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文献詳細

雑誌文献

medicina13巻11号

1976年11月発行

今月の主題 電解質異常のすべて

どんな電解質異常が起こるか

ADH異常

著者: 吉田尚1

所属機関: 1自治医大内科

ページ範囲:P.1526 - P.1527

文献概要

ADHの作用と血清Na値
 抗利尿ホルモンADHは腎からの水分排泄を調節しているホルモンである.ADHが作用すると腎の集合管は水透過性が亢進し,尿中の水分の再吸収が促進される.この場合,尿中の電解質再吸収には直接の効果がないので,尿中に電解質がそのまま残留し,尿が濃縮される,逆に体内では電解質量に変化なく,水分量のみが増加する.細胞外液の浸透圧は体内の電解質量と全水分量の比(Nae+Ke/TBW,Nae:exchangeable Na,Ke:exchangeable K,TBW:全身体内水分量)と密接な関係があることが知られているが,ADHはこの分母をなす身体内水分量を分子の電解質量と関係なく増加させる.したがって,ADHが作用すると細胞外液(血漿)浸透圧は低下傾向を示す.この細胞外液あるいは血漿浸透圧を構成する成分としては血清Na濃度が重要で,ΠEC=1.8Nas+Aの式が成立する1),ここでΠECは血漿浸透圧,Aは血糖および残余窒素による浸透圧である.したがって,血糖あるいは残余窒素に著しい変動がない限り,血漿浸透圧の増減は血清ナトリウム値の増減によく反映する.ADHが作用して身体内水分量が増加すると細胞外液浸透圧が低下し,一般血清検査の上で血清ナトリウム低下傾向として示される.逆に血清ナトリウム値に異常を認めた時には,これがADHの分泌異常による可能性を考慮する必要があるわけである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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