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文献詳細

雑誌文献

medicina13巻1号

1976年01月発行

忘れられない患者

住血吸虫症を発見して

著者: 渡辺亮

ページ範囲:P.147 - P.147

文献概要

 この十数年来,診療技術が著しく進歩してきた.そして昔,私どもが医局で担当し,"珍しい一例"として症例報告を行った患者ですら,一GPのところで偶然発見されるということも稀ではないように思われる.次に珍しいというか,一生涯忘れられない一症例を述べてみたい.
 患者は38歳の男性で配管工,主訴は慢性のテネスムス(裏急後重)を伴う下痢.身長172cm,体重68kgで,半年以上,1日数回の下痢が出没した人とは思われない体格のよい人で,スクリーニング検査として,便(潜血,虫卵),便の一般および赤痢菌培養,尿蛋白,糖,ウロビリノーゲン,沈査をみたが,いずれも異常はない.ただ,右季肋部に触れた,割に軟らかい1横指の肝臓が気になったため,脾腫,舌苔,静脈瘤などは認めなかったが,一応,肝機能検査および血液一般検査を試みた.結果は,モイレングラハト値,GOT,GPT,ALP,TP,A/G,ZTT,BSG,T-Cholesterol,Hb,R,Wなど,すべて正常であった,専門医に依頼して施行した胃レントゲン像も特変はない.困り果て,仕事の上の悩みや経済状態,さらにはSexなどにも思い切った質問を行ったが,快食(快便は別として),快眠は問題なく,食欲も十分あるようである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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