲状腺でおこり,その反応産物がリンパ流を通じて眼球に至るためこのような症状を発現するというKrissらの説も極めて興味深い.
 第2のバセドウ病の眼症状はバセドウ病の結果もたらされた血中甲状腺ホルモンの過剰状態に由来するものである.これは甲状腺ホルモン自身およびその過剰のための交感神経系の興奮によって惹きおこされるもので,次のようなものがある.まずlid retractionとよばれるもので,これは上眼瞼筋の攣縮により上眼瞼がつり上がり,角膜との間に鞏膜の白い部分がみえるもので,患者の顔を動かさないで目だけで足下をみるようにさせると,さらにはっきりと症状があらわれ,lid lagまたはvon Graefeの症状とよばれる状態を示す.同様の機転によって眼裂の拡大(Dakympleの症状)があり,患者は一見驚いた時のような表情を示す.また患者のまばたきの回数は減少し(Still-wayの症状),上方凝視の際に額にしわがよらない(Joffroyの症状)などの症状をきたす.ここでとくに注意したいのは,von Graefeの症状やDalrympleの症状のために一見患者の眼が大きくみえるのを,真の眼球突出と誤らないようにすることである.眼球突出とはあくまでも眼球が前方にせり出すことであり,大きな眼とは異なることを常に念頭において患者をみて欲しい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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