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天地人
客観主義の陥穽
著者: 地
所属機関:
ページ範囲:P.297 - P.297
文献購入ページに移動故深代惇郎氏の天声人語にも,「新聞は真実を,真実をのみ報道するなどという正論のやかましい時代……」であると書いてある.たしかに大新聞の記事ともなれば,大方の人々は間違いのない事実であると信じている.ところが文芸春秋の新年号に掲載された"支店長はなぜ死んだか"という上前淳一郎氏の論文は,われわれに新聞とは何かを改めて考えさせてくれる.覚えておられる方もあるだろうが,昭和50年の初夏,東大卒の一流銀行員が,支店長就任を目前にして,妻が出産で入院中に二歳になる知恵遅れの幼女を餓死させるという事件があった.新聞はこのエリート銀行員を冷血かつ残酷な父親として報道した.
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