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雑誌目次

雑誌文献

medicina14巻13号

1977年12月発行

雑誌目次

今月の主題 知っておきたい骨・関節疾患の診かた

理解のための10題

ページ範囲:P.2322 - P.2324

診断法

問診と理学的所見のとり方

著者: 山本真 ,   塚本行男

ページ範囲:P.2252 - P.2255

はじめに
 骨・関節疾患についての診察は,概略を述べるだけにしても短いページ数のうちに含めるのは困難であり,不十分であるとのそしりを免れ得ないものになると思われるが,後述されるそれぞれの主な疾患の項で補われるものと思われるので,ごく簡略に記述してみる.

X線写真の読み方

著者: 古谷誠

ページ範囲:P.2256 - P.2260

はじめに
 骨・関節疾患のうち,一般内科的クリニックでもX線写真の読影を必要とすることが最も多いのは,項・脊・腰痛などを主訴とする脊椎疾患であろう.
 脊椎は体の中心にあり,外部からの触診は困難な上,形も構造も複雑で,その形態上の変化を知るにはX線検査がほとんど唯一の手段である.関節疾患も数多いが,その診断にはむしろ臨床所見が優先し,X線所見は補助的であるといえる.

骨シンチグラム

著者: 石井勝己

ページ範囲:P.2261 - P.2263

はじめに
 骨シンチグラムに99mTc燐酸化合物が用いられるようになってから,骨シンチグラム像は従来のものより良質のものが得られるようになり,放射性同位元素(以下RIと略す)による検査のうち重要な検査項目となってきた.X線検査による形態的把握と異なり,RI検査は一般に機能的,生理的異常の把握ができる特徴がある.とくにシンチカメラの開発,ミニコンピュータの利用などにより,骨疾患患者の検査を行う上に重要な役割を占めつつある.今回は骨・関節疾患に対する骨シンチグラムの利用に関する概略を述べる.

関節造影法

著者: 藤田久夫

ページ範囲:P.2264 - P.2266

はじめに
 関節疾患の診断や治療を行う上には全身的な検索はもちろん,局所関節の購造や機能のあらゆる変化を詳細に把握せねばならない.そのために,問診や局所の臨床所見を正確に認識するとともに,X線学的検索,関節液の検査や臨床検査は日常の診療において欠くことのできない重要なものである.このほか,多くの症例ではさらに関節内の変化をより詳しく知るために,特殊な検査法として関節造影法がしばしば施行される.
 関節造影法は,関節を構成する関節軟骨,靱帯,半月や円板などの関節内の軟骨の構成体,滑膜や関節包さらには関節腔内の状況を知るために造影剤や空気を注入し,場合によっては両者を併用して,単純X線像で得られない所見をレリーフ像や充満像として観察しうる.これはまた,関節構成体の相互の関係を静的および動的に知りうる方法で,診断はもとより治療の指針となる所見を得る重要な検査法である.

ミエログラフィーとディスコグラフィー

著者: 土方貞久

ページ範囲:P.2267 - P.2269

 ミエログラフィー(myelography,脊髄造影法)とディスコグラフィー(discography,椎間板造影法)は,今日整形外科領域において,脊椎,脊髄疾患の診断上,最も慣用されている補助診断法である.くも膜下腔に造影剤を注入して,そのX線像から,脊髄内外の病変を検索するのが前者であり,椎間板内に造影剤を注入して,そのX線像により当該椎間板の状態を把握し,同時に造影剤注入時に惹起される癒痛と,その患者が平常訴える愁訴との類似性から,その椎間板の病原性を知ろうとするのが後者である.
 本稿では以上の両者につき,その意義と実際,診断的価値と限界,副作用などにつきふれたい.

診断法(カラーグラフ)

関節鏡

著者: 武田栄

ページ範囲:P.2273 - P.2275

はじめに
 関節鏡の創始者,高木憲次博士が訪欧の途次,諸国の学者に関節の内視について問うたところ,「レントゲン像に見える関節の裂隙は軟骨の幅であって,実際の空間ではない」と嘲笑されたという.
 しかし,いまや膝関節では,容易にその大部分を鏡視できる時代になっている.
 日常,膝痛や慢性膝関節炎の患者を診察してみて,外からはみな同じようで,その判定に困惑する場合が多い.
 ここに膝関節内所見を呈示する.

頸・肩を中心に

肩こり

著者: 三好邦達

ページ範囲:P.2277 - P.2280

はじめに
 元来,「こり」とは医学的には筋の緊張が亢進した状態で起こる自覚症状であり,しばしば「だるい感じ」や持続する鈍痛を伴うものもある.肩こりというのは,このような症状を項部から僧帽筋部,肩甲間部にかけて訴えるものを指しているものである.
 肩こりは,筋自身に一次的原因があって発来する場合もあり,筋肉を支配する神経の異常からくることもあるが,全身の循環障害の部分症状であることもあり,筋肉を栄養する血液の成分異常からも発生するとも考えられている.すなわち,血圧の異常,高血圧や低血圧でも肩こりが起こり,自律神経失調症や更年期障害などの不定愁訴としても肩こりを訴え,交感神経の緊張や筋の代謝異常が成因ではないかと考えられている.このほか,貧血やビタミンB1欠乏,内分泌疾患,呼吸器病,消化器病,リウマチ,心因性などでも肩こりが起こり,眼鏡が適当でなかったものにも起こることがあるので,肩こりのすべてが病的現象であるとはいえない.このように,肩こりの原因は種々であり,しかも原因のいくつかが重なりあって起こるものであるが,われわれ整形外科領域では,肩こりの訴えはいわゆる頸腕症候群と呼ばれるものに最も多い.

五十肩

著者: 河路渡

ページ範囲:P.2281 - P.2283

五十肩とは
 中年以後の40歳代,50歳代の人で,とくに誘因がなく肩を中心とする痛みと肩関節の運動制限をきたし,予後の良好な疾患を俗に五十肩と呼称している.
 五十肩は肩関節周囲炎Periarthritis humeroscapularisといわれるものが相当し,あるいは強い運動制限をきたしているものに対し,凍結肩frozenshoulder,とかpainful and stiff shoulderなどの別名もある.

変形性頸椎症

著者: 黒川高秀

ページ範囲:P.2284 - P.2285

 変形性頸椎症は外傷後遺症など特殊なものを除けば,一般に脊椎全体に現れる加齢現象の一つであって,その病理学的変化は頸椎に固有のものではないが,症状は頸椎特有のものがあり,成人の四肢麻痺の原因として主要なものの一つである.
 本症の主要症状としては,①項頸部痛,②上肢痛および頸髄神経根障害,③脊髄麻痺,④椎骨動脈不全症候群などがあるが,誌面の都合上,本稿では日常診療上最も問題となる②および③に関して,本症の診断上重要と思われる最近の進歩につき述べさせていただきたい.

後縦靱帯骨化症

著者: 山浦伊裟吉

ページ範囲:P.2286 - P.2287

はじめに
 後縦靱帯骨化症は1960年,月本の報告以来,その特異な病態と重篤な脊髄障害をきたすがゆえに,主にわが国の整形外科分野において注目され,探求されつつある新たな疾患である.本症は近年になって増加しているような印象を与えるが,これは本症の認識が広まったため発見率が高まったものと考えられる.古いX線フィルム調査でも本症の存在が確認されている.したがって,本症が認識される以前の古い症例の中に,筋萎縮性側索硬化症,脊髄性進行性筋萎縮症,脊髄腫瘍,変形性脊椎症,強直性脊椎炎などの診断名が付されていたものがある.厚生省後縦靱帯骨化症調査研究班の全国調査によると,現在2000余の症例が登録されている.外国では未だ数編の報告をみるに過ぎないので,発現頻度に民族間の差があるかどうか不明であるが,最近山内らのX線フィルム調査によると,白人の本症有病率は低いようである.
 性別ではほぼ2:1で男子に多く,40歳代から70歳代に多く認められる,個人の居住地,職種などの違いによる発現率との相関は認められない.

胸郭出口症候群

著者: 立石昭夫

ページ範囲:P.2288 - P.2289

はじめに
 この症候群は,従来さまざまな呼名で呼ばれていた症候群を,1956年,Peetらにより提唱された"Thoracicoutlet compression syndrome"なる概念の下にまとめられた症候群である.はじめに定義と概念を明らかにしておく必要がある.

腰背部を中心に

ぎっくり腰

著者: 宮地直恒 ,   星野孝

ページ範囲:P.2290 - P.2292

はじめに
 整形外科の外来を訪れる患者の中に,「ぎっくり腰」と呼ばれ,不用意にかがみこんで重いものをもち上げたり,身体をねじったはずみに,突然「ぎくっ」と激しい痛みが腰臀部に走り,そのまま立てなくなってしまったり,あるいはそうでなくても,中には翌日になってということもあるが,とにかくほうほうの態で腰を「く」の字に曲げ,痛みで顔までしかめっ面で来院する者が,相も変わらず多いものである(図1).これが「ぎっくり腰」とか「ぎっくらせんき」と呼ばれるものである.
 古来,人間が腰痛を感じるようになって以来,「ぎっくり腰」は人類の悩みの種となって,洋の東西を問わず人々の間に恐れられてきた.ドイツ語では,ヘクセンシュス(魔女の一撃)と言われるくらいに,その痛みは容易ならぬものである.さらにまた,ただの一瞬の「ぎくっ」としたことが発展して,椎間板ヘルニアになってしまう場合も多く,一部には「ぎっくり腰」と言わずに「ヘルニア」とか「Slipped Disk」と呼んで,あたかも不治の病か何かにかかったように,一種の恐怖感をもつように呼ばれることもある.医学の進んだ今日でも,この「ぎっくり腰」は,減少するどころか,一定の生活を強いられた結果,腰背部の筋肉を強化する機会がなくなったためであろうか,むしろ現代の壮年層の共通の悩みとなって,ほとんどの者が何らかの形で経験するほどに多くなっている.

椎間板ヘルニヤ

著者: 武智秀夫

ページ範囲:P.2294 - P.2295

はじめに
 椎間板ヘルニヤの診断にはその病理と症状の関連をよく理解することが大切であるので,それらを中心に述べてみよう.

老人の腰痛

著者: 桐田良人

ページ範囲:P.2296 - P.2301

はじめに
 老人の腰痛では,通常考えられる運動・支持器官として腰部を構成する脊椎骨,筋・靱帯,支配神経などの疾患以外に,消化器,循環器など全身的な他の器官の疾患の初期症状としても重要な役割を演ずるものであるから,単に運動器や局所の症状としてのみにとどまらず,常に全身疾患の一環として理解し,早期発見のための症状として把握する必要がある.この点が老人の腰痛の場合はとくに重要であるから,腰椎部およびその周辺部のX線検査,筋電図,筋力テストなど運動器に関する検査以外に内科的諸検査を実施し,常に全身疾患の見地からも腰痛を把握することを怠ってはならない.

脊椎過敏症

著者: 小野村敏信

ページ範囲:P.2302 - P.2303

脊椎過敏症とは
 背痛あるいは棘突起部の自発痛や圧痛を主訴として受診する患者のなかで,これらの愁訴以外の理学的所見に乏しく,予後も良好であるものが比較的多いことはよく知られている.このような病態は,脊椎過敏症あるいは棘突起痛と呼ばれ,臨床上きわめて頻度の高いものである.一方,種々の脊椎疾患や内臓疾患の場合に,臨床症状の一つとして棘突起部の疼痛(圧痛,叩打痛,運動痛など)をきたすことは多く,これらの疾患と脊椎過敏症とを鑑別することは,腰背痛患者の診断に際して常に念頭におかなければならない.
 統計的にみると,本症は20歳代の女子とくに事務労働者や主婦に圧倒的に多く,平背や円背などのなんらかの不良姿勢や背筋の萎縮をもつ場合の多いことが特徴的である.原因としては未だ明らかでない部分も多いが,自律神経失調,内分泌異常,関連痛,いわゆる付着部痛,ヒステリーなどがあげられている.好発年齢その他からみると心因性要因を含めた素因の存在も否定できないが,臨床的な特徴からは,棘突起に付着する筋・腱・靱帯などの張力が発痛と関係が深いと思われる.姿勢異常や背筋のfibrosisは腱・靱帯付着部に持続的なtensionを加え,局所の発痛素因を高めると考えられる.本症の予後は良好であり,数ヵ月ないし数年の間に自然寛解をみるのが普通である.

腰部脊柱管狭窄症

著者: 若松英吉

ページ範囲:P.2304 - P.2307

腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal stenosis)の概念
 1954年,Verbiestは腰部脊椎の後部要素である椎弓の発育が悪く,狭い脊柱管が形成された場合には馬尾神経が圧迫され,馬尾神経性間敏破行という特徴ある症状を呈する症例のあることを初めて報告している,Verbiestは先天的ないし発育的な障害による腰部脊柱管の狭小化に焦点をおき,developmental stenosisなる言葉を生ませた.その後,Epsteinら(1960)やEhniら(1965)は,狭小な腰部脊柱管に広い意味の変形性脊椎症的変化が加わると,馬尾神経性間歓破行を呈する症例のあることを記載している.しかし,EpsteinやEhniの変形性脊椎症の解釈はかなり広い意味のものであって,椎聞板の変性に起因する椎体辺縁の骨棘形成状態だけでなく,脊椎後方の椎間関節の関節症をも含めているふしがある.
 発育障害にしろ変性的変化にしろ,狭い腰部脊柱管が形成され,症状を呈するものに対しはっきりとIumbar spinal stenosisといっているのはSchatzkerら(1968)である.その後,1umbarspinal stenosisは診断名として広く使われるようになってきている.本邦で腰部脊柱管狭窄症とか腰椎椎管狭窄症という診断名が使われるようになったのは,1970年以後である.

特発性脊柱側彎症

著者: 山内裕雄 ,   浅賀嘉之

ページ範囲:P.2308 - P.2310

脊柱側彎症
 脊柱側彎症は,構築性側彎症と非構築性側彎症とに分けられる.非構築性側彎症は,機能性側彎症とも呼ばれ,骨には変形がなく,非固定性で,原因を除去することにより側彎を矯正できる.姿勢による側彎,脚長差があるための代償性側彎,椎間板ヘルニアなどに見られる疹痛性側彎などがこれに含まれる.非構築性側彎の特徴は,脊椎の回旋と代償性の側彎とがない点である.構築性側彎症は,この逆で,治療の対象となる側彎である.
 構築性側彎症は,多くの原因によって発生するが,その中で原因の明らかなもの,または何らかの疾患と合併している側彎症を症候性側彎症と呼んでいる.これには,ポリオや脳性麻痺,その他に合併する神経原性側彎症や,脊椎の骨奇形によって生ずる先天性側彎症,神経線維腫症(Recklinghausen病)に合併する側彎症,Marfan症候群に合併するもの,進行性筋萎縮症に合併する側彎症,その他がある.しかし,これらの症候性側彎症が,全体の側彎症の中で占める割合は少なく,その80%以上が,未だ原因の明らかでないもので,これを特発性側彎症とよんでいる.

骨・関節症とそれとまぎらわしいもの

変形性関節症—診断のポイントを中心にして

著者: 嶋良宗

ページ範囲:P.2311 - P.2315

 変形性関節症とは 国際リウマチ学会で採用された「リウマチおよびその近似疾患の命名と分類」によると,変形性関節症は,椎間板障害とともに"変性性"のもとに総括されて,慢性関節リウマチなどを含む"炎症性"に続き,"一般にリウマチといわれる疾患"の内の"関節型"の中に位置づけられている.
 このように,本症は,加齢的に進行する退行性変化を基盤とし,諸機序を介して,荷重と運動を強制される関節構成体に変形を生じ,機能的に破綻をきたす疾患である.臨床的には,安静により軽減する運動痛が特徴的である(図1).

Entrapment Neuropathy

著者: 古屋光太郎 ,   山本晴康

ページ範囲:P.2316 - P.2317

はじめに
 末梢神経が靱帯,腱,筋肉,骨などで囲まれた中を通過するとき,あるいはその中で走行を変えるときに何らかの機械的な刺激が加わり神経に局所的な損傷や炎症が発現する.このような状態をentrapment neuropathyとよぶ.これらの中には,fibro-osseous unne1で圧迫されるtunnel syndrorneと呼ばれるものが多く,その主なものにcubitaltunnel syndrome(tardy ulnar palsy),anteriorinter-osseous tunnel syndrome(pronator synd.),carpal tunnel syndrome,ulnar tunnel syndrome,tarsal tunnel syndromeなどがある.
 本疾患は四肢の疼痛,運動障害,筋萎縮などを起こすが,類似の症状を呈する椎間板ヘルニヤ,変形性脊椎症,胸郭出口症候群,変形性関節症などとの鑑別が常に問題となる.また知覚,運動障害のほかに血管運動障害,発汗障害,皮膚の萎縮や浮腫を伴うこともあり,レーノー病,acrocyanosis,reflex dystrophyなどの自律神経性疾患との鑑別も必要となることがある.2,3の比較的頻度の高いentrapment neuropathyをとりあげ,診断上のポイントについて抄述する.

遅発性尺骨神経麻痺

著者: 渡辺健児 ,   加賀完一 ,   鍋島隆治

ページ範囲:P.2318 - P.2319

 末梢神経は関節近傍で,関節嚢,靱帯,筋起始部の腱様構造などで形成される線維性または骨線維性のトンネルを通るのが常であり,この部分でなんらかの慢性異常刺激が加わって発生する神経障害をentrapment neuropathyと総称する.
 尺骨神経に関しては,小児肘外穎骨折偽関節やその後に発生する外反肘に引き続いて起こることが注目されて遅発性麻痺tardy palsyと表現されたのが最初であり(cubital tunnel syndrome),別に手関節部における尺骨神経管症候群(ulnar tunnel syndrome)がある.

腱鞘炎

著者: 丸毛英二 ,   児島忠雄

ページ範囲:P.2320 - P.2321

バネ指
 中年の女性に好発する.中指・環指・母指の順に発生する.中手指節関節部での靱帯性腱鞘の肥厚により発生する(図1).
 指の屈伸運動中無理に伸展すると突然コツンと音がして指の伸展が可能になる(この反対方向にも起こる).また,乳児の母指にも好発するが,乳児の場合は屈曲位をとり,自動的には伸展できないものが多い.他動的に伸展可能である.

演習・X線診断学 血管造影写真読影のコツ・12

脊髄動脈造影

著者: 平松京一

ページ範囲:P.2326 - P.2332

 脊髄疾患の診断に血管造影が応用されるようになってもう10年近くになりますが,本邦でもこの脊髄動脈造影が最近ようやく普及してきました.脊髄疾患のうち血管造影の適応となるものとしては,脊髄動静脈奇形(A-V malformation),脊髄の腫瘍,外傷を含む脊髄の虚血性疾患などがあげられます.とくに動静脈奇形は最もよい適応であり,血管造影が施行されていないと手術時のアプローチが大変困難になるといわれています.そこでこの血管造影読影シリーズの最後に,脊髄動脈造影をとりあげることにします.

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内科専門医を志す人に・トレーニング3題

著者: 信太隆夫 ,   竹内正 ,   神坂幸良

ページ範囲:P.2333 - P.2335

問題1. アレルギー性気管支肺アスペルギールス症(または,アレルギー性あるいは過敏性アスペルギールス症)の確定診断条件は下記のいずれか.
① 熱発を伴う急性ないし慢性気道閉塞症状

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.2336 - P.2339

内科専門医を志す人に・私のプロトコール

剖検症例の記載

著者: 石村孝夫 ,   谷本普一

ページ範囲:P.2341 - P.2347

剖検症例記載のポイント
 当院では剖検症例用には今までの病歴要約用とは異なった特別の書式を用いる(ただし,本例では誌面の都合上,一部割愛した).これは本来は院内のCPCやPMC(post mortum conference)において症例提示の際,印刷して出席者に配布されるものである.そのため,内容は大変に詳しく,入院経過の項では,Assessmentよりはむしろ主観をあまりまじえずに経過を追うことに重きを置くので,内科専門医受験時の提出用としては不向きかもしれない.
 さらに上記の理由で,剖検結果との対比考察はこの要約を書きあげてからになるのと,本用紙にこの対比考察を記載する場所がないので,ただ剖検報告書を添付するだけとなり好ましいこととはいえない(内科専門医試験担当者もこの点について指摘している).筆者は専門医試験受験時,剖検症例にこれらをそのまま提出したが,あるいは今までの病歴要約用紙に,以上の点を留意して書きなおしたほうがよいかもしれない.

図解病態のしくみ 高血圧シリーズ・7

発症機序の推論

著者: 青木久三 ,   望月章博

ページ範囲:P.2348 - P.2351

Pageのモザイク説
 Pageは,心臓・血管系は血液で組織を灌流する器官であり,必要量の血液を組織に供給するために動脈圧が必要であると考えた.この組織灌流圧は血圧に依存し,血圧は神経因子,血管壁弾性,心拍出量,血液粘稠度,血管内径,血流量,血管反応性および体液因子などの8因子が相互に関連して調節され,それによって恒常性のある正常血圧の維持が営まれていると推察した.そして,いずれかの因子の異常にて,血圧の恒常性維持が破綻し,正常血圧維持が不可能になり,血圧が上昇して高血圧症が発症するとの仮説を提案した(図1).これがPageの有名な血圧調節に関する高血圧のモザイク学説(the mosaic theory of hypertension,1960)である1)
 さらに,高血圧症の発症には,主としていずれかの1因子が昇圧的に作動して高血圧が発症する.たとえば,神経因子が優位に作動した神経性高血圧,内分泌因子が優位に作動した内分泌性高血圧症の存在を説明した.そして高血圧発症機序に関与する因子を,①神経性,②内分泌性,③心臓・血管性および④腎性因子の4群に分けた.神経系は急激な血圧の変化を直ちに調節する系統で,ホルモン,内分泌,電解質などは長期間にわたる慢性血圧異常,慢性の高血圧症に関与する系統としている.

臨床病理医はこう読む—免疫血清検査・4

抗核抗体

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.2352 - P.2353

 抗核抗体とは,細胞核の各種成分に対する自己抗体の総称である.対応抗原としては,現在少なくとも核蛋白,DNA(native,denatured),histone,リン酸緩衝液可溶性核蛋白(extractable nuclearantigen,ENA),核小体などが知られている,さらにpoly(adenosine-diphosphate ribose)などの抗原もある.この抗体は,種属特異性および臓器特異性ともに示さないため,ヒト以外の動物の細胞核成分を用いても検出することができる.

疾患合併と薬剤

低血圧の狭心症に対するニトログリセリン

著者: 広木忠行

ページ範囲:P.2354 - P.2355

はじめに
 与えられた標記の課題から,従来低血圧の患者が狭心症を併発する場合と,正常血圧の狭心症患者が発作時に低血圧をきたす場合の2通りの病態が考えられる.これらの患者に対するニトログリセリン舌下錠(以下NGと略す)による治療は,重篤な左心機能不全を合併する例や,NGに対する特異体質を有する例などの特殊な場合を除いて適応となる.しかし,NG投与に際して,狭心症の基礎にある病態とNG投与により予測される効果を十分に理解することが必須であり,とくに低血圧の狭心症に対してNGを投与する場合には,その副作用予防のためにも,より慎重な配慮が必要とされる,
 以下,まず心筋虚血に対するNGの効果に関する近年の知見を要約し,次いで上記の2通りの狭心症患者にみられる血行動態とNG投与時の問題点を採りあげ,終わりにこのような症例についてNGを投与する際の2,3の留意点を付記する.

今日の食事療法

老年者の栄養

著者: 大友英一

ページ範囲:P.2356 - P.2359

老年者の必要カロリー量
 老年者と一言でいっても,年齢(60〜90歳),生活様式,職業の有無,既往歴などにより相当な差異があり,一律に必要カロリー量を決定できない点がある.
 このように,老年者では青壮年に比較して個体差が大であることから,所要カロリー量の調査の成績は,対象により大きく動揺している.60歳以上を対象とした場合,1,255〜2,900カロリーと2倍以上の開きがある.年代別では,60〜69歳1,900〜2,126カロリー,70〜74歳1,700〜2,154カロリーとなっている.

ブラリマリー・ケアの実際

尿閉

著者: 大山朝弘

ページ範囲:P.2360 - P.2363

尿閉とは
 膀胱に尿が充満しているにもかかわらず尿を全部出せない状態を尿閉と呼び,まったく排出しえない状態を完全尿閉complete urinary retention,一部を排出し残尿の多い状態を不完全尿閉incomplete urinary retentionという.臨床的には突発的に排尿不能になる急性尿閉acute urinary retentionと排尿障害の漸次進行する慢性尿閉chronic urinary retentionに分けて考えるほうがよい.一般的に急性尿閉が完全型,慢性尿閉は不完全型をとりやすい.排尿に関与する神経,膀胱,尿道およびその隣接臓器のいずれかに障害があっても円滑な排尿は行われないし,精神的な因子によっても排尿が不能になることも珍しくない1)
 急性尿閉はかなりの苦痛を伴うが,一般に生命の危険はない.しかし動脈硬化症や高血圧のみられる老人では,急激な血圧上昇による脳内出血をひき起こすこともあり得るので,このような患者に対しては早めに苦痛をとってやらねばならない.排尿障害が長期化するにつれ自覚症状はむしろ軽快し,本人にとっても治ったと思われる時期がくる.すなわち奇異性尿失禁paradoxical oroverflow incontinenceをきたし,尿は一定間隔でもれるようになり,本人の意志とはまったく無関係に尿が出てしまうのである.

外来診療・ここが聞きたい

動脈硬化

著者: 中村治雄 ,   西崎統

ページ範囲:P.2364 - P.2367

症例
 患者 K. H. 56歳 商社管理職
 現症歴 商社マンで,若い頃から不規則な生活,仕事上もストレスが多く,また外国生活も長かったが,とくに著患を知らない.今春,人間ドック受診の結果,動脈硬化が進んでいるといわれて気になり来院.しかし,現在,とくに自覚症状はない.

内科臨床に役立つ眼科の知識

糖尿病性網膜症(4)

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.2368 - P.2369

 今回は糖尿病性網膜症の治療法について,現在どのような治療方針がとられているか述べてみたい.もちろん,この治療方針については,いろいろな考え方がある.したがって,ここではなるべく最大公約数的な考え方を述べるように努めるが,筆者の考え方が主体になることを予めお断りしておきたい.
 糖尿病性網膜症の分類のところで述べたように,現在,糖尿病性網膜症は治療方針の決定,換言すれば進行性の有無ということを主要因として,非増殖性網膜症と増殖性網膜症とに2大別され,さらに両者の間の移行型ともいうことのできる前増殖性網膜症preproliferative retinopathyという概念が導入されてきた,以下,各病型別に治療方針を述べてみよう.

診療相談室

感冒様症状の対症療法について

著者: 金上晴夫

ページ範囲:P.2370 - P.2370

質問 いわゆる感冒(インフルエンザ?)としか思われず,咽頭発赤,咳嗽,発熱,四肢痛あるも,理学的所見なく,胸部X線像も異常なし,しかしいわゆる上気道炎というか,胸骨上部あたりに異和感,乾燥感,疼痛(鈍痛)を訴える患者がおります.放置しておくと4〜5日後に,赤沈,胸部X線像は変化ありませんが,胸部両側に乾性水泡音を聴取いたします.このような場合の対症療法についてご教示下さい. (横浜市 R. W. 生 49歳)

天地人

救急医療

著者:

ページ範囲:P.2373 - P.2373

 佐野 恵『救急医療はなぜ嫌われるのか』(科学情報社出版,広済堂発売,昭和52年)という本が出ている.救急医療の第一線にたって,泥まみれで働いている医師の手記としてぜひ一読をおすすめするものである.
 この著者は大阪の清恵会という救急病院の院長である.成功した開業医によくある例であるが,いわゆるエリートコースを歩かず,救急医療が大好きで,若いときから万能医となることを志して医療の第一線を歩き,稼いだ金を資金にわずか5年間でベット数が数百という大救急病院に急成長した.本書にあらわれる著者の姿は,文字どおり月月火水木金金……,休日も睡眠も家庭サービスも一切を犠牲にして,卒先して従業員の先頭にたって深夜も働く超猛烈医(いや超壮烈医といったほうがよいかもしれない)そのものである.よくも,こうも働いて身体がもつものだと思う.

オスラー博士の生涯・56

アメリカ,カナダへの訣別(1905年)

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.2374 - P.2377

 オスラーは,1905年4月いっぱいまでは,アメリカを去る日を前にして,3つの有名な告別講演をしている.第1は,2月25日ジョンス・ホプキンス大学で行った「固定期間」,第2は4月14日母校マギル大学で行った「学究生活」,そして第3は,4月26日ボルチモア市におけるメリーランド内科・外科医師会で行った「結束・平和・ならびに協調」と題されたものである.

ここにも医療あり

拘禁の壁の内側で—刑務所の医師

著者: 斉藤祐二

ページ範囲:P.2378 - P.2379

 今から10年余前,大学の無給医として在勤中,いわゆる無給医解消のための運動が燎原の火のように燃えあがった.ふとしたきっかけから代表に選ばれ,東京医科歯科大学での全国会議に上京する羽目となった.それ以降は長びく運動に抜き差しならぬ身となり,心身の疲労は累積し心身耗弱の状態となり,文字通り妻子を抱えて無収入となった.自宅で安静療養をしていたとき,心配してたずねてくれた先輩が,半日勤務週2回の勤務先が刑務所にあるから勤めてみてはどうかと勧めてくれた.以前から教室の先輩たちが交替で収容者の精神診療にいっていたので,その代わりにということであった.バスで1時間の距離であり,条件も健康状態に適当と思われたので勤めることになった.

Cyclopedia Medicina

Fröhlich症候群

著者: 相田光保

ページ範囲:P.2383 - P.2384

 Fröhlich症候群は,女性型の肥満と,性器の発育不全を主症状とし,視床下部の障害に起因するものをいう.原因となる視床下部の障害には,腫瘍(頭蓋咽頭腫,異所性松果体腫,下垂体腫瘍,グリオームなど),炎症(脳炎,髄膜炎など),外傷,嚢胞,変性,特発性などがあげられる.なかでも腫瘍による場合が多く,しばしば尿崩症を伴う.
 次に,頭蓋咽頭腫によるFröhlich症候群の一例を簡単に紹介する.

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「medicina」第14巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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