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雑誌目次

雑誌文献

medicina13巻6号

1976年06月発行

雑誌目次

今月の主題 肺のびまん性陰影をめぐって

理解のための10題

ページ範囲:P.832 - P.834

診断のすすめ方

X線写真による鑑別

著者: 野辺地篤郎

ページ範囲:P.771 - P.775

はじめに
 肺のびまん性陰影とはどのような陰影であるかについて考えてみると,「びまん」というコトバは広くひろがっている意味をもち,限局していないで広くひろがった陰影を意味している.小さな粒状影が広くひろがっている場合には,しばしば散布性という形容が用いられるから,ここではびまん性・散布性陰影のX線診断について述べようと思う.

原因疾患診断のすすめ方

著者: 伊藤和彦 ,   酒井秀造

ページ範囲:P.776 - P.777

 びまん性肺疾患の鑑別診断は内科一般の鑑別診断と変わらないといってよいであろう.すなわち,全身性疾患のひとつの表現としてびまん性の肺所見を呈することの方が,肺のみの疾患の場合より,はるかに多いからである.最も大切なのは病歴と理学的所見,およびX線像である.これらは患者にほとんど苦痛を与えず,情報量も多く,その結果により検査の進め方も大いに変わってくる.以下,筆者らが留意していることを順を追って述べる.

肺機能

著者: 滝島任

ページ範囲:P.778 - P.780

 びまん性散布性肺疾患の病因は多種であり,形態的にみて病変の部位も肺胞系から気道系にわたり,いろいろ異なった局在を示すから,招来される呼吸機能障害も多様であり,画一的には論じられない.したがって,診断にあたっては,可能なかぎり各種の呼吸機能検査法を駆使し,多面的に評価し,的確な判断を下すのを原則とする.すなわち,通常ルチーンに行われるスパイログラフィー,血液ガスの検査を出発点とし,とくに肺の圧量曲線流量曲線,肺拡散能力の組み合わせによる評価が必要とされる.
 肺にびまん性陰影を認める場合,形態と機能の関連性からまず検討しなければならない綱目として,

肺生検の価値—とくに開胸肺生検(Open Lung Biopsy)について

著者: 正木幹雄 ,   伴場次郎 ,   西山祥行

ページ範囲:P.782 - P.783

はじめに
 肺のびまん性陰影をもつ疾患群では,種々の診断法があるが,最も確実で,適格な方法は開胸肺生検――Open Lung Biopsy以外にない.
 Rayらも,開胸肺生検が最も満足が得られる生検標本を取ることができると述べている.
 昭和34年以来,開胸肺生検を行い,幾多のびまん性肺疾患の診断および治療上,役立ってきたが,未だ,数多くのびまん性肺疾患群があり,それらの診断治療の解明のために,的確な標本を得られることにも,開胸肺生検の価値はすこぶる大である.

感染によるもの

肺感染症

著者: 荻間勇

ページ範囲:P.786 - P.787

 肺のびまん性陰影を示す場合の原因は極めて多彩であるが,これを大別すると,感染性,悪性腫瘍,循環異常,代謝性,異物吸入によるもの,系統疾患の一分症としてのもの,原因不明のものなどに分けられる.近年,原因不明のびまん性間質肺炎,膠原病に伴う肺臓炎,大気汚染,公害などに関連して異物吸入による肺線維症などが大いに注目されつつあるが,感染症に由来するびまん性陰影については,比較的稀のものとして一般的にはあまり顧慮されていないように思われる.しかし,びまん性陰影を示し得る感染性疾患は数多くあげられており(表)1),細菌性,ウイルス性,リケッチア性,マイコプラスマ性,寄生虫性,真菌性,スピロヘータ性と,ほとんどすべての病原微生物が問題になるといっても過言ではない.
 これらのすべてについて網羅することは,誌面の都合もあり,不可能であるので,これらの中から,筆者らの経験,見聞の中から重要と思われるものをとりあげ,その特徴,鑑別診断上のポイント,治療の要点などについて述べてみたい.

粟粒結核の現況

著者: 岡安大仁 ,   勝呂長

ページ範囲:P.788 - P.789

 抗結核剤の開発・普及に伴い,結核症の予後は著しく改善したが,粟粒結核についても例外ではなく,かつての致死的疾患から治りうる疾患へと変貌した.しかし,本症は発病年齢の高齢化や,基礎疾患あるいはステロイド療法の影響など新たな問題点をもって再登場してきた観もある.このことは,第48回日本結核病学会総会のシンポジウム「最近の粟粒結核症1)」(司会萩原忠文教授)によってかなり明らかにされたし,また,海外の2,3の報告2〜4)にも示されている.すなわち,肺のびまん性陰影を呈する疾患を論ずるにあたって,本症の占める比重は,現在でも決して軽くはないわけである.以下に,前述シンポジウムの報告を中心に,本症の現況を概述する.

汎細気管支炎

著者: 谷本普一 ,   蒲田英明

ページ範囲:P.790 - P.791

 びまん性汎細気管支炎は,呼吸細気管支を中心に生じる慢性炎症で,細気管支の狭窄ないし閉塞のため,つよい呼吸障害が現れろ.臨床症状は,咳,痰,呼吸困難など,他の閉塞性肺疾患と類似する点が多いが,胸部X線写真上.びまん性散布性に小粒状影が認められるのが特徴的所見となっている.

悪性腫瘍

細気管支肺胞上皮癌—散布型

著者: 渡辺昌平 ,   長尾啓一

ページ範囲:P.792 - P.793

 細気管支肺胞上皮癌は,その胸部X線像がしばしば肺炎,粟粒結核,珪肺などの他肺疾患に類似するため,初診時に非癌性肺疾患に見誤られやすい癌腫である.その発生頻度は諸家により原発性肺癌の1〜15%を占めると報告されているが,当施設においては約3%で,男女差はみられない1).本疾患が最初に報告されてから1世紀を経た今日においても,その腫瘍細胞の発生母地は論議の的であり,細気管支上皮(Clara細胞)発生説2),肺胞上皮II型細胞発生説3),およびそのいずれからも発生しうるという説4)の3説がある.それゆえ,疾患名としても肺胞上皮癌,細気管支癌,細気管支肺胞上皮癌,肺胞細胞型腺癌,終末細気管支癌など,さまざまな呼称が用いられている.病理形態学的肉眼像から,限局腫瘤型,限局浸潤型,および散布型に細分される.本稿では散布型について述べる.

lymphangitis carcinomatosa

著者: 西本幸男 ,   勝田静知

ページ範囲:P.794 - P.795

 〔症例〕 小○千○,41歳,主婦.
 主訴 呼吸困難.
 家族歴 特記すべき事項なし.

転移性肺腫瘍

著者: 岡田慶夫

ページ範囲:P.796 - P.800

はじめに
 肺には全身の静脈血が還流するという解剖学的関係から,諸臓器の悪性腫瘍の血行性転移が高頻度に招来される.このような転移病巣は,転移性肺腫瘍metastaticlung tumorsと一般によばれている.かつては,転移性肺腫瘍はすでに治療の範囲を越えたものとして,対症的治療が行われるにすぎなかったが,近年では,これに対して各種治療法が積極的に行われるようになってきた1)

代謝疾患によるもの

わが国における肺胞蛋白症

著者: 田村昌士 ,   中山修二

ページ範囲:P.802 - P.803

 肺胞蛋白症pulmonary alveolar proteinosisは1958年Rosenら1)により最初に報告されたが,その特異な病像,とくに肺の代謝に関連した疾患として,最近注目されてきている.臨床像は咳,痰,進行性の呼吸困難などの自覚症状があり,胸部X線上びまん性の粒状陰影あるいは雲絮状陰影を呈し,いわゆる間質性肺炎の範疇に入るが,組織像では胞隔の病変が軽く,PAS陽性で,脂質に富む蛋白様物質が肺胞腔に充満しているのが特徴である.最近,本症にみられる蛋白様物質に対する生化学的分析や,肺胞クリアランス機構の解明など本症の病因に関連する研究が進められているが,まだ解明のいとぐちを把握する段階には到達していない.しかし,治療法は徐々に進歩し,反復気管支肺洗滌療法による改善例がかなり報告されてきており,早期診断,早期治療が望まれる.わが国では,1960年岡ら2)の報告に始まり,現在まで筆者らの集め得た症例は40例に達している.本稿では,これらの症例を中心に本症の一般的病像について述べる.

わが国における肺胞微石症

著者: 立花暉夫

ページ範囲:P.804 - P.805

 肺胞微石症は,世界的にみて日本に多く発見され,1954年協同研究者高橋(当時阪大3内)による日本第1例の発見(当時世界文献例約10例)以来,1963年末の全国調査(堂野前,高橋,橋田,立花),1973年末の集計調査(立花)により,少なくとも72例が発見され,最近も肺生検報告例がある,患者は北海道から鹿児島県まで全国に分布している.本稿では,これら日本の症例について得た知見を主にして述べる.

じん肺

わが国の有機じん肺

著者: 梅田博道

ページ範囲:P.806 - P.807

症 例
 患者 53歳,女性,家婦.
 主訴 息ぎれ,ぜんめい,ぜんそく様発作.

わが国の無機じん肺

著者: 瀬良好澄 ,   姜健栄

ページ範囲:P.808 - P.810

 じん肺とは,各種の粉じんを吸入することによって起こる肺線維症をいい,多くは職業的に発生する.無機じん肺の種類とその起因物質を表に示した.これらのじん肺のうち,遊離けい酸(SiO2によるけい肺は,その発生があらゆる産業に分市しているため,患者数が最も多く,結核を合併しやすい特徴を有する.石綿肺は肺癌および悪性中皮腫を合併する頻度がすこぶる高い.

Systemic lung disease

わが国における肺サルコイドージス

著者: 細田裕

ページ範囲:P.811 - P.813

 サルコイドージスは全身病であるが,そののぞき窓は胸部X線像にある.わが国では全症例の95%が胸に病変をもち,その6割は肺門だけ,3割以上は,肺門+肺野型であり,肺のみに影をもっているのは6%位である.この病気は,わが国に根をおろしてまだ時が浅いので,外国のような,ひどい肺線維化の例は数少ないが,今後,古い例がだんだんたまってくることは想像にかたくない.

血液・リンパ系疾患

著者: 堀内篤

ページ範囲:P.814 - P.815

 血液・リンパ系疾患には肺病変を合併するものが比較的多い.とくに白血病や悪性リンパ腫に起こりやすく,貧血症や多血症でも認められることがある.この場合,原疾患によって肺が侵されたものと,二次的に感染や循環障害などが起こったものとがある.
 一般にsystemic diseaseでは多臓器に病変が及ぶ可能性があるわけであるから,常に全体像を十分把握したうえで肺病変について検討する必要があることはいうまでもない.

腎不全

著者: 近藤有好 ,   木下康民

ページ範囲:P.816 - P.818

はじめに
 腎不全と関連する呼吸器疾患には,直接的なものと間接的なものがある.後者は腎不全時における肺感染症や,腹膜灌流に伴う肺合併症,腎移植後の肺疾患(transplant lung),あるいは腎不全を起こす疾患との関連で肺病変のみられる場合(膠原病)などがある.前者はいうまでもなく尿毒症性肺臓炎が代表であり,尿毒症性胸膜炎がひとつのclinicopathological entityとして注目されている.

膠原病

著者: 重松信昭 ,   宮崎信義 ,   石丸秀三

ページ範囲:P.819 - P.823

はじめに
 びまん性陰影を呈する疾患の中で,膠原病による変化は難治性,進行性であるので,後に述べる1例のように,早期診断の場合すなわち線維化進行による肺構造(自浄機構を含む)変化の少ない場合にのみ,steroidの効が明らかで,二次的感染などによる予後不良をきたすことも少ない.早期診断のためには,全身ならびに呼吸器症状の解析も細心の注意を要するが,より重要な診断の入口として胸部X線像の解析がある.この問題については,本特集の中で野辺地による別報があるが,膠原病を中心として考察したいくつかの問題点を述べてみたい,とくにその中では,初期の肺病変が,肺のどの領域にみられるかが問題で,X線像における病変分布解析につながる.
 膠原病における肺病変の発生頻度は重要であるが,すでに萩原ら1)の報告がみられるので,一部の問題を除いては略すことにしたい.

座談会

肺のびまん性陰影をめぐって—肺線維症を中心に

著者: 三上理一郎 ,   滝沢敬夫 ,   金上晴夫

ページ範囲:P.824 - P.831

 肺にびまん性・散布性の陰影を示す疾患がふえている.これらはいったいどのような病気なのか,いわゆる肺線維症とは考え方の上でどう対応させるべきか,混乱した概念を整理し,さらに診断の要点から治療まで,本主題のエッセンスをまとめていただいた.

演習・X線診断学 消化管X線写真による読影のコツ・6

食道のX線検査について

著者: 熊倉賢二 ,   田中満 ,   小須田茂

ページ範囲:P.835 - P.843

 食道のX線検査は,胃のX線検査に先だって行われるのが普通です.既にルーチン検査の項で述べたように,立位で造影剤を飲ませるだけの検査でしたら非常に簡単です.しかし,食道全体のよい写真をとって,微細病変までも診断するとなると,いろいろ問題がおきてきます.そのうち最も根本的な問題は,造影剤の通過が早いということです.立位で嚥下された造影剤は数秒後には噴門を通過してしまいます.造影剤にしても,空気にしても,ためておくことができません.頸部食道ではとくに早く,ほとんど瞬問的です.そのため,撮影するチャンスがごく短くなります.この短いシャッター・チャンスをどのようにしてうまくとらえるかが問題です.
 食道の検査法には,充盈法,二重造影法,粘膜法がありますが,他の消化管と同様に,微細病変をあらわすのには二重造影法が最適だと考えられています.そのためには,次のような方法があります.立位での検査です.

診断基準とその使い方

強皮症

著者: 菅原光雄

ページ範囲:P.845 - P.847

はじめに
 強皮症は現在,全身性強皮症と限局性強皮症の2型に大別されているが,さらに諸家により,臨床症状に基づき細分されている(表1).ここでは,本稿の趣旨に基づき,これらのうち,主に全身性強皮症についてのみ述べることとする.

大動脈炎症候群

著者: 伊藤巌

ページ範囲:P.848 - P.851

 大動脈炎症候群には,従来,脈なし病,異型大動脈縮窄症と呼ばれたもののほか,腎血管性高血圧,大動脈弁閉鎖不全なども含まれており,病変の分布や程度が異なるにつれて,その臨床像はきわめて多彩である.しかし,本症候群がひとつの疾患単位を構成することについては,ほぼ異論はない.そこで,本症を有するすべての症例を包含する臨床的な診断基準として,次の3項目をあげることができよう.
  1.大動脈。基幹動脈・肺動脈の炎症により生ずる狭窄・拡張に由来する臨床症候のひとつ以上を示している.

図解病態のしくみ—消化管ホルモン・2

コレチストキニン・パンクレオザイミン(CCK-PZ)代謝

著者: 石森章

ページ範囲:P.852 - P.853

 CCK-PZは33個のアミノ酸から成る直鎖のポリペプチドであるが,gastrin familyに属し,C末端テトラペプチドTry・Met・Asp・Phe-NH2を等しくしている.しかし,その特異的な作用は主としてC末端から数えて7番目のチロジンが硫酸エステル化していることにもとづくものであり,したがって,最小単位の活性基はC末端ヘプタペプチドと考えられる.その名称から明らかなように,主要な作用は胆嚢収縮と膵酵素分泌促進であり,その他ガストリンとほぼ同じような作用スペクトルを示す.産生部位は上部小腸粘膜を中心としているが,異所性に膵腺腫で産生される可能性も指摘されている.

新薬の使い分け

外来における鎮痛・消炎剤の使い分け

著者: 塩川優一

ページ範囲:P.854 - P.855

 鎮痛・消炎剤に属する薬の種類は最近急速に増加しており,選択に迷うくらいである.またおのおのの薬には特徴があり,特有な副作用があるので,使用に当たっては,それらに対する知識が要求されている.そこでここでは臨床医家のために,その概要を説明する.なお,鎮痛作用を有する薬のうちで本稿では解熱鎮痛剤といわれるもの(消炎剤を含む)に限り,全身麻酔剤,催眠鎮静剤,精神神経用剤は省略する.

臨床病理医はこう読む 酵素検査・4

γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)

著者: 玄番昭夫

ページ範囲:P.856 - P.857

胆管酵素群(biliary tract enzymes)とは
 血清アルカリ性フォスファターゼ(アルフォス),ロィシンアミノペプチダーゼ(LAP),γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP),あるいは5'-ヌクレオチダーゼなどの酵素を,臨床的には胆管酵素群という名で整理され,GOT,GPT,あるいはLDHのような肝実質細胞の障害を反映する酵素群と区別している.胆管酵素群とは,主として胆管の閉塞性機転を反映して血清中に増加してくる一連の酵素のことであるが,長い間,アルフォスがこの群の代表的な酵素として測定されてきた.しかし近年,多くの検査室でLAP,γ-GTPがとりあげられている.

小児と隣接領域

婦人科

著者: 植村次雄

ページ範囲:P.858 - P.859

 身体の発育および性機能の面から,女性の新生児期から性成熟期までをHuffmanは次のごとく分類している.新生児期(Newborn),小児期前期(Early Ghildhood);5〜6歳頃までを指し,性ホルモン分泌は微量であり,卵巣重量の増加も極めてわずかである時期.小児期後期(Late Childhood):初潮の始まる12〜13歳頃までをいい,性ホルモンの分泌亢進も始まり,卵巣重量もやや増加し,乳房,皮下脂肪の発達がみられる時期.思春期前期(Early Adolescence):初潮から排卵開始までの期間で,子宮,卵巣重量の急激な増加と性ホルモンの分泌増量がみられる時期.思春期後期(Late Adolescence):18〜20歳までをいい,性周期が安定し,身体的,精神的発育が完了するまでの時期.
 これらのうち,ほぼ思春期前期までに相当する16歳以下の少女の婦人科疾患取り扱い数とその種類についてみると,昭和46年から5年間の横浜市大産婦人科外来では,別表のごとくである.総数は280名であり,婦人科疾患患者総数に対する比率は毎年大体1%前後にすぎず,異常の発生の比較的少ない時期である.全体の約1/3と圧倒的に多数を占めるのが膣炎,外陰炎であり,ついで若年性出血,続発性無月経,月経困難症,月経・月経前緊張症,早発思春期など,性器出血と月経に関連したもので,全体の27.1%を占める.

皮膚病変と内科疾患 皮膚萎縮を主徴とする病変と内的異常・2

発疹としての萎縮を伴わぬ萎縮性皮膚病変と内科疾患

著者: 三浦修

ページ範囲:P.860 - P.861

 発疹としての萎縮を示さぬ皮膚萎縮とは,換言すれば,表皮の萎縮を伴わぬ真皮または皮下組織,あるいはこれら両者の萎縮である.その中に真皮を構成する1あるいは複数の因子のみの萎縮のこともあり,とくに弾力線維の萎縮が特色のある症状を呈する.これらの萎縮は先天性のこともあり,後天性または続発性のこともある.また病変の範囲に従って,全身性と局所性萎縮に分けられる.全身性萎縮に関しては栄養異常,老人性,悪液質性などがある.以下には,これらには触れずに,局所性皮膚萎縮の内的影響を有する事例について記する.
 局所性萎縮であっても広範囲の場合,とくに四肢の皮下組織の萎縮などでは,患側の削そうがはなはだしく,著しい非相称を呈するし,体幹にあっては帯状や広い局面をなして陥凹するのを通例とする.ただし萎縮部位に他因子の増殖をきたして偽肥大を形成したり,弾力線維の萎縮の際には皮膚のヘルニアを起こして盛り上がることもあり,ともに患部が結節や腫瘤状をなす可能性がある.萎縮は一般には軟らかく触れる.しかし,基底が骨や腱などから成る場合には病巣は緊張して硬く感ぜられることもある.

開業医学入門 転医について・2

入院を要しない場合

著者: 柴田一郎

ページ範囲:P.862 - P.865

検査の依頼と他科受診
 前回は入院という形の転医について述べたが,今回は原則として外来ですむ形の転医について考えてみたい.一口に紹介転医といっても,一時的に精密検査を依頼するために紹介して,データをもらってくることを目的とする場合がある.この場合は,一般診療所にはない器具を使って検査するとか,器具はあっても特定の判定能力を要するものなどについて検査を依頼し,それによって診断を確定することが目的である.この場合,1度だけ依頼すればいいものと定期的に依頼する必要のあるものとがある.もうひとつの転医の形は,こちらの専門外,ないし能力外の疾患が疑われる場合で,その疾患については,先方にお願いしてまかせてしまう形をとる.最近は老人医療の無料化に伴って,老人の受診が激増してきたが,本来老人というものは単一疾病のみということはほとんどなく,数科にわたる多くの疾患を持っているものが多いので,後者の形をとることが多くなってきた.
 たとえば白内障は眼科に紹介し,骨粗鬆症は整形外科に頼み,虚血性心疾患と糖尿病は当方で治療するといった形のものである.

診療相談室

EKGにおける高血圧性心臓病,狭心症,冠不全の違い

著者: 村山正博

ページ範囲:P.867 - P.867

質問 高血圧性心臓病と,狭心症,冠不全とのEKGの違いについてご教示ください.(久留米市 S生 60歳)

外来診療・ここが聞きたい

長期間続く軽度のGOT・GPT異常

著者: 西崎統 ,   名尾良憲

ページ範囲:P.868 - P.870

 患者 W. M. 46歳,男,自営業.
 既往歴 22歳 肺結核(6カ月内科治療),黄疸(-).

ECG読解のポイント

発作性頻拍をきたした63歳男子の例

著者: 金井美津 ,   太田怜

ページ範囲:P.872 - P.876

患者 Y. H. 男性 63歳
職 業 ホテル調理場食器係

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内科専門医を志す人に・トレーニング3題

著者: 恒松徳五郎 ,   藤森一平 ,   涌井和夫

ページ範囲:P.877 - P.879

 問題1. 高血圧の治療には下記の薬剤が広く用いられている.長期服用した患者に直接クームス試験陽性の溶血性貧血をきたすことがある.次のうちどれか.
 A:セルパシール

内科専門医を志す人に・私のプロトコール

アレルギー・膠原病/血液

著者: 革島恒徳 ,   梅村康順

ページ範囲:P.880 - P.881

 膠原病各種疾患を理解する上で,それらに伴う血管病変を,十分念頭におくことの重要性は,今さらいうまでもないことである.
 供覧例は,既往に心筋硬塞があり,入院時腎不全状態で入院したSLEの1例である.

心臓病診断へのアプローチ—問診を中心に

Chest pain(胸痛)

著者: 石川恭三 ,   前田如矢 ,   広木忠行

ページ範囲:P.882 - P.887

胸痛をきたす疾患と問診の原則
 広木(司会) まず,胸痛をきたし得るものとして,心臓血管病の中ではどのような疾患があげられますか.

オスラー博士の生涯・39

卒後教育について

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.889 - P.892

 1900年の冒頭,オスラーにはエジンバラ大学の内科教授の席を受けるよう親友のすすめがあった.オスラーは夫人とともにこれを受けようと決意し,立候補の手続きをとったが,ジョンス・ホプキンス大学関係者の猛烈な反対を受け,ついにこれを断念するという,オスラーの人生の中での大事件が起こったのであった.

私の失敗例・忘れられない患者

粟粒結核症の1例

著者: 笹村義一

ページ範囲:P.893 - P.893

 結核性疾患の著しい減少と共に,本疾患に対する関心も薄れつつあるのではないかと心配されている.小生自身,結核病棟に勤務し,結核症には十分注意をはらっているつもりであったし,また粟粒結核症も2例経験していた.しかし,最近診療した粟粒結核症においては,これら2症例とは異なり,胸部レントゲン像が比較的はっきりする以前に,心包炎をもって発症したために,当初粟粒結核否定説を強硬に主張し,極めて恥かしい思いをした.
 血行散布性結核症に関しては,cryptic typeと呼ばれる症例が注目され,胸部レントゲン像に異常を示さない症例などが存在する事実も既に知られているのであり,小生もその多彩さは観念的には理解していたつもりであった.しかし,実際面においては,自分自身の些細な経験にこだわり過ぎて失敗し,自分の結核症に対する理解の未熟さ,関心の浅薄さを痛烈に思い知らされた1例であった.

胆管癌で死んだ少女

著者: 宮崎邦介

ページ範囲:P.894 - P.894

 私がK大学の内科に入局したのは12年前のことである.この12年間にどれだけの患者を診療したかわからないが,記憶に残っているおおかたは亡くなった人である.しかも,年齢が若いほど,その記憶は鮮明である.
 入局して1週間後,ネーベンから帰った私は,ライターのT先生から「肝炎の患者が入院したから診るように」と指示を受けた.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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