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文献詳細

雑誌文献

medicina14巻1号

1977年01月発行

文献概要

今月の主題 心筋梗塞—今日の問題点 心筋梗塞と鑑別すべきもの

ウイルス性心筋炎

著者: 戸嶋裕徳1

所属機関: 1久留米大木村内科

ページ範囲:P.36 - P.38

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 急性心膜炎とかmyopericarditisと呼ばれる1)ことがあるように,炎症が心膜におよんでいる場合はともかく,ウイルス性心筋炎がなぜ心筋梗塞と誤まられることがあるのか.奇異に感じられる方も少なくないと思われるが,心膜炎の合併による胸痛とともに,図に示したような心電図を示す場合,心筋梗塞との鑑別が問題になることがある2〜4).また,うっ血型特発性心筋症の病型をとるもので異常Q波を示し,慢性化したウイルス性心筋炎が疑われることもありうるが,これは,臨床的には,現時点では特殊な例を除いて推測の域を出なつ.問題となる患者がウイルス性心筋炎であると確定するためには,ペア血清による中和抗体価の上昇を確かめる必要がある.したがって,血清のウイルス学的検索が十分に行いうる施設を備えていなければ,確定診断は不可能ということになる.しかし,発症の仕方,臨床経過,理学的所見などに注意し,本症を念頭においておれば,感染ウイルスの同定は困難であるとしても,心筋炎と診断することは必ずしも困難ではない.胸痛,呼吸困難を訴えるとともに,図のような心電図所見,すなわち著明なSTの上昇,2日後の心電図にみられるI,aVL,V2〜V5の異常Q波をみると,心筋梗塞を一応は考慮する可能性はあろう.この例は23歳の若い女性にみられた異常であるので,心筋梗塞の可能性を考えることは少なかろうが,中年以後の人にみられた場合には問題となりうる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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