icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina13巻12号

1976年12月発行

文献概要

臨時増刊特集 日常役立つ診療技術 治療篇

8.高圧酸素療法

著者: 古田昭一1

所属機関: 1三井記念病院胸部外科

ページ範囲:P.2009 - P.2016

文献購入ページに移動
 大気圧よりも高い気圧環境のなかに患者を収容し,高濃度の酸素を投与することにより症状の改善をはかろうとする治療法を高圧酸素療法と定義することができる.高圧医学の発達の歴史は新しいものではなく,1662年,イギリスの生理学者Henshawは肺疾患の治療を目的として高圧室を作り,急性例は高圧で,慢性例は低圧で治療した.1830年代になり,フランス人によってle bain d′ air cornprimé(圧縮空気浴)と称する治療法が流行し,多くの臨床例が報告された.1878年,Paul Bertにより高圧生理学の基礎が完成され,また彼は神経系に対して高圧酸素が毒性をもつことを実証した.
 高圧酸素を治療として用いたのは,1887年,Valenzvelaにより肺炎に使用されたのが最初であるとされている.1895年,Haldaneは高圧酸素がCO中毒を防止することを実験的に証明した.しかし,これらの適用が理論的な根拠を欠いたために,流行は廃れ,さらには酸素中毒に関する生理学的,薬理学的な研究が進むに従い,高圧酸素を治療に応用しようという機運は生まれない状況のまま約50年を経過した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?